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第四章 78 "故郷での審判"


今や戦場と化したファイトールの故郷の星、フィニトール。炎上する水晶の都のただ中で、シンスロインの女王は、もはや方舟艦からではなく、最大の巣の中心から、占領した水晶の柱と融合し、その力を増大させていた!




しかし、群れの主たる任務は、ファイトールたちが、この星からエネルギーを吸収するためにシンスロインが築いたエネルギー柱を破壊しようとするのを、阻止することだった!今や、奴らは首都圏にまで到達していた!生き残ったファイトールのエリート部隊が、侵略者の「心臓部」を目指して、進軍していたのだ!




<「分析:高レベルのサイキック波を探知。王宮地区に集結中」>




水晶の王宮の中心で、ファイトールの最高統治機関、「高等評議会」が、姿を現した。それは、最も賢明なる10人の長老と、その中心に座す、最高権力者たる4人の「議長」によって、構成されていた。彼らのサイキックパワーは、もし結集されれば、シンスロインの全軍さえも「消去」しうるほど、絶大だった。




<「結論:直接衝突は、殲滅を意味する」>女王は処理した。<「ならば、奴らに、その力を使わせなければいい。それで、終わる」>




女王の意志が、放たれた!




突如、シンスロインの群れの攻撃パターンが、一変した!ファイトールの戦士たちと戦っていた何百万ものユニットが、攻撃を止め、踵を返し、そして、「地下」へと潜り始めた!奴らは、王宮の地下を目指し、何千ものトンネルを、掘り進み始めたのだ!




高等評議会が、精神を結集する儀式を始めようとした、その時。彼らの足元の地面が、激しく振動した!ドォォォォン!!!何十万もの、自爆ユニットのシンスロインが、地下から一斉に、自爆したのだ!王宮の「基礎」は、粉々に破壊された!




かつて壮麗だった水晶の王宮が、傾き、そして崩れ始めた!精神を結集しようとしていた高等評議会は、生き残るために、散り散りになるしかなかった!




<「完璧さこそが、最大の弱点だ」>女王は、冷徹に「語った」。<「収穫の時だ。一人ずつ、な」>




その「言葉」が終わると、マキと「女王の手」が、王宮の瓦礫の中の闇から、姿を現した。狩りが、始まったのだ。




しかし、それは、終わりではなかった。王宮の破壊と、高等評議会の指導者の一部を殺害したことは、ファイトールたちを絶望させるのではなく、彼らの真の「激情」を、呼び覚ましたのだ!




水晶の都の残骸の中で、再び戻ってきたゼニソールに率いられた、生き残りの高等評議会のメンバーが、集結した。<「奴は、我々を侮辱した。我々の故郷を、破壊した。浄化は、今、完遂されねばならない!」>




彼らは、残された全ての戦力を、集結させた!




今、彼らは、その力を、結集しようとしていた!高等評議会の全員が円陣を組み、古の儀式、「消滅の歌」を始めた。彼らは、持てる全てのサイキックパワーを集め、ただ一つの目標、巣の中心にいるシンスロインの女王を破壊するための、巨大なエネルギー波を、創り出そうとしていたのだ!




--- 方舟艦にて、女王の玉座 ---




女王は、その恐るべきエネルギーの集積を「感じて」いた。<「奴らは、歌おうとしている。死の歌を。目標は、私だ」>




<「ユニット『マキ』、奴らは、群れの『心臓』を破壊しようとしている。奴らの歌を、『黙らせよ』」>




マキは、新たな命令を受領した!彼女は、そのエネルギー波と正面からぶつかるつもりはなかった。




「全部隊!」彼女の意志が、群れ全体に広がった!「目標は、『歌い手』だ!『歌』ではない!奴らを、粉砕しろ!」




都中で戦っていた何百万ものシンスロインの群れが、即座に目標を変更した!奴らは、黒い津波と化し、高等評議会の「儀式の輪」へと、雪崩れ込んだ!




それは、最も激しい、最後の賭けだった!ファイトールは、精神を結集し終えるまでの、時間を稼がなければならない!そして、シンスロインは、その心臓が破壊される前に、それを阻止しなければならない!




