第五章 79 "故郷なき星"
戦争は、ファイトール族と共に、長きにわたり存在してきた。しかし、それは他種族との戦争ではない。兄弟同士の、戦争だった。
物語は、ファイトールの二つの勢力間の対立から始まる。
故郷の星「フィニトール」派:古き信仰と神聖な伝統に固執する、保守派。彼らは、惑星の中心にある巨大な水晶、彼らが「スレンスリーン」、祖先の集合意識と呼ぶものから、エネルギーを引き出していた。
「ササソール」派:1200年以上前に、分派した者たち。彼らは、自由を愛し、型にはまらない思考を持つ。彼らは、スレンスリーンとの意識の統合が、将来、精神支配の道具となりうると信じていた。故に、彼らは、同族に敵意を抱くことなく、自らの道を模索するために、故郷の星を離れた。
シンスロインという、より大きな脅威の侵略により、両派間の戦争は一時的に中断され、彼らはやむなく、共闘することとなった。どれほど分裂していようとも、彼らは依然として、フィニトールを真の故郷と見なし、そして、誰もが、同じ種族の兄弟であると考えていたからだ。
しかし、その脆い同盟は、崩壊した。シンスロインが故郷の星への侵略に成功した後、群れの女王が、スレンスリーン水晶から、全てのエネルギーを吸収してしまったのだ!かつて文明を育んだエネルギーは、今や、彼らを滅ぼす兵器へと変わり、全てのファイトールは、生き残るために、宇宙の至る所へと、散り散りになって逃げるしかなかった。
その混沌と絶望の中、ただ一人、屈することを拒んだ、若きファイトールがいた。彼の名は、ズーロ。高貴な生まれではないが、先進的な武器と、強力なサイキックパワーの両方を使いこなす、万能な戦闘能力を持つ、若き戦士。彼こそが、ファイトールの、新たなる主人公だった。
今や喰われつつある水晶の都の残骸の中で、ズーロは、生き残った戦士たちを集結させた。彼らは、去りゆく避難船団を見つめていた。
「我々は、逃げるのか?」一人の戦士が、尋ねた。
「いや」ズーロは、平坦に返した。「我々は、逃げるのではない。『狩る』のだ」
彼は、空に浮かぶシンスロインの方舟艦を見上げた。「我々の故郷は破壊され、我々の同胞は、死んだ。我々は、全てを取り戻す。さもなくば、それと共に、死ぬまでだ」
…そして未来、彼の復讐の旅路は、いつか、「灰の子」の旅路と、交わることになるのかもしれない。
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フィニトールに残された、ファイトール生存者たちの最後の拠点、「エル=シレス」の砦の残骸にて。かつて輝いていた水晶の壁は、今や、戦闘の煤で、ひび割れ、くすんでいた。
突如、司令部の広場の中央に、巨大な三次元ホログラムが現れた。それは、高等評議会の賢者の一人、ゼル=ロスの姿だった。その顔は、傲慢さに満ち、真の戦争の残酷さに、一度も触れたことのない、評議会の人間だった。
「生き残ったファイトールの戦士諸君!」彼は、大げさな声で、命令を下した。「フィニトールでの敗北は、躊躇が生んだ、屈辱だ!今回の故郷奪還の戦い、ゼニソールのような者の、失敗を繰り返すな!」
彼の言葉は、目の前の状況を一切無視した、尊大さと、プライドに満ちていた。
ズーロは、震える拳を握りしめ、そのホログラムを見つめていた。(言うのは簡単だ。貴方は、ここにいなかった。我々の同胞が、死んでいくのを、見ていなかった)
「また、高等評議会の、綺麗事か」
一つの影が、音もなく、彼の隣に現れた。それは、ズーロの古くからの戦友、エラーだった。彼は、驚異的な二刀流のレーザーブレードを操る、熟練の戦士だった。彼にサイキックパワーはないが、その信じられないほどの速度と機敏さが、彼の最大の武器だった。
「我々は、シンスロインの主たる『巣』を、攻撃するよう、命じられた」ズーロは、平坦に言った。
「奴らは、何百万といる。どうやって戦う?」エラーは、率直に問い返した。「我々が十体を破壊しても、奴らは、百体を新たに創り出す」
「残りの同胞を集め、そして、何としても、巣の『心臓部』を、叩くしかない」
しかし、彼らは、ただ「信号塔」を破壊すればいいということを、まだ知らなかった。彼らは、勝ち目のない消耗戦へと、身を投じようとしていたのだ。
ズーロとエラーは顔を見合わせ、そして、命令を待つ、生き残った戦士たちへと、向き直った。彼ら、最後の生存者たちは、砕け散った名誉と、かすかな希望だけを胸に、絶望的な戦場へと、歩み出そうとしていた。
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希望は、まだ消えてはいなかった!「エル=シレス」の砦の残骸の中で、シンスロインの群れの咆哮が響き渡る!しかし、奴らは、生存者たちの団結を、打ち破ることはできなかった!
