エピローグ
ここは人類が住む大陸から遠く離れた列島だ。
現代の船ではたどり着けないだろう、その列島には数多くの魔族が住んでおり、国を形成していた。
そして、その国の中心となる都市。そこには巨大な城が建っていた。
城の一番奥には国王の私室があり、そこで二人の男が楽しそうに雑談を交わしていた。
彼らの前には、ミニテレビのような魔道具が宙に浮いている。
「はははははっ! 見たかカイン? 人工勇者だってよ!」
その二人のうち片方は魔族の国王、人類からは魔王と呼ばれている男だ。
ミニテレビには迷宮都市の一部、ちょうどレオナードが人工勇者と対峙しているところを映し出している。
それを見ながら、魔王は笑っていたのだ。
「何を考えているんだ、人間は。あれはそういうものじゃないだろうに」
魔王に対するもう片方の、カインと呼ばれた男は呆れた口調で答える。
迷宮でたまに取れるアーティファクトは、過去存在した魔道具を模倣したものが多い。
誰が迷宮を造ったのかは魔王ですら知らないが、その存在は厄介なために、こうして適宜監視をしているのだ。
もっとも的外れな運用をしているケースが多いからか、まるでバラエティ番組を見て笑っている感覚だった。
「本当だな。こっちから攻めるなんて面倒くさいことなど、やらないというのに。ご苦労なことだ」
第一、ここから人類の住む大陸まで遠いのだ。
行けなくはないが、行ったとしてもそこまでのメリットはない。
先代魔王のように戦いが大好きで、自ら大陸まで遠出して攻め込んだ、という馬鹿な理由でもなければ、行く必要はない。
「そういや、この子か? お前が育てた人間は?」
ミニテレビは人工勇者を観察していた、フィーリアを映し出していた。
十代半ばの人間の女だ。特別何かあるようには見えない。
なぜ四天王の一角であるカインが、人間などを育てたのか疑問に思っていた魔王は、ちょうどいい機会なので聞いてみることにした。
「ん? フィーリアのことか。正直弱かったな。転生者っぽかったし、勇者みたいに強くなるのかと期待していたんだがな」
「強さだけで判断するなよ、おい」
「ブランや分析の魔眼をやったけど、それでも弱かったな」
「……は? 人間にブランをやった?」
魔族にとってブランは高い知名度を持っている。
カインに破れ、死んだあと剣になってしまったが、それでも一部の魔族からは今でも慕われているほどだ。
「どうせ使い道なんてなかったんだ。別にいいだろう? それに分析の魔眼だって微妙だったからな」
「はぁ……またお前は勝手に……ま、別にいいけどな」
「いいのかっ!」
「どうせ人間など、百年も経てば死ぬからな。死んでからブランを回収すればいいさ」
魔王に反抗する魔族の一部がブランを使って、何かをするのならばともかく、相手は脆弱な人間だ。
いざとなれば奪うこともできるし、そうでなくとも時間が経てば勝手に死ぬ。
「しかしこの子、お前を随分と慕っているな」
「少々依存度が高すぎるのは欠点なところだ。あ、でもフィーリアの作る飯は、奇妙なものは多かったが美味かったぞ」
「ほう。それは一度俺も食ってみたいな」
「機会があれば食わしてやろう」
「楽しみにしているぞ」




