第三章 67 "奇妙な信号(2)"
改装された「ナイトフォール」が、VIP用の着艦ポートに、静かに着艦した。ドアが開くと、暖かい空気と、希少な花の香りが、戦闘艦の冷たさに取って代わった。この任務は、強襲ではない。「社交界への潜入」だ。ライトとマキは、戦闘服を脱ぎ捨て、新たな役割を、演じなければならなかった。
ライトは、白く、豪華で、威厳のある、儀礼用の軍服に、身を包んでいた。彼は、密かに寝返った、ある高等な将軍の、「側近」という、役割だった。居心地は悪かったが、彼の冷徹な態度は、その役割に、奇妙なほどの、現実味を、与えていた。一方、マキは、危険な、美しさの、象徴だった。彼女は、体のラインを、強調するが、いつでも、動けるように、設計された、タイトな、黒の、ロングドレスを、身にまとっていた。彼女は、「若き外交官」という、随行員の、役割だった。
彼らは、ケイレンのパスコードを使い、外部の防衛ラインを、いとも簡単に、通過した。疑わしいほど、簡単に。
都市の中心部に到着すると、彼らは、これまで、見た中で、最も、豪華な、「ガラ・パーティー」に、遭遇した。水晶と、黄金で、できた、巨大なホールで、連邦の、エリート層と、高等な士官たちが、まるで、宇宙で、戦争など、起きていないかのように、談笑し、祝杯を、上げていた。
「我々の目標は、パーティー会場の中心にある、『司令塔』だ」ライトは、隠された、小型通信機で、囁いた。「我々は、そこへ、忍び込み、エレクター=カイを、設置しなければならない」
彼らは、群衆の中へと、紛れ込んだ。「まもなく、訪れる、勝利」に、笑い、祝杯を上げる、連邦のエリート層の、間を、通り抜けていく。偽善と、退廃の、その空気は、ライトに、戦場の、血の匂いよりも、強い、吐き気をもたらした。
「キャプテン、3時の方向」マキの声が、耳に、響いた。「海軍提督の制服を着た男が、こちらを、睨んでいる」
ライトが、気づかれぬよう、一瞥すると、一人の、提督が、疑わしげに、彼を、見つめていた。(まずい、俺がなりすましている士官の、本当の、顔見知りか)ライトは、心の中で、素早く、判断した。
その提督が、声をかける前に、マキが、動いた!彼女は、わざと、よろめき、そして、「うっかり」、近くにいた、別の、重要人物の、服に、飲み物を、こぼしたのだ!「きゃっ!申し訳ありません、閣下!」その場の、全ての注目が、マキが、引き起こした、小さな、混乱へと、集まった。その隙に、ライトは、音もなく、闇の中へと、姿を消した。
彼らは、司令塔への、入り口に、たどり着いた。そこは、二人の、上級警備兵によって、守られていた。「パスワードを」
ライトは、ケイレンから、教えられた、コードを、告げた。**<…パスワード、照合。ようこそ、大佐殿…>**
扉が、開いた。全てが、計画通り。簡単すぎた。
彼らは、塔の、最上階にある、主動力炉心制御室へと、何の、障害もなく、たどり着いた。そこは、機械で、満たされた、巨大なホールだった。そして、静まり返っていた。警備兵は、一人も、いなかった。
「罠だ」ライトは、即座に、言った。「罠に、決まっている」
「私も、そう思う」マキは、答えた。「だが、我々に、他に、選択肢はない」
彼女は、偽装スーツケースを、開き、中に、隠されていた、「エレクター=カイ」を、取り出した。彼女は、それを、惑星の、主動力炉心へと、設置し始めた。その間、ライトは、ドアの前で、見張りを、続けた。
「もうすぐ、終わる」マキが、報告した。「あと、30秒。これで、遠隔操作が、可能になる」
しかし、その時、**<「急ぐ必要はないぞ、マキ」>** ジャック司令官の声が、彼らの、コムリンクと、そして、部屋全体の、スピーカーから、同時に、響き渡った!
ライトとマキは、驚愕に、目を見開いた!「司令官!?」
**<「君たちは、よく、やってくれた。私の、期待、以上にな」>** ジャックは、冷たい声で、続けた。**<「貴様たちは、我が、新しき帝国の、『種』を、敵の、心臓部まで、見事に、送り届けてくれたのだ」>**
「何を、言っている!?」ライトは、怒鳴り返した!
**<「最終幕の、話をしているのだよ、キャプテン」>**
その瞬間!マキが、設置したばかりの、エレクター=カイが、勝手に、起動し、まばゆい光を、放った!**<!!!警告!炉心エネルギーの、オーバーロードを、検知!システムは、臨界状態に、突入!爆発まで、Tマイナス10分!!!>**
「俺たちを、利用したのか!」ライトは、絶叫した!