ズーロとエラーは、防衛線の中核として、立ちはだかった!「エラー!左だ!リーパーが三体!」ズーロは、プラズマ弾の雨を防ぐために、サイキックバリアを展開しながら、叫んだ!
「見えている!」エラーは短く応え、その姿が、ぼやけた!彼は、敵の包囲網へと突進し、二本のレーザーブレードが、死の円舞を踊り、瞬く間に、リーパーたちの手足を切り裂いた!
しかしその時、混沌の中、空から、まばゆい青いエネルギービームが降り注ぎ、防衛線を突破しようとしていたシンスロインの群れを、一掃した!
空から、何十隻もの水晶の降下艇が、現れた!生き残っていた、高等評議会が派遣した、増援だった!
「奴らが、来たぞ!」一人の戦士が、歓喜の声を上げた。
「喜ぶのはまだ早い!」ズーロは、吼えた。「これこそが、我々の好機だ!全員、攻撃開始!!!」
今や、戦いは、防御から、「反撃」へと転じた!増援を得たズーロの部隊は、拠点から飛び出し、シンスロインの群れと、狂ったように衝突した!彼らは、初めて、シンスロインの防衛線を、突破した!
しかし、彼らの目の前に、真の砦が、立ちはだかっていた。最も強力なシンスロインユニットと、恐るべき「信号塔」が、彼らを待ち構える、第二、そして最後の、防衛線が。
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高等評議会からの増援は、嵐のように戦場の中心へと突入した!彼らは、傲慢にも、敵の心臓部である「信号塔」には目もくれず、ただ、目の前の敵を、殲滅していった!
しかし、ズーロは、その過ちには構わず、混沌を利用した!「エラー!準備しろ!」
ズーロは、両手を上げ、力を集約させた!すると、前方にいた何十体ものシンスロインが、同時に宙へと持ち上げられた!その隙を、エラーは見逃さなかった!彼の姿が、ぼやけ、宙に浮くシンスロインの間を駆け抜け、その二本のレーザーブレードが、奴らを、瞬く間に、切り刻んでいった!
他のサイキッカーたちもまた、ある者は、触れたもの全てを「消去」するエネルギー球を放ち、ある者は、敵の群れを吹き飛ばす、サイキックの嵐を巻き起こした!ヒーラーが傷を癒し、防御ユニットが、エネルギーシールドを展開する!それは、混沌の中にあって、なお、優雅な、死の舞踏のようだった。
彼らは、シンスロインの第二防衛線を突破し、そしてついに、最大の「巣」の前へと、たどり着いた。
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彼らの目の前に、恐るべき「巣」の中心部が、広がっていた。脈打つ、生体金属の構造物。そして、その中央で、赤紫色の光を放つ、「信号塔」が、新たなユニットを、絶え間なく「生産」していた!
「あれが、奴らの心臓部だ!」ズーロが叫んだ!
「偵察部隊からの情報通りだ」エラーが言った。「あれが、この地域の、奴らの『孵化場』と『次元ゲート』だ!あれを破壊すれば、奴らは、もうここへ、増援を送ることはできない!」
「ならば、ためらう必要はない!」ズーロは、宣言した。「これが、最後の戦いだ!持てる全てを、叩きつけろ!奴らを、根絶やしにしろ!フィニトールのために!!!」
最後の攻撃が、始まった!エリート戦士たちが、持てる全ての力を、解放した!エラーが、死の舞踏のように、敵陣を切り裂き、そしてズーロは、全サイキックパワーを集約させ、空に、巨大な「光の槍」を、創り出した!
「道を開けろ!!!」
光の槍は、敵ではなく、巣の「壁」そのものに、突き刺さった!ドォォォォン!!!鉄壁に見えた防衛線に、巨大な穴が開かれた!
「突入しろ!!!」
彼らは、ついに敵の心臓部へと到達した!目の前には、不気味に光る「信号塔」と、それを守る、最後のエリートユニットたち!全てを終わらせるための戦いが、始まった!
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「全員、突入しろ!」ズーロが吼えた!
最後のシンスロインエリートユニットが、彼らの前に立ちはだかった!「俺が、道を開ける!」エラーが叫び、剣の嵐と化した!
その隙に、ズーロは、全ての戦闘を無視し、「信号塔」へと、一直線に走った!
