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男と声
ここはある狭間のセカイ。
常人には行き着くこと、否存在すらも知る事がないだろう空間に人が一人。
その人は蝋燭の下、熱心に何かを書き続けていたが、何かを悟り手を止める。
「選ばれしお姫様がやっと来てくれたみたいだ」
声から男と推測される人物は、なにもないはずの暗闇に話しかけた。
しかし声色からは、彼が喜んでいるのか、哀しんでいるのかまったくわからない。
「そうだね……あのこはちゃんとおかたづけできるの?」
誰もいないはずの暗闇から声が聞こえた。
それは少年よりは低く、少女以上高いそれは声というより音と言う方が近い。
理解しがたくまったくもって矛盾しているが、それ以外に当てはまる言葉など見つかるはずもない。
「わからないけど彼女に頼るしかないよ。それしか方法はないからね」
彼は大きくと伸びをすると、本棚から一冊の古びた本をとりだし、丁寧にページを捲った