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骨食い鬼  作者: 湯ノ木巡
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見つけないで

 ――――見つけないで。

 サクラは一心に祈りをささげた。

 走りつかれた。もう、歩きたくない。

 恐ろしいことをしてしまった。山から逃げ出すなんて。これは、タラキとかいう男のせいだ。あいつが私に嫌なことを言わなければ逃げようなんてきっと思わなかった。

「どうしよう」

 見つかったら、殺される?

 死ぬのはいや。死にたくない。

 涙をふいているうちに、目元がヒリヒリと痛み出した.

どうすれば、ゆるされるだろう。必死で頭を下げてこう言おうか。もう師など望みません、この山の下働きで一生を終えてもかまいません。…そんなの嫌だ。嘘でも口に出したくない!

 優しい師に、質問し教えてもらうのが夢だったのに。それを思って今までつらいことも乗り越えてきたのに。

 逃げたりしなければよかった。

 いったいどんな殺され方をするんだろう。崖っぷちに立たされて背後からつきとばされるのかな?

「ゴメンナサイ」

 逃げ出したことは取り消せない。もしかしたら、取り消す方法があるのかもしれないけど、師についていない私はそれを知らない。

「ここにいたら、そのうちみつかってしまう」

 そうだ。桜の木を探そう。

 骨鬼はそれに近づけないはずだから。

 少し、元気が出た。腰の袋から、骨を取り出してなめた。わずかな生気がぴりっと舌を刺激する。

「よし」

 足が軽くなった。朝食を食べていないせいで、心が沈んでいただけで、なにもかもうまくいっている気がする。ためしに、少し微笑んでみる。

 骨を布袋にしまい、再び足を踏み出した。

 冬桜というものがあるらしい。

 冬に開花する桜で、ちょうど今頃咲いているはずだ。

 でも、桜を見つけたら、今度こそ本当に申し開きができなくなる。

 骨鬼たちを裏切る覚悟をしないと。

 陰気な彼らに未練はないけど、報復がおそろしい。いや、怖がっていたら何も変わらない。

 震える足を叱り付け、サクラは仲間に背を向けた。 

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