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魔王軍のスパイ(自称)、迷宮都市で冒険者をやってます  作者: にしはじめ
第二章

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プロローグ


 ここは迷宮都市にある一角、人気が少なく、落ちぶれた探索者や孤児たちが住まう区画だ。

 いわゆるスラムと呼ばれる場所である。

 そのスラムでもひと際古く、大きな民家に三十人ほどの男たちが集まっていた。


 彼らは勇者教会の手によって造られた人工勇者たちだ。

 元々は教会の地下室に閉じ込められていたが、制御されていたために、鍵などはかかっていなかった。

 ところが、ある日突然制御が外れ、自由となった。

 そこから自分たちの境遇を思い出し、何故か騒ぎになって手薄だった教会を抜け出して、一旦スラムへと逃げ込んだ。


 そして、今後どうするのか全員で相談していたのだが……。


「いったい教会は何なんだよ!」

「俺らは実験体だったってことか」

「はっ、教会なんてぶっ潰せばいいんだよ」


 みな教会への愚痴ばかりで、何も進んでいなかった。

 元々彼らはソロ活動していた低ランクの探索者や、流れてきた者、行く宛がなくなったものなど、居なくなっても問題のないものたちばかりだ。

 自分一人で生きてきていたためか、誰もまとめるものがいなかった。

 だからこそ、各自勝手に今までの不満をぶちまけていた。


 そうして一頻ひとしきりわめいて、ある程度発散したのか、次第に落ち着いてくる。


「なあ、俺たちって何のために攫われたんだ?」


 男が一人、疑問に思っていたことを口に出した。

 途端、みなが次々と口を開いていく。


「そりゃ無理やり勇者にされるためだろ」

「勇者ってもさ。魔王はいるって聞いたことがあるけど、魔族なんてもの一度も見たことがないんだが」

「いざ魔王が攻めてきたときに備えた、実験体じゃねーのか?」

「腹立つよな」


 男たちの中の一人は、次第に怒りを抑えきれなくなってきた。

 なぜ俺は無理やり攫われて、変な魔道具で改造され、あげくゴーレムのように使われたのか。

 確かにろくでもない人生を送ってきたが、人様に迷惑をかけたことは殆どない。いくらなんでも不条理ではないか。


 一度実験と称されて、自分の意思とは無関係に力を解放したことがある。

 しかし今回は自らの意思で解放するのだ。


「お、おいやめろ馬鹿!」 

「それやると、一気に年を取るんだぞ!!」 


 慌てて周囲の男たちが、力を解放しようとしていたものを取り抑えた。

 だが男は数人に抑えられたまま、叫ぶ。


「だって許せねぇよ!! お前らもそうだろ!?」


 それに感化されていく男たち。


「そ、そうだよな。教会の奴ら許せねぇ!」

「俺たちが一体何をしたっていうんだよ!」

「そうだそうだ!!」


 次第に熱をもっていく集団。

 その中の一人が、いかにも名案を思い付いたかのように、手を打った。


「そうだ! なあお前ら、教会に嫌がらせをしてやらないか?」

「何の嫌がらせだよ?」

「俺たちは教会の人間だ。服だってそうだろ? なら、この格好で迷宮とかに潜って探索者たちの邪魔をしてやるんだよ」

「あっ……なるほど」

「やったのは教会だと思われるだろ?」

「お前、あったまいいな!」


 次第に同調していく男たち。

 正直、せこいやり方だ。

 ただ中には、それに同意できないものも一部いた。


「嫌がらせしてどうするんだよ。それよりも、逆に探索者たちを助けて恩を売って、教会の奴らが悪だということを知らせたほうがよくないか?」

「確かに」

「うんうん、そっちのほうが正義だよな!」


 こうして三十人の男たちは、二つのグループへと分かれていった。

 やり方は違えど、結局どちらも教会へ何か復讐したい、との思いからきている。


 だが迷宮は例外はあるものの、基本は自己責任だ。

 探索者協会も、探索者同士の争いを禁じていたり、アーティファクトを発見した場合は連絡を入れる、などのルールを設けているが、かなり緩い。

 このため、探索者同士で独自のルールが設けられている。暗黙の了解というものだ。


 他の探索者を無理に助けたり、邪魔したりするのは、その暗黙の了解から外れる行為である。

 それがどう転がるのか、トラブルしか見えない。




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