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魔王軍のスパイ(自称)、迷宮都市で冒険者をやってます  作者: にしはじめ
第三部

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第四話


(貴様らは、今まで何をやっていたのだ?)


「…………」

「はぁ……はぁっ……」


 ブランのお説教から始まった。

 あたしは、未だに痛むお腹を押さえてるし、ローゼちゃんは息を切らしていた。

 二人とも致命傷でなかったからか、あたしの簡易的な回復魔法で事なきを得た。

 それでも、大敗といっていいだろう。ブランがいなければ、二人とも死んでいたに違いない。


(フィーリア、お前は冷静さを欠いていたな。感情を制御せよ)


 普段のあたしなら、あそこまで無様な姿を見せなかっただろう。

 それでも、人数差がここまで出てしまうとは、思わなかった。


 ……甘かった。


 そういわざるを得ない。

 そして、何があったかと言えば……。


====


 十五階層へとやってきた。

 以前パンチョさんが言ってた通り、ここは本当に登竜門だった。


 初めて出会った敵はオーガ一体、ホブゴブリン一体、ゴブリン三体の編成だった。

 一目でオーガがやばいと感じた。体格は三メートルほどあり、さらに片手には鉄のとげがついたこん棒みたいなものを持っていた。

 あんなのまともに喰らえば、人間など簡単に肉塊へ変わっちゃう。ローゼちゃんが、あれに狙われれば致命傷を受けかねない。

 そのため、まず最初にオーガへと突っ込んだが、残りのホブゴブリンやゴブリンたちが、一斉にローゼちゃんへと殺到した。

 それを確認したあたしは、なるべく早くオーガを倒して、ローゼちゃんのサポートに回らないといけない、そう焦ってしまった。

 その焦りが隙を作ってしまった。


 オーガは力自慢と聞いていたけど、それは事実だった。

 あたしの、力一杯の攻撃をいとも容易く防いできた。しかも防御に徹している。

 オーガの持つこん棒が、まるで盾のように弾いてきた。まさか、こんな簡単にいなされるとは思ってなかった。


(剣技でなく、力で振り回しておるぞ。それでは、オーガと大して変わらんな)


 焦りで力任せに斬りかかったことを、ブランから冷静に突っ込まれた。

 分かってはいたけど、なかなか落ち着けない。こうしている間にも、ローゼちゃんが襲われているのだ。

 それをオーガは、口元を歪めながらも、簡単に弾いていく。


 なんで!?


 オーガが大きすぎて、どう頑張っても胸元辺りまでしか、剣が届かなかったのもあっただろう。

 それでも、いつもに比べて断然下手だった。

 あとから思い返せば、ブランという魔剣を持っているんだから、相手の武器くらい破壊できたはずだ。


 その間にも、ローゼちゃんが追い込まれていく。彼女は、地面を隆起させたり、目つぶししたりで時間稼ぎをしていた。

 それでも狭い通路であり且つ、あたしから距離を取ろうとはしなかったので、どうしても逃げられる範囲は狭い。

 人数の差が、ここまで明確に出てくるとは……。

 なんでローゼちゃんだけを執拗に狙うのか。


(獣風情ですら、弱いものから狩ることを知っている。驚くことはあるまい?)


 ライオンとか群れで狩る動物は獲物を狙う際、一番弱い獲物から狩っていく、というのは以前どこかで聞いたことがあった。

 まさか迷宮の魔物も、そんなことをしてくるとは、思ってもなかったよ。

 思い込みで、迷宮の敵って馬鹿だと思ってたけど、全然馬鹿じゃなかった。


「いたっ!」

「ローゼちゃ……ぐふっ!」


 とうとうローゼちゃんが、一撃を貰ってしまった。

 瞬間、意識がそちらへと逸れたとき、オーガがあたしのお腹を蹴り上げた。


(ばかものっ!)


 簡単に吹き飛ばされたあたし。

 オーガにとっては、けん制の蹴りだったということもあったし、当たった瞬間自ら飛んだので、幸い深いダメージではなかった。

 それでもオーガの蹴りだ。暫く動けそうになかった。

 吐きそうになったのを、堪えながらも、何とか立ち上がろうとする。


「GRUAAA!!」


 そんなあたしの姿を、歓喜の目で見てきたオーガが吠えた。鉄製のこん棒らしきものを振り上げる。

 今まさにそれが振り下ろされん、と思った時だった。


(全く、見てられぬわ!)


