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召喚士リルナのわりとノンキな冒険譚  作者: 久我拓人
冒険譚その9 ~お子様ダンジョンに挑戦!~

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~お子様ダンジョンに挑戦!~ 1

●リルナ・ファーレンス(12歳)♀

 召喚士:レベル4 剣士:レベル0(見習い以下)

 心:普通 技:多い 体:少ない

 装備・旅人の服 ポイントアーマー アクセルの腕輪 倭刀『キオウマル』

 召喚獣:5体


●サクラ(212歳)♀(♂)

 旅人:レベル90 剣士:レベル4

 心:凄く多い 技:凄く多い 体:多い

 装備:倭刀『クジカネサダ』 サムライの鎧 サムライの篭手


●メローディア・サヤマ(10歳)♀

 剣士:レベル4

 心:多い 技:少ない 体:少ない

 装備:ヴァルキュリアシリーズ・リメイク バスタードソード バックラー

 召喚士リルナ・ファーレンスはここ数日、街を歩くたびに辟易としていた。

 それというのも、すっかりと有名人になってしまったから。もちろん、一般の人々はリルナのことなんか、明日の夕飯のメニュー以下の存在だ。奥様方の井戸端会議にだって登場はしない。

 では、一体どういう有名なのか。

 それは冒険者たちの間で、有名となり話題になっていた。今となっては『龍喚士』なんてご大層な二つ名まで出来上がってしまったぐらいだ。


「よう、龍喚士。まだまだ頑張れよ~」


 と、声をかけてくる冒険者はまだマシだった。


「あ~……リルナ・ファーレンスさん? 良かったら一杯奢らせて頂けませんか? 我がパーティ全員で歓迎しますよ」


 と、声をかけてくる冒険者が厄介だ。ほいほいと付いて行くと、執拗なパーティ加入要請が待っており、おいそれと帰れなくなってしまうのだ。

 目的はもちろん、リルナの持つ召喚術。ホワイトドラゴンを呼び出せるだけでなく、大精霊まで呼び出すことができるのだ。遠征時にこれほど役に立つ能力は無い。

 すこし前なら当たり前にいた召喚士という存在だが、今となっては現役で活躍するのはリルナのみ。需要と供給のバランスがすでに崩壊しており、リルナの両手はおろか両足ともども引っ張られている状態だった。


「ふへ~……」


 ということもあって、冒険者の宿『イフリート・キッス』の二階にある談話スペースでリルナはテーブルに突っ伏していた。


「なにを落ち込む必要があるのじゃ、我が友人よ。召喚士という職業復興の第一歩ではないか」

「ご機嫌だね、お姫様は」


 テーブルに突っ伏すリルナの横で、メロディはアップルパイを食べていた。ちなみにサクラはソファで寝転んで読書中。本のタイトルを見る限り、お子様向けでは無さそうだ。


「ふっふっふ。実は妾にもパーティ加入の要請がきた」

「え!? 抜けちゃうの?」

「ついでにリルナちゃんも一緒にどう? と言われたからのぅ。お姫様はどうやらオマケらしいぞ」


 かっかっか、とメロディは笑う。お姫様でリルナを釣るつもりだったのだろう。相手を十歳児と舐めすぎだった。


「サヤマ女王には聞かせられない話だね」

「母上なら嬉々として付いて行って内部破壊を楽しみそうじゃ」


 確かに、とリルナは呟き、よくよく考えてゾッとした。


「しばらくは依頼も受けられそうにないな」


 話を聞いていたのか、サクラがソファから声をかけてきた。ちらりと覗く本の中身は文字ばかりで、どうやら英雄譚か何か、文字ばかりのお話のようだ。


「わたし抜きで何か受けてもいいよ」

「そういう訳にも行かんやろ。どうや、お姫様。ウチと一緒に娼館の受付嬢でもやるか?」

「おもしろそうじゃな」

「絶対にダメ!」


 リルナの一声にサクラは肩をすくめ、再び読書へと戻った。やたらとニヤニヤしているのは、本の内容が面白いのか、リルナの現状が面白いのか。判断はつかない。


「何故じゃ? 別に男と寝る訳ではないぞ」

「いやいや、仮にも領主の一人娘が娼館の受付してるなんて話が広がったら、サヤマ女王にいい迷惑だよ。きっとたぶんっ」


 なんかこう政治的に悪い気がする、と十二歳の頭で直感的に感じたことをメロディに説明する。


「しかしのぅ、いつまでもダラダラしておってはいずれお金は無くなるぞ? となれば、妾の実家に案内するが、それでも良いのか?」

「それは嫌だなぁ」


 メロディの実家は、そのままお城を意味する。サヤマ城に寝泊りしている冒険者、なんて情報は龍喚士以上の何だか申し訳ない付加価値だ。リルナとしては全力で遠慮したいところではある。


「おっと、ルル殿。紅茶のおかわりを一杯」

「あ、は~い」


 通りかかったルルにメロディは紅茶のおかわりを注文し、再びアップルパイに手を伸ばす。


「リルナも食べるか? やはりハーベルクのつくるお菓子は美味しいのぅ」


 トロリとこぼれそうになるリンゴの蜜をチロリと舌でうけとめて、メロディはアップルパイを頬張る。シャクリ、とまだ硬さが残るリンゴがおいしそうな音をたてた。


「……一切れちょうだい」

「うむ。乙女たる者、甘いものと可愛いものには勝てぬ」

「あはは……ありがとう。サクラもいる?」


 ソファで寝転ぶサクラはヒラヒラと手を振った。


「ウチは爺やからな。甘いものより、甘い誘惑が好きじゃ。ハニートラップに一度はかかってみたいもんや」

「レナちゃんに殺されてもしらないよ」


 サクラはケラケラと笑うのみ。数百年生きているだけに、美味しいものはすでに食べつくしたのかもしれない。


「お待たせしました~」


 ルルが紅茶をお盆にのせて一階から上がってきた。相変わらず冒険者たちが今日も今日とて押し寄せており、酒場兼食事処は大賑わいだ。


「うむ、ありがとう」


 メロディは紅茶のカップを受け取ると、かわりに紅茶の代金分のガメル硬貨をお盆に乗せた。


「あと、お客様が来ているんですけど、どうします~?」

「お客さん?」


 リルナの疑問にルルはこたえる。


「はい~。下で待ってもらってますよ~」

「どうせパーティの引き抜きでしょ? 断っていいよ~」


 ここ数日、イフリートキッスに直接パーティ勧誘に来る猛者もいることにはいた。最初の数人は相手をしたが、その後はカーラやルルに門前払いをしてもらっている。


「いえ~、それが……」


 少しばかり歯切れの悪いルルに、リルナはアップルパイから顔をあげて、どうしたの、と聞いた。


「情報屋さんなのです」

「情報屋?」


 聞きなれない名前に、リルナは鸚鵡返しに聞き返すのだった。


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