「奴らを、粉砕しろ!!!」




マキの意志が、戦場に響き渡った!何十万もの自爆ユニットが、高等評議会のサイキックバリアに特攻し、閃光となって散っていった!「消滅の歌」の儀式が、揺らぎ始めた。そして、一人の高等評議会員が、集中力を失った。それが、災厄の始まりだった!彼らが集めていた巨大な精神波が、ショートし、内部から爆発したのだ!




その混沌の瞬間、シンスロインの巣の中心で、女王が、最後のエネルギーを、吸収し終えた。




<統合、完了>




膨大なエネルギーが、女王の体から爆発した!それは、赤紫色のエネルギーの波となって、群れ全体へと、広がっていった!




離れた方舟艦で指揮を執っていた宰相たちも、その力の奔流を感じ取った!彼らのユニットの全てが、より強く、より速くなった!そして、戦場の中心にいたマキもまた、力が漲るのを感じていた!彼女の傷は瞬時に癒え、そのサイキックパワーは、かつてないほど、鋭く、強力になった!




今や、彼らは、ただの軍隊ではない。完璧な「災厄」と、なっていた。




マキは、儀式の輪の残骸の中で、絶望的に佇む、生き残りの高等評議会を見下ろした。彼女は、勝利ではなく、ただ、さらなる力への、「渇望」を感じていた。




<「収穫は、まだ終わらない」> 彼女は、意志を送った。そして、強大になったシンスロインの群れは、かつて誇り高かった種族に対する、最後の「審判」を、開始した。




--- ビットナリーにて ---




その頃、惑星ビットナリーで、レックス中尉と「ウォー・ハウンド」の生き残り、そして、星に取り残されたファイトールの二つの派閥は、絶望的な生存競争を繰り広げていた。




「奴らには、弱点がある!」レックスが、ゼニソールとライキに、必死に通信した。「奴らは、無秩序な群れじゃない!全ては、『信号塔』から、制御されている!あの塔を破壊すれば、それに接続されている全てのユニットが、停止する!」




その時、遥か彼方で、ファイトールの故郷の星、「フィニトール」が、自爆した!その爆発によるエネルギー波が、ビットナリー星系に到達し、シンスロインの群れを、一瞬だけ、混乱させた!




「あの、水晶頭どもに、連絡しろ!」レックスは叫んだ!「両方の派閥にだ!共通の敵がいると、伝えろ!そして、ここから生き延びる、唯一のチャンスだと!」




今や、絶望の惑星で、最もありえない同盟が、生まれようとしていた。




フィニトールの地上で、戦争は、最終段階へと移行していた。水晶の都は、炎と瓦礫に覆われていた。しかし、ファイトールたちは、屈しなかった。彼らは、誇りと尊厳をもって、戦う、古代の種族だったのだ。




一人のファイトール戦士は、三体のシンスロインを、やすやすと相手にできた。しかし、敵は、あまりに、多すぎた。それは、驚異的な「質」と、狂気じみた「量」との、戦争だった。




軌道上の方舟艦で、マキと女王は、その破壊の光景を、見つめていた。彼女たちは、復讐を遂げた。だが、その代償は、かつて偉大だった一つの文明を、灰燼に帰すことだった。




地上での戦闘が続く中、女王は、驚くべき発見をした。都中にそびえ立つ、巨大な「水晶の柱」が、ただの建造物ではなく、膨大な純粋なサイキックエネルギーを蓄え、循環させる、動力源であることを!




<「分析:これらのエネルギー源を統合した場合、スウォームの潜在能力は、700%増大する」>




<「新たな主命令:占領。破壊ではない」> 女王の意志が、響き渡った。<「ユニット『マキ』、群れを率いて、全ての水晶の柱を、占領せよ」>




マキと女王の計画は、より非情で、鋭利だった。彼らは、砦を破壊するのではない。その全てのエネルギー源を「断ち」、それを、ただの価値のない水晶の塊へと変えた後、最後に、「収穫」するつもりだったのだ!

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