 途端、ブランの刀身が真っ赤に燃えた。強制的に身体を乗っ取られる。

 そこからは、あっという間だった。

 あたしの身体を操ったブランが、いともたやすくオーガを切り伏せた。

 簡単にオーガのこん棒を切り飛ばし、返す刀で腕を、最後に首を落とした。

 そのあとはローゼちゃんを追いかけていた、他の魔物たちを次々と切り倒した。


 そして冒頭のお説教へと続いたのである。


====


 既に十四階層へと避難していた。

 あのまま十五階層へ留まっていれば、次の敵が湧いた場合、それでおしまいになってしまうからだ。


(反省点はあったか?)


 あった。

 戦いでは感情に委ねる場合もあるが、頭は冷静でいろと、常々お父さまから教えてもらっていた。

 それをすっかり忘れていたのだ。

 ローゼちゃんが追いかけられていたとはいえ、ちゃんと冷静に行動すれば、ここまで被害は出なかったと思う。


 でもそれ以上に、人数差が顕著に出ていたと思う。

 パンチョさんも仲間を数人集めろといってたけど、これが原因だったのか。

 少なくとも前衛は二人いないと、全部止められないんじゃないだろうか。


 これは、無理じゃないのかな?


 どう考えても、あたしがオーガを押さえないといけない。そして、なるべく早く倒して、ローゼちゃんのサポートをする。

 ……だめだ、人数が足りない。少なくとも、あたし以外の前衛が一人欲しい。

 ローゼちゃんを、前衛へ変更するべきか?

 でも彼女はスピードタイプであり、複数の敵を相手するには慣れていない。


「ローゼちゃんって、前衛できる?」

「……数年待って貰えれば」


 そうなるよね。

 彼女は盗賊みたいな役割だ。索敵や鍵開け、罠などを発見するのが得意なんだって。

 たぶん、スラム街での生き方がそのまま反映されたのだろう。

 とはいっても、索敵はブランがしてくれるし、今のところ宝箱などは出てないから、ローゼちゃんの真価は発揮されていないけどね。

 それを簡単に変えるのは、非常に時間がかかるだろう。


(魔法をどうして使わなかった?)


 あっ!

 しまった……すっかり使うの忘れてた。

 ここへきてから、魔法はお風呂のために使ってたから、どうしても迷宮内で使わないようにしていたのが、癖になっていた。

 せめて水を纏っていれば、もう少しやり方もあっただろう。

 本当にダメダメだ。


「ブランはどうしたらいいと思う?」


(あの小娘はそうそう死なん。お前が手早く、敵を倒していけば、十分間に合う)


「囮ってこと!?」


(言い換えようか? 小娘が敵を引き付けてる間に、お前がさっさと倒すのだ。それも役割分担というやつだな)


 さっさと言われても……あのオーガ、強かったよ。魔法を使っても、時間がかかると思う。

 そもそも水属性は攻撃型ではなく、回復やデバフなんだよね。

 あたしも、ちょっとの回復と水を出すくらいしか出来ない。


「どうやって倒せっていうのよ……」


(やれることはあるだろう? 小娘ですら、色々と小細工をしていたではないか。同じことをやれば、オーガくらい倒せる)


 攻撃じゃなく、ローゼちゃんと同じようにけん制とかに使えってことか。


(さあ、休憩したらもう一度いくぞ)


「えぇ……」

「どうしたんですか?」

「ブランがもう一度行けってさ」

「……はい、確かに死ぬかと思いましたが、あれを倒せるようになれば、強くなれると思います」


 向上心があるね。あたしもがんばらなきゃ、いけないな。

 そうだよ。オーガなんて、お父さまとの訓練に比べれば、全然軽い。

 お父さまとは勝てる気がしなくて、とにかく攻撃を避けることに専念してたからね。


「よし、がんばるか」

「はい!」


 そして三回ほど戦って、魔力が尽きたので帰宅した。

 疲れた……。


「あ、ブラン。今日のお風呂は無しね。魔力切れ」


(なんだと!?)



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