**<「最高レベルの脅威を探知。中枢核へ接近中。全部隊、阻止せよ!」>**
全てのシンスロインユニットが、ズーロへと、一斉に襲いかかってきた!
「ズーロ!危ない!」
しかし、ズーロは止まらなかった!彼は、両手に、全てのサイキックパワーを集約させた!
「言ったはずだ!これが、最後の戦いだと!!!」
彼は、空へと跳躍し、その全身全霊を込めて、目に見えない、巨大な精神波を、「信号塔」へと、直接、叩きつけた!
ドォォォォォォォン!!!
それは、炎の爆発ではなかった。「沈黙」の、爆発だった。純粋なエネルギーの波が、中枢核の周りにあった全てを、「消去」した!彼に迫っていたシンスロインユニットは、塵と化し、そして、奴らの心臓部であった「信号塔」は、ひび割れ、そして、砕け散った。
中枢核を失った、残りの全てのシンスロインユニットが、動きを止め、そして、床へと崩れ落ちた。
静寂が、戻ってきた。
ズーロは、膝から崩れ落ち、荒い息をついていた。彼は、全ての力を、使い果たした。エラーと、生き残った戦士たちが、彼のもとへ駆け寄ってきた。彼らは、勝ったのだ。しかし、この勝利は、故郷を取り戻すための、長い旅路の、まだ、第一歩に過ぎなかった。
--- **新たなる計画** ---
戦いの後、ズーロは、生き残った者たちを集め、新たな砦を築いた。「我々には、休息している時間はない」彼は、宣言した。
エラーが、彼の隣に来た。「俺たちは、勝った。だが、これから、どうする?俺たちは、まだ、包囲されている」
ズーロは、ホログラム地図を開いた。そこには、大陸中に散らばる、シンスロインの赤い点と、同じく、散り散りになった、ファイトール生存者たちの、青い点が、表示されていた。
「これが、我々の次の目標だ」ズーロは、青い点を指差した。「散り散りになった、我々の同胞を、救出する」
「十分な戦力を集められたら、反撃に転じる。目標は、都市アンフリンだ」
「そこは、この地域の、奴らの最大の拠点だ!自殺行為だぞ!」
「いや」ズーロは、首を振った。「そここそが、奴らの『心臓部』だ。もし、我々が奴らをそこから追い出せれば、我々は、資源も、生産工場も、そして、最強の拠点も、全て、手に入れることができる」
「危険なのは、わかっている。だが、影の中に隠れていることは、緩やかな死を待つことと同じだ。我々は、戦わなければならない。全てを、取り戻すために」
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砦の建設中、ズーロは、再び、生き残った戦士たちを集めた。「我々には、資源が足りない」彼は、ホログラムに、砂漠の中央にそびえ立つ、古代のピラミッド、「サドゥエン」を、映し出した。「私は、そこへ行く」
その言葉に、会議室は、静まり返った。「正気か、ズーロ!」一人の年老いた戦士が叫んだ。「そこは、禁断のピラミッド!我々の、最も神聖な場所だぞ!」
「規則によれば、世界の終わりのような、重大な事態でなければ、そこへは入れん!」
「ならば、これは、我々の『世界の終わり』ではないのか!?」ズーロは、叫び返した!「故郷は崩壊し、同胞は死んだ!我々は、忘れ去られた惑星の、難民だ!今でなければ、一体、いつだというのだ!」
「だが、そこへ入れるのは、高位の者だけだ!」
「その高等評議会は、今、どこにいる!?」ズーロは、言い返した。「奴らは、我々を見捨てた!古い規則など、もはや、通用しない!」
エラーが、一歩前に出た。「俺も、彼らに同意だ、ズーロ。そこには、無数の罠があり、伝説によれば、シンスロインよりも強力な、古代の機械兵が、そこを守っているという」
「そして、何よりも」年老いた戦士が、震える声で続けた。「もし、お前がそこへ入れば、お前は、神聖を汚す者となる。古くからの信仰を持つ者たちは、お前を、冒涜者と見なし、お前を、憎むだろう」
ズーロは、燃えるような目で、全員を見つめた。「名誉?尊厳?伝統?そんなものが、我々の腹を満たしてくれるのか!?我々のための、新たな武器を、創り出してくれるのか!?」
「私は、冒涜するために行くのではない。だが、それを利用する時が、来たのだ!もし、その中に、我々が、この状況を、ひっくり返せるような、武器や、技術が、眠っているのならばな!」
「貴方たちは、崩れ落ちた過去の灰に、しがみつくのか、それとも、我々自身の手で、新たな未来を、築き上げるのか!?」ズーロは、最後の問いを投げかけた。「私は、決めた。私と、共に行く者は、誰だ?」




