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魔王軍のスパイ(自称)、迷宮都市で冒険者をやってます  作者: にしはじめ
第三部

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第一話


「何となく雰囲気が違うね」

「はい、十一階層より下は人型の魔物が多くいるそうです」


 本日は迷宮探索だ。

 そう、迷宮といえば八階層で鉱石掘りがメインだったのに、今日は探索をしに潜っている。

 ローゼちゃんという仲間が増えたため、ランクをあげようと思ったからだ。


 場所は十二階層。以前パンチョさんから、第八級探索者なら、この辺が適正と聞いたからだ。


(久しぶりに、我の出番だな)


 ブランも久方ぶりに剣として使われることを喜んでいた。

 一応強化種のコボルトにも使ったんだけどね。


 ここから二十階層までは、人型の魔物が数多く出現するようだ。

 そしてその先にいるのがエリアボス。ものすごく強いらしい。

 これを倒せば、晴れて第六級となるみたい。


 まあ、あたしの目標はまず第七級へあがること。収入を増やして、生活をもう少し楽にすることだ。

 せめて、バイトの日給よりも儲けたい。

 そのために、がんばるぞ!


 さて、十二階層から登場するのはゴブリン。初めての魔物だ。

 でも正直、強くなかった。

 十二階層だと、ゴブリンはほぼ一体しか湧かなく、囲まれることもない。

 首をかしげながら五~六体ほど倒すも、やはり手こずることはなかった。

 これで、本当に第八級の適正なのかな?


 というか、ローゼちゃんが実に暇そうにしてる。

 あたしが全部やっちゃってた、ごめんね。


「次、ローゼちゃんやってみて」

「えっ? 私がですか? 自信ありませんけど……」

「ちゃんと見ておくから」

「は、はい」


 ローゼちゃんは、ダガーを両手に持ってスピードで攻撃するタイプだ。

 ゴブリンは、完全にローゼちゃんの速度についていけてない。

 しかしゴブリンの肌は割と硬く、ローゼちゃんの力だと大きなダメージも与えられない。

 ダガー自体が軽いから、結構力が必要なんだよね。


 ゴブリン一体に数分かけて、ようやく倒せた。

 これはあたしが完全に前衛にたって、ローゼちゃんはけん制に徹してもらったほうがよさそうだ。

 特に敵が複数でてきた場合、一匹でも良いので受け持ってもらえれば、かなり楽にはなるだろう。



 十二階層は結構広く、道中で他の探索者と遭遇することも少ない。

 それでも、あたしたちと、さほど変わらないだろう探索者たちをごくたまに見かけた。

 彼らは、一体のゴブリン相手に結構苦戦していた。

 四人組だったのだが、盾を持った戦士が攻撃を受け、その隙に残りの三人が攻撃している。

 しかし、ローゼちゃんと同じく対したダメージを与えていない。


 ローゼちゃんも苦戦していたけど、あれは武器に攻撃力がないからだと思っていた。

 そうじゃなく、あたしが強い?

 いや、ブランという魔剣が強いのだろう。


 そうだよね、魔剣なんて使ってる時点で、あたしの攻撃力は高いと思うし。


 そう思いながらも、振った一太刀がゴブリンをあっけなく一刀両断にする。

 確かにこれは武器がチートだ。


(ふむ、相手にならんな)


「ブランもそう思う?」


(もう少し深く潜ってもいいだろう)


「でも、ローゼちゃんがついてこれなくなるかも」

「……えっと、ブランさんとお話ししているんですよね?」

「あ、そうそう。ごめんね」


 ブランのことはすでにローゼちゃんには、伝えている。

 たまに独り言をいうけど、ブランと会話しているから、深くは突っ込まないでって、お願いもした。

 他の人から見れば、一人でぶつぶつ呟く変なやつに見えちゃうからね。


(その娘は圧倒的に力が足りないからな。無理して攻撃に振るよりも、速さで押したほうがよかろう)


「でも、多少なりともダメージを与えられないと、困らない?」


(ペアの場合は、それぞれの役目が大事だ。お前は攻撃、そいつは攪乱。各自役割に徹し、互いに言葉を発しなくても、やりたいことを把握できるようにしろ。カバーし合え)


