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召喚士リルナのわりとノンキな冒険譚  作者: 久我拓人
冒険譚その9 ~お子様ダンジョンに挑戦!~

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~お子様ダンジョンに挑戦!~ 7

 草原に突出した木製のドア。

 プレートに付いた『お子様ダンジョン』の文字は、なんとも滑稽ではあった。その発見者の心中は察することは出来ないが、今のメロディの表情を見れば想像できるかもしれない。


「……」


 げんなりしていた。

 お姫様は、とてもげんなりとした表情でドアを見ていた。


「むしろタダのいたずらで妾たちは騙されて50ギルを失った、という方がマシかもしれぬ」


 で、開き直った。


「それじゃあココルは仕事ができなくなっちゃうよ?」


 最悪、娼館行きというサクラの言葉を思い出すリルナ。


「いや……妾が捕まえてサヤマ城のメイドにしてくれる。もちろん母上担当じゃ。死ぬほどの苦しみを与えてやろう」


 あんたの母は魔王か、というツッコミを思いついたリルナだったが、やめておいた。本当に魔王かもしれないので。


「ふ~む、見た感じ罠は無さそうやな。来てええで~」


 一通りドアを確認したサクラが二人を呼ぶ。未だドアに触れてはいないが、周囲の安全は確認できたようだ。


「触っても大丈夫? ビリってこない?」

「心配やったら、ほれ」


 サクラはリルナに、小さな石を手渡した。投げて確認しろ、ということらしい。


「えいっ」


 リルナは少し強めに石を投げた。ドアにコツンと当たるが、何も起こらない。当たり前といえば当たり前だが、念には念を。慎重過ぎて死んだ冒険者はあまりいないのが現実だ。

 次にサクラは腰から鞘ごと倭刀を引き抜くと、それでドアノブをコンコンと叩く。これももちろん何も起こらなかった。


「やっぱりイタズラではないのかのぅ」

「そう思うんなら、お姫様に開けてもらおか」

「む……」

「がんばって、お姫様っ!」

「仕方あるまい。妾が活路を開いてみせよう!」


 メロディはドアへと近づくと、おっかなびっくりとドアノブをツンと人差し指で触った。何も起こらなかったのを確認すると、ノブをしっかり握る。そのまま右にひねると、ガチャリとまるで鍵が外れるような音がした。


「お?」


 メロディの意思とは反して、ドアは自然とメロディ側へと、つまり引き側へと開いた。その扉の向こう側にはすぐ下り階段があり、天井は斜めに下がっていくという不思議な空間になっていた。


「本当に、ダンジョンっぽい」


 後ろから見守っていた二人も、ほへ~、と声を漏らす。リルナは試しにドアの後ろへとまわってみた。そこには何も無くこちらを向いているメロディが見える。また元の場所へと戻ると、ちゃんと下り階段があり、向こう側は見えなかった。


「どうなってんの、これ。すごい……」

「どうする? 攻略は明日の予定やけど、入ってみるか?」

「下見じゃな。とりあえず、下りてみようではないか」


 さっきまで不平不満が渦巻いていたメロディだが、すっかりとご機嫌になっていた。いざダンジョンの入り口を目の前にしてしまっては、冒険者に憧れて冒険者になった、という原初の心が躍りだしたのかもしれない。


「下は真っ暗だよ。とりあえずランタンを用意しないと」


 冒険者セットからランタンを取り出し、火打石で火を灯す。火の大精霊サラディーナを喚んでもいいのだが、ランタンに火を点けるだけに召喚するのは何だか申し訳なかった。

 ランタンは先頭を行くメロディが持ち、真ん中にリルナ、殿しんがりはサクラが担当した。メロディが慎重に一歩一歩階段を下りるのに合わせてリルナとサクラも続く。

 一応とばかりに入り口のドアに石を設置しておいたが、自動で閉まってしまう様子は無かった。

 階段は螺旋状になっているらしく、左回転に地下へと下りていく。壁は黄色に近い赤のレンガのような素材が綺麗に敷き詰められており、まるで昨日にでも完成したばかりの様相だった。


「お、到着したようじゃ」


 体感的に三階ほどを下りたところで、階段は終わる。その先は少しばかり広い空間で、ランタンの明かりでは全貌が把握できない程度の大きさではあった。

 しかし、天井は普通よりも低く、お子様ダンジョンという名前通り、子供用に作られた感じではある。種族的に慎重の低いドワーフならばピッタリかもしれない。

 サクラまで階段を降りきったのを確認すると、メロディはランタンを掲げながら先へと進む。少しばかり進むと、なにやらアーチ状の柵が見えた。その先には大きな鉄門が見え、なんとも豪奢な彫刻が施されているのを確認できる。

 と、その時――


「なんじゃ!?」

「うわっ!?」

「これは……!?」


 三人の足元から四方に魔力の光が疾走したかと思うと、それらは壁を伝い天井へと流れた。そして、いくつものラインへと別れ、白の明かりとして部屋を灯した。


「明るい……って、色々ピカピカ光ってる!?」


 アーチ状の柵はピンク色や青色が光り、鉄門も今ではキラキラと光を灯していた。まるでお祭みたいな雰囲気で三人は驚いていると、どこからともなく声が聞こえてくる。


「やぁやぁやぁ! お子様ダンジョンへようこそ! 今日の挑戦者は三人のお嬢さんたちだね!」


 部屋に響き渡るちょっぴり高く幼い声。

 それと共に、ゆっくりと鉄門が開く。

 その先に待っていたのは、一体の小さな人形だった。


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