女神の涙
勢いよく逃げ出したものの、ごく普通の女子高校生が大の大人に勝てるわけもなく、私はいとも簡単に捕まってしまう。
「捕まえたぞ……スフィーリア=ネロー!」
子分に私を縄で縛り付けるように命令を下し、満足そうなボスは私に話しかけた。
とりあえず、彼らは大きな勘違いをしている。
私の名前は城田泉であって、スフィーリア=ネローなんて童話のお姫様見たいな名前じゃない。
とりあえず、世界には似てる人物が三人いるという理屈で無理やり納得。
とにかく私は、この人たちの誤解を解かなくてはいけない。
私は持てるすべての力を使い彼らを説得しようと試みることにするのだった。
「人違いです、私は城田泉! スフィーリア=ネローさんとはまったくもって赤の他人。認識も何もありません」
「誰がそんなつまらない嘘を信じるか! いいから早く“女神の涙”をだせ!」
私の態度にむかついたのか否か、私を怒鳴りつける。勿論私は“女神の涙”なんて知らない。
そんなことよりも、怒鳴られた時に飛んできた唾が私の顔についてしまった方が大問題だ。
「“女神の涙”なんて知りません! 縄をほどいてください!」
「黙れ!“女神の涙”さえあれば俺達は貧乏生活とおさらばできるんだ!」
そういうが速いか、彼らは私の体の所々を探し始める。
必死に抵抗するも、抗える訳もなく私はされるがままだった。
その時だ。ききおぼえのある声が耳に響きわたったのは。