二 転校生
キンコーンカンコーン
「おーいお前ら席に着け。かねなったぞ!!」
と怒鳴りながら先生が入ってくる。がしかし生徒は、先生のことなど露知らずといった感じでおしゃべりに夢中である。しばらくたってもおしゃべりはとまらなかった。しびれを切らした先生は…
「転校生が着たんだ。早く座れ!!」
今度は、少し強い口調で言う。生徒達はというと転校生と聞いてざわめきがいそう強くなっている。
「転校生かどんなやつかな」
「きっとかわいい女の子じゃないか」
などと期待満点の様子である。
「早く席に着け!!転校生に入ってもらえないだろうが」
そろそろ先生の機嫌が悪くなってきたので生徒達は、しぶしぶ各自の席に向かい座る。それを見て先生は機嫌を直し
「よし転校生を紹介しよう!!さぁ火向光さんはいって」
と言って出入り口のほうを向きいった。
生徒達は出入り口にいっせいに目を向ける。
みんなが期待をよせているのだ。
まだ幼さが抜けきっていない少女が入ってきた。
教室の一同は、一瞬時間が止まったかのように少女に見入っていた。
それは、少女がかわいいからというだけではなかった。何か不思議と見せられている。そんな変わった雰囲気が少女にはあった。おずおずとした表情で少女は先生のとなりに移動した。そして前を向ききょとんとした目で教室の生徒達を見やる。教室にいる生徒一同がまるで時間がとまっているかのようにぼうっと自分をみているからだ。
「さぁ自己紹介して」
先生の声がまるで合図だったかのように生徒達は動き出した。すると少女は恥ずかしいのか下を向いてしまった。しばらく間があき覚悟ができたのか少女はいきなり話し始めた。
「えっと!!私は、火向光です。よろしくお願いします」
ちょこんと頭を下げる彼女は妙に愛らしかった。
それが僕の光に対する最初の印象だった。
彼女はすぐにクラスの人気者になりクラスになじんでいった。
彼女が転向してきてからの日々はあっという間に過ぎていった。
そんな平和な日々が続いていた。
いつまでも続く日常。
平和な日常。
そんな日常が当たり前だと思っていた。
でもいつまでも変わらないものではなかった。
些細な出来事で壊れてしまうものだった。
人は始めてそれが壊れて気づくものなのだろう。
僕がそうだったように…単調でつまらない日常。
先が見えている繰り返される日常。
よく自分でそう言っていた。
でもいざそれが壊れてしまうとそんな日常でもよかったとおもえる。そうつまらなくてもいい、日常が一番いい。そんな日々のなかでもその人の生き方なりやり方なりでいくらでもかわる。楽しみだってみつけることができる。そうした考えが僕にもあれば…自分のすべてを受け止められる自分が入れば、こんなことはおこらなかったのだろう…