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第五章 81 "禁断のピラミッドの征服"


--- **物語の前に…** ---




ファイトール生存者たちが体勢を立て直そうとしていた砦「エル=シレス」にて。緊急ホログラム信号が、全部隊に送られた。そこに映し出されたのは、高等評議会の賢者の一人、ゼル=ロスの姿だった。




「誇り高きファイトールの同胞諸君!フィニトールの生存者たちよ!」彼は、大げさな声で宣言した。「我々に降りかかった災厄は、外部からの侵略だけではない!内部からの、裏切りによるものでもあるのだ!」




「ゼニソールという裏切り者が、名誉を捨て、『ササソール』のような罪人どもと手を組んだ!奴らは、我々の信仰を、何千年もの間受け継がれてきた神聖な伝統を、破壊しようとしているのだ!」




「故に!残された高等評議会の名において、命じる!全戦士、死ぬまでシンスロインどもと戦え!戦場での犠牲こそが、ファイトールの、最高の栄誉である!」




その言葉を、心から信じる、若い戦士もいた。「名誉のために!」しかし、ほとんどの者にとって、今のこの状況で、綺麗事は、飢えた腹を満たしてはくれなかった。




--- **同時刻、荒涼とした砂漠にて** ---




禁断のピラミッドへと向かうズーロとエラーもまた、その放送を聞いていた。




「くだらん」エラーは、吐き捨てた。




ズーロは、ただ、心の中で思った。(他人を裏切り者と罵る時間があるなら、奪われた故郷の問題を、先に解決してはどうだ?高等評議会は、我々の同胞が死んでいく間に、責任のなすりつけ合いという、政治ゲームに興じている)




それこそが、彼が、ここへ来た理由だった。彼は、もはや「指導者」を信じない。「行動」を、信じるのだ。




---




二人は、ピラミッド「サドゥエン」の巨大な扉の前に、たどり着いた。ズーロが、その冷たい石の扉に手を置くと、彼のアメジスト色のサイキックパワーが、広がり、刻まれた古代のルーン文字が、閃光を放った!そして、何千年もの間閉ざされていた扉が、石が擦れる轟音と共に、ゆっくりと開いていった。




内部は、広大で、暗い通路だった。天井の水晶から差し込む光だけが、通路の両脇に並ぶ、巨大な古代の戦士の石像を、照らし出していた。




しかし、彼らが、その敷居をまたいだ、その瞬間!全ての古代の戦士像の、青い水晶の目が、一斉に、光を放った!




**<「侵入者を探知。聖域にて」>** 古く、感情のない合成音声が、全ての像から、同時に響き渡った。**<「排除プロセスを開始」>**




ズーロが、弁解する間もなく、一体の守護像が、巨大なエネルギーアックスを、彼らに向かって、振り下ろした!




「エラー!避けろ!」ズーロが叫び、エラーを突き飛ばし、間一髪で、サイキックバリアを展開して、その攻撃を受け止めた!ドォォォン!!!凄まじい衝撃に、バリアに亀裂が走った!




「思ったより、頑丈だ!」エラーが叫び返した!「貴方のサイキックが、ほとんど効いていない!」




「こいつの装甲は、対サイキック用に作られているに違いない!内側から、破壊するしかない!」




「俺が、奴を引きつける!」エラーの姿が、ぼやけた!彼は、信じられないほどの速度で、守護像たちの重い攻撃を避けながら、その関節に、二本のレーザーブレードを、叩きつけた!しかし、それは、かすり傷しか、与えられなかった!




「ダメだ!装甲が、厚すぎる!」




「ならば、力ずくだ!」ズーロは、吼えた!彼は、一体の像が立っている、その足元の石床を、サイコキネシスで、丸ごと「持ち上げた」!バランスを失い、像は、激しく倒れた!




「今だ、エラー!」




エラーは、その機会を逃さず、倒れた像の体の上へと跳躍し、その二本のレーザーブレードを、水晶の「目」へと、深く突き刺した!




