黒いフード
「おいそこの蛮族ども。その汚い手を離せ」
声の方には真っ黒なコートをまとった人が、物凄い剣幕でこちらを見据えていた。
ただならぬ威圧感に私やお兄さんは怯む。
彼らは“女神の涙”を探すのを止め、フードの人を睨みつける
だが、ただの強がりにしか見えない
「僕を知らないなんて、流石蛮族どもだ。その腐った脳味噌、僕が直々に叩き直してやるよ」
フードの人はそう吐き捨てると、何か呪文のようなものを唱えはじめる。
どれくらいがたったのだろうか、彼が立っている場所から約半径50センチぐらいに、よく分からない文字や数字の羅列が書いてある円が浮かび上がった。
「七つの大罪、怠惰を司る悪魔ベルフェゴールよ。今ここに現れ、この者に裁きをくだせ」
唱え終えると同時に地面の円が輝きだし、彼の後ろから何か大きな動物の様なものが姿を表し……
「ごめんなさい、ごまんなさい! 野郎共ずらかるぞ」
ボスは、泣きながらかつ噛みながらも全速力で逃げだした。
最初の威勢のよさはどこへいってしまったのだろうか。
「スフィー様に手を出すからこんなことになるんだ馬鹿が……大丈夫ですか姫様? お怪我はございませんでしょうか」
さっきの様子とはうって代わりフードの人は優しく微笑む。
その顔は、幻の中で私をだき抱え、涙を流したその人だった。