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魔王軍のスパイ(自称)、迷宮都市で冒険者をやってます  作者: にしはじめ
第二部第二章

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エピローグ


 ここは人類が住む大陸から遠く離れた列島だ。

 その列島の中心にある都市、さらに高くそびえる城の一室で、今日もまた魔王の笑い声が響いていた。


 いつものミニテレビ……ではなく、音声だけを双方向に届ける魔道具の前に座って、にやにやする魔王。

 相手は、迷宮都市にいた石像魔族――ガーゴイル族のアルピネスだ。


 彼はうまく街中に拠点となる場所を確保し、その報告を入れたところだった。


「はははははっ! そうか、うまくいったか!」


 魔族を操るアーティファクトがある。場所はとある迷宮の地下深くだ。

 こんな噂を流し、さらにそこへアルピネスを配置させた。

 馬鹿な人間が引っかかり、迷宮都市まで連れて行ってくれて、しかも拠点まで奪った。

 ある程度、思考を操作してはいたものの、まさかこれほど効果があるとは思わなかった。


 今回の目的は、迷宮都市内部に魔王軍の拠点を設けることだった。

 スパイは何名か忍ばせているものの、距離が遠い。

 魔道具で連絡は取れるが、直接会ったり、何かの受け渡しをする際、どうしても時間がかかってしまう。

 このため、長距離転移魔法が使えるものを、迷宮都市の近くに潜ませていた。

 ただ、長距離を転移できるものは、魔王軍の中でも非常に少ない。

 その少ない人材の中の一人を、常時潜ませるのはもったいない。


 だからこそ、迷宮都市内部に拠点を作り、そこへ転移魔法陣を作ればいいのではないか、と考えたのが最初だった。


 ただ魔法陣を設置するのに、莫大なコストがかかる。

 街の外にひっそり作っても良いが、移動に時間がかかるし、そもそも人間ごときの情報を得るのに魔法陣を作るのはもったいない、という意見も数多くあった。

 それを押し切って、魔王はこの計画を実行させた。


「それにしても早かったな」


 当初は、ゆっくり迷宮都市内部を浸食していく予定だった。


 スパイという隠密に長けたものたちならばともかく、ガーゴイル族のアルピネスという非常に目立つものを、都市に潜ませるには、人間を絡めたほうが安全だ。

 そうして、徐々に人間たちの思考を誘導していき、最終的に拠点を作るつもりだった。


 おおよそ十年。

 それくらいの期間を予想していたが、僅か一か月程度で計画は終わった。

 しかも首謀者は死亡し、何名かの人間も確保できた。

 探索者協会による捜査の手も、首謀者が死んでしまえば、なかなか進まないだろう。

 そのうち諦めるはずだ。


 また捕まえた人間たちは、思考をじっくり操作して、こちらの手先にするつもりだ。

 表だって活動するならば、人間を使ったほうが楽だからだ。

 ただ人間の寿命は短い。今後何十年か先には再び人間を集め、思考を操作させる必要はあるだろう。


(それにしても魔王様、ブラン殿がいらっしゃるとは聞いておりませんでしたが?)


「俺も、迷宮都市にカインの娘とブランがいたと聞いたのは、つい最近だったからな」


 フィーリアを絡ませるよう情報を流したのは、魔王だ。

 わざと、石化の呪いを分かるようにかけさせ、ブランに見つけさせた。

 それだけで、スパイを自称しているフィーリアが勝手に絡んできたのだ。


 まさか、そこまで安直に行動するとは思ってなかったが……。


「しかし短くなったのは、お前にとっても良いことだっただろう?」


(それは否定できませんね。人間は脆くて、手加減するのに大変でしたから。十年ほどと聞いて、うんざりしておりましたよ)


 アルピネスも魔族だ。やはり強いものと戦いたいという、考えを持っている。

 しかしガーゴイル族は、石像に変化することができ、長期間の監視任務などに向いているのだ。

 さらに彼はガーゴイル族でも魔法に長けたものであり、一族の中で唯一長距離転移魔法を使える。

 このため一族の中でも、昔から特に様々なことをやらされていた。


 たまに、うんざりして任務を忘れ暴れるときもあった。

 だからこそ、十年が一か月になったのは、喜ばしい。


「で、お前はカインの娘をどう見た?」


(至ってごく一般的な人間ですな。ブラン殿はあの姿になっても、さすがの力を感じましたが……)


「ふむ。ごく一般的な人間……か」


(何か疑問でもありましたか?)


 ごく普通の一般的な人間に、なぜブランがついているのか?

 確かにブランはカインに負け、魔剣となってしまった。そのカインがフィーリアにブランを渡したのだ。

 つまり、フィーリアの力になれと命じたということだ。

 

 ただ力を持った魔族は、易々と人間という弱者の力になることはない。

 何かしら、フィーリアに惹かれるものがあったのかと思ったが……。


 転生者というのは、厄介な存在だ。

 勇者はその典型的な存在だったし、その後に生まれた転生者たちも、人類の発展に大きく寄与している。

 フィーリアにも、何かあるとは睨んでいるが、今のところその気配はない。


「いや、考えすぎか? まあいい。しばらくは様子見だな」


 幸い、拠点も出来たし、魔法陣を設置する準備も整っている。

 転移が容易くできるようになれば、スパイたちの人員も見直さなければならない。

 人間よりも優先度の高い、龍族や巨人族の監視もあるのだ。

 しばらくは、そちらにかかりっきりになるだろう。


「報告ご苦労だった。魔法陣を設置後、帰還せよ」


(かしこまりました、魔王様)





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