彼らは、一体を倒した。だが、まだ、何十体もの像が、彼らに向かってきていた。




---




二人は、ピラミッドの、迷路のような暗闇の中を、進んでいった。隠された道を探し、古代のルーン文字の謎を解き、そして、仕掛けられた罠を、乗り越えていった。




「エラー!動くな!」クリック!という、微かな機械音。エラーの足元で、罠が作動したのだ!通路の突き当たりに、まばゆい青い光が現れ、それは、みるみるうちに巨大化し、狂ったように回転する、巨大なプラズマの球と化した!




「走れ!!!」




二人は、死に物狂いで走った!背後からは、壁も床も、全てを粉砕しながら、プラズマの球が、迫ってくる!




「行き止まりだ!」




「他に、選択肢はない!」ズーロは、全サイキックパワーを集約させ、側面の壁へと、撃ち放った!ドォン!壁に、人が一人、通れるほどの穴が開いた!二人は、最後の瞬間に、その穴へと、飛び込んだ!




---




彼らがたどり着いたのは、別の広間だった。部屋の中心の、古代の石の台座の上に、一つの物体が、置かれていた。それは、腕ほどの大きさの、漆黒の石板。その表面には、奇妙な回路の紋様が刻まれ、その中央では、青い水晶が、心臓のように、ゆっくりと脈打っていた。彼らは、一つ目の「秘密兵器」を、見つけたのだ。




「これは、何だ?」




「わからん。だが、膨大なエネルギーが、この中に、封じられているのを感じる」




彼が、その石板を手に取った、その時。部屋中の古代ルーン文字が、一斉に光を放ち、壁から現れた青い光が、四体の「守護者」の姿を、形作った!それは、石の像ではなく、純粋なエネルギーで構成された、半透明の体だった!




**<「侵入者は、『鍵』を手に入れた」>** **<「審判プロセスを開始」>**




一体の守護者が、目にも留まらぬ速さで、ズーロに襲いかかった!しかし、ズーロは、反射的に、手にした石板を、盾として構えた!キィン!石板から、濃紺のエネルギーバリアが現れ、その攻撃を、やすやすと防いだ!




「この板は…ただの武器じゃない。『鍵』だ!」




「エラー!俺を援護しろ!これを、ここから、持ち出すんだ!」




---




最後のエネルギー守護者を倒した時、ズーロは、床に膝をついた。彼は、あまりに多くのサイキックパワーを、使い果たしていた。




「この板がなければ、俺たちは、助からなかっただろうな」




「ああ。そして、まだ、他にあるはずだ。今、我々は、二つ目の石板を、探さなければならない」




彼らは、ピラミッドの奥深くへと、進んでいった。そして、ある、古代高等評議会の一員の、私室と思われる部屋で、一つの記録を発見した。それは、千年以上前の、「スレンスリーン」派と、「ササソール」派の、対立の真実を、記していた。




**<「『神々の兵器』の実験は、成功した。その力は、あまりに、強大すぎる。もし、この力がどちらかの派閥の手に渡れば、終わることのない内戦を、引き起こすだろう」>**


**<「高等評議会は、全ての兵器を、このピラミッドに封印することを、決定した」>**


**<「高等評議会は、このピラミッドを、神聖な場所、祖先の墓所であると、定めた。侵入する者は、何人たりとも許されない、と。だが、それは、ただの、見せかけだ!奴らは、自らの『恐怖』を隠蔽するために、『信仰』を、道具として、利用しているのだ!」>**


**<「我々は、去る。我々自身の、道を、模索するために」>**




「ずっと、我々は、神聖なものを守っていたのではない。我々の、自由への『鍵』を、恐れるように、騙されていたのだ」ズーロは、固く、拳を握りしめた。「もう、たくさんだ。俺は、このピラミッドに閉じ込められた、全てを、解放する」




