プロローグ
「では、いよいよ三大組織の一角を攻め落とすぞ。狙いは……アンドレイニだ」
一千人を超える構成員の中に、ローブ姿の小柄な人物が紛れ込んでいた。
そして壇上に立つ男、ナサリオがそう発言すると同時に、周囲がざわめいた。
――アンドレイニってどこだろう?
そうローブ姿は疑問に思ったが、今は関係ない。
どうせ、そこへは攻め込めない。
なぜなら、今から魔族を操るアーティファクトを盗むからだ。
「では、グループに分かれたな? どう攻めるかローゼ、説明しろ」
「ええ!? あ、はい!」
壇上にあがっていた、小柄な女性……いや、少女へ説明を振った。
ローゼと呼ばれた少女は、いきなり振られて慌てふためいている。
ふっ、と笑みを浮かべながら、勢いよく空へと飛んで、ナサリオへと剣を向けながら突進した。
がきん、と鈍い音を立ててローブ姿の剣が受け止められる。
「貴様何者だ!」
「謎の剣士」
そう言い放ち、刀身に力を籠めると、火が全身に纏わりついた。
そして剣を交えると、たちまち五合、十合と打ち合いだした。
(むぅ……つまらんな)
謎の剣士の持つ片手剣が、持ち主へと不満を伝えた。
ナサリオと呼ばれた男の剣技は、片手剣――魔剣ブランにとって興味は湧かなかったらしい。
ただ謎の剣士にとっては、かなりの強敵だ。
魔剣ブランの強化が無ければ、おそらく負けていただろう。
それでも、徐々に押していく。吸っている魔素の量は相手に分があるものの、剣技は謎の剣士のほうが上だ。
「くっ、おい、助けろ!」
押され始めたナサリオは、背後に控える石像魔族へ命令をする。
しかし石像魔族は、謎の剣士の姿を目にした時から、戸惑っていた。
「おい! どうした!」
(ふっ、我を見て混乱しているのだろう)
謎の剣士は、なぜ襲ってこないのか不思議に思ったが、元高位魔族のブランと顔見知りだったと理解した。
それならば、このまま押し切る。
勢いを増した剣技が、ナサリオを襲った。
動かない石像魔族に動揺するナサリオは、とうとう剣を落とされてしまった。
そして、ナサリオが付けていたモノクルを、剣先でひっかけて空へと飛ばした。
「しまった!!」
それを狙っていた謎の剣士は、即座に飛び上がり、見事空中でキャッチする。
華麗に一回転までして着地すると、まるで見せびらかすようにモノクルを手で掲げた。
「それを返せ!!」
「では、魔族を操るアーティファクト、頂きました」
綺麗なカーテシーを披露した謎の剣士は、遁走用のアイテムを使い姿を消し、即座にその場を離れた。
背後で鈍い音が鳴るものの、急いで建物の外へと飛び出した。