「難しいことを言うね」


(さすがに、今日一日で連携を取れとは言わん。一月ほど訓練することだな)


「でもローゼちゃんがダメージを与えられないと分かったら、敵はローゼちゃんを無視するんじゃない?」


(無視されない為に魔法があるのだろう? まあ武器を新調しても良いが……安物を買ったところで、意味はないぞ)


 武器は高いからね。

 あたしはブランを持っていたから、その辺のお金は不要だったから良かったけど、普通の探索者はまず武器が必要になる。

 安い武器ですら銀貨数枚。そこそこの奴なら銀貨数十枚は楽にかかる。

 そしてレオナードが持っているような、特注の武器であれば、それこそ金貨が何百枚もかかる。


 絶対手に届かない値段だよね。


「ローゼちゃん。その武器を高いのに変えたら、どう思う?」

「今より重さが変わると、動きが変わってしまいますから、重さ次第ですね」

「そっか、そうだよね」


 速さで戦うから、重さってのは重要だ。重いと力が必要になってくるし、逆に軽いと動きすぎてしまう。

 慣れの問題でもあるけどね。

 さらにそこそこの奴を買ったところで、そこまでダメージに期待はできない。

 ゲームで例えるなら、十ダメージが十三ダメージになった。ただし敵のHPは五百ある。

 正直、大きな差はないだろう。


 あたしが攻撃したほうが手っ取り早い。


 それなら、武器を新調せずランクをあげて、より力を強くしたほうがいい。

 安物買いの銭失いになってしまう。


「難しいね」

「もっと鍛えます!」


 そのあとは、ローゼちゃんに数回戦闘を任せてみたが、やはり時間はかかった。


====


 今日一日、かなりゴブリンを狩ったものの、正直ランクがあがる気配は無かった。

 それでも、たった一日で、ランクがあがるなんてことはないだろう。

 数日は様子見かな。


「いいお風呂だねぇ」


(うむ、しっかり磨け)


 帰宅後、ハムチーをローゼちゃんと食べてから、お風呂に入った。

 久しぶりに探索したせいか、何となく身体が汚れた気分になったので、徹底的に洗った。

 ブランの刀身も、たわしでごしごし磨く。今日はゴブリンを斬ったからね。

 それでも、刀身には一切の汚れがついていない。

 どういう構造をしているんだろうか。魔剣には、自動汚れ落としとか、そんな機能がついているのかな?


(何を考えておる。鞘に入っている間に、炎を出して熱で汚れを落としていただけだ)


 え?

 そんなことをしてたんだ。知らなかった……。


(我は綺麗好きだからな。太陽の光に反射し、美しく光る魔剣。素晴らしきかな)


 あー、はいはい。


 そのあと、ローゼちゃんもお風呂に入れさせた。


「どうして魔石を売らないんですか?」


 お風呂に入ったローゼちゃんが、疑問を投げてきた。

 まあそうだろうね。

 普通の探索者は、魔石を売って収入を得ている。でもあたしは、今日拾った魔石を一切売っていない。


「魔石は色々と使い道があるのよ」


 お父さまから頂いた数々の魔道具。これらは魔石が電池になってるものが多い。

 特に遁走用の魔道具は、毎度お世話になってるくらい使用頻度が高いけど、燃費も悪いんだよね。

 一回使うだけで、魔石が数個必要になる。

 だから、貯めておきたいのだ。


「それだと、生活費はどうするんですか?」

「数日くらいなら、潜らなくてもなんとかなるよ。あとバイトもしているし」

「……バイト??」


 ローゼちゃんが首を傾げた。

 あれ? ランクの低い探索者は、バイトもしていると思ったんだけど、違ったのかな?


「日給銀貨一枚だよ」

「えっ? そんなに貰えるんですか?」

「うんうん。バーガージャックっていうハンバーガー屋なんだけどね。ローゼちゃんもやる?」

「はい! 魔石がないと、生活費が心もとないので」


 あ、そうか。そうだよね。

 あたしはまだ貯金があるから大丈夫だけど、ローゼちゃんは身一つでスラム街から逃げてきたもんね。

 それに、さすがにあたし一人の収入で、ローゼちゃん分の生活費は稼げない。


 生活費を稼ぐルーティンにしないと……。




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