---




彼らは、封印された情報ライブラリを発見し、「鍵の石板」で、それを、解き放った。そこには、歴史だけでなく、さらに恐るべき秘密、「ネメシス計画」の記録が、残されていた。それは、星系全体を「消去」しうる、究極兵器の記録だった。




「これこそが、奴らが、このピラミッドを封印した、真の理由だ」




「恐怖ではない。臆病さだ」ズーロは言った。「奴らは、戦争を終わらせる武器を持っていながら、それを、隠すことを、選んだのだ」




そして、同じデータファイルの中に、彼らは、禁断の高等魔術の理論を発見した!それは、「次元の裂け目」から、直接エネルギーを引き出す、ササソール派が研究しようとしていた、危険で、制御不能な、力だった!




「これだ…」ズーロは、呟いた。




「もし、このピラミッドの主動力炉を、再起動できれば」エラーが、興奮して言った。「我々は、『ネメシス砲』を、一発、撃てるかもしれない!」




「そして、この術があれば」ズーロは、自らの手に、黒い次元のエネルギーが、火花を散らすのを見ながら、付け加えた。「俺は、もはや、外部の力に、頼る必要はなくなるかもしれない」




---




彼らは、ピラミッドの奥深く、二つの道が分かれる広間に、たどり着いた。右は、豪華な、光り輝く道。左は、簡素で、暗く、不気味な道。




「高等評議会は、常に、美しさと信仰を、見せかけに利用する」ズーロは言った。「だが、真実を求める者の道は、常に、影の中に、隠されている」




彼は、暗い道を選んだ。そして、それは、正しかった。その道の先で、彼らは、二つ目の、血のように赤い、石板を、発見した!




しかし、彼らがそれを手に入れようとした時、液体金属の池から、新たな守護者、「影の番人」が、姿を現した!それは、これまでの敵とは比較にならないほど、速く、そして、完璧だった!




「他に、選択肢はない!」ズーロは、決意した!彼は、慣れ親しんだ紫のサイキックではなく、彼が学んだばかりの、「禁断の術」、歪んだ、漆黒の次元のエネルギーを、集約させ始めた!




「エラー!俺に、隙間を作れ!」




エラーは、全力を賭して突撃し、番人の防御を、初めて、強いた!その一瞬の隙を突き、ズーロは、「虚無の槍」を、放った!その次元のエネルギーは、影の番人の、エネルギーの体を、「引き裂き」、消滅させた。




ズーロは、床に膝をついた。禁断の力は、彼の生命力を、著しく消耗させていた。




しかしその時、ピラミッド全体が、激しく振動し始めた!彼らが入ってきた、石の扉が、ゆっくりと、閉まり始めた!「まずい!我々を、閉じ込める気だ!」




そして、彼らが来た通路から、慌てた足音が、聞こえてきた。ヴァルキリーが、追いついてきたのだ!




「この馬鹿者ども!お前たちは、このピラミッドの、自己防衛システムを、起動させてしまったのだぞ!」




「話は後だ!今は、逃げるぞ!」ズーロが、吼えた!




かつては敵対していた、三人の戦士が、今や、共に、死から、逃走していた!ヴァルキリーが、光の橋を創り、エラーが、罠を破壊し、そしてズーロが、「鍵の石板」で、後方からの攻撃を防いだ!




最後の瞬間、ズーロは、最後の力を振り絞り、閉まりゆく巨大な石の扉の、動きを、一瞬だけ、止めた!「行け!!!」




三人は、そのわずかな隙間から、滑り込み、間一髪で、脱出した!彼らは、砂の上で、荒い息をついていた。彼らは、生き延びたのだ。




しかし今、新たな謎が、始まった。禁断の秘密を知ってしまった、ズーロとエラー。そして、その全てを目撃した、唯一の証人、ヴァルキリー。彼らの運命は、今や、一つに、結ばれた。



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