**<「その通りだ」>** ジャックは、平然と、認めた。**<「私は、奴らを、人質に、取るつもりなどない。私は、奴らを、指導者も、惑星も、そして、将来、私の、邪魔に、なりかねない、『英雄』も、全て、まとめて、『消去』するのだ」>**
**<「さらばだ、キャプテン、マキ。貴様たちの、犠牲は、歴史に、刻まれるだろう。最も、残忍な、テロリストとしてな」>**
その声を、最後に、通信は、途絶えた。警報が、鳴り響く中、ライトとマキは、自らの手で、設置した、巨大な、時限爆弾の、中心に、閉じ込められていた。この任務は、最初から、彼ら自身も、「標的」の一人である、「暗殺任務」だったのだ。
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ジャックの、最後の声が、途絶え、後に残されたのは、惑星サイプラスダリン中に、鳴り響く、警報と、破滅への、カウントダウンだけだった。9分59秒。
「あの、クソ野郎!」ライトは、絶叫した!裏切られたという、感覚は、これまでの、いかなる、戦場の、痛みよりも、激しかった。だが、マキ、あるいは、「リーナ」は、ただ、虚ろな目で、立ち尽くしていた。「彼が、私を、救ってくれた。だが、彼は、ずっと、私を、道具として、利用していた…」
「リーナ!しっかりしろ!」ライトは、彼女の体を、揺さぶった!「時間がない!逃げるぞ!」
彼女の、本当の、名前を、呼ばれ、彼女は、正気に、戻った。混乱した、眼差しは、再び、「ゴースト」の、決意に、満ちた、ものへと、変わった。「どこへ?」
脱出任務が、始まった!ライトとマキは、もはや、連邦兵には、構わず、混沌の中を、突き抜け、最も近い、脱出ポートへと、向かった!
しかし、その時、彼らの頭上の空が、漆黒に、染まった。機械の群れ!奴らが、来たのだ!何千隻もの、機械の艦が、軌道上から、降下してきた!奴らは、狂ったように、攻撃するのではなく、規律正しく、この惑星を、包囲していた。
「ジャックは、ただ、惑星を、破壊するだけじゃない。奴は、これを、奴の、新しい軍隊の、『餌』に、するつもりだ!」ライトは、その、最も、恐るべき計画に、気づいた。
激しい、戦闘が、再び、勃発した!だが、今度の、敵は、終わりのない、機械の群れだった!二人は、背中合わせで、戦った。「ライト」と、「リーナ」として、初めて、そして、おそらくは、最後となる、戦いを。彼らは、化け物の群れを、突き抜け、そして、ついに、緊急脱出ポートへと、たどり着いた。そこには、一隻の、小型の、連邦の、脱出艇が、残されていた!
「あれだ!我々の、唯一の、活路だ!」
二人が、船のランプへと、飛び乗ろうとした、その時!巨大な、戦闘ロボットが、空から、墜落してきた!それは、地面に、激しく、激突し、脱出ポートの、床を、粉々に、砕いた!その爆風は、二人の体を、別々の方向へと、吹き飛ばした!
ライトは、辛うじて、船のランプへと、叩きつけられた。だが、マキは、間に合わなかった!彼女は、別の方向へと、吹き飛ばされ、その体は、大破した、船の残骸に、叩きつけられた!
彼女が、立ち上がった時、その周りは、何百もの、機械の群れに、完全に、包囲されていた。
「マキ!!!」
ライトは、船の中から、絶叫した!彼は、助けに、戻ろうとした!しかし、船の、自動システムが、作動し、ドアが、閉まり始めた!
マキ、あるいは、リーナは、彼を、最後に一度だけ、見つめた。彼女は、銃を、構えた。戦うためではない。ドアの、制御パネルを、撃つために。強制的に、それを、閉ざすために!
「行け!」彼女は、コムリンクで、叫んだ!
「嫌だ!!!もう二度と、お前を、置き去りにはしない!!!」
彼女は、微笑んだ。最も、悲しく、そして、最も、真摯な、笑みだった。「貴方は、私を、見捨てたりしない。私の、最後の、『約束』を、果たしてくれるのよ。生き続けて。貴方の、『ヒーロー』としてね、ライト」
ドアが、完全に、閉まり、化け物の群れに、飲み込まれていく、彼女の姿を、遮断した。連邦の、脱出艇は、空へと、舞い上がった。
そして、ライトの船が、大気圏を、離脱した、その瞬間、惑星サイプラスダリンは、急速に、内部から、崩壊し、まばゆい、光の球となり、そして、消滅した。ジャックと、ケイレン将軍の、邪悪な、手によって。
生き延びた、ライトは、コックピットの床に、崩れ落ちた。彼は、ただ、静かに、涙を、流した。彼が、リーナを、再び、失ったことに、深く、悲しみながら。
ドアが、閉まる、直前、彼が、最後に、絶叫した、言葉は、おそらく、彼女には、届かなかっただろう。
「リーナァァァ!!!」
--- **ジャックの視点** ---
**<「連合艦隊、全艦!直ちに、散開し、撤退せよ!」>**
ジャックの、不可解な、最後の命令が、サイプラスダリンの、崩壊と、共に、響き渡った!ジャックと、残りの、連合艦隊は、即座に、ワープゲートを、開き、後方に、破滅と、混沌を、残して、逃走した。
一方、最後の瞬間に、脱出した、ライトの、小型脱出艇は、惑星の、爆発による、重力波に、捕らえられていた!「クソが!」ライトは、悪態をつき、必死に、操縦桿を、引いた!
幸運にも、ワープトンネルに、入ろうとしていた、連合の、輸送船の一隻が、緊急ハンガーベイの、ドアを、開いたままにしていた。ライトは、持てる、全ての、操縦技術を、駆使し、その、傷ついた、脱出艇を、輸送船の、中へと、滑り込ませた。
船内に、着艦した、ライトは、自分が、危険な、状況にあることを、知っていた。ジャックは、彼に、死んでほしかったのだ。彼は、大破した、脱出艇から、這い出し、ハンガーベイの、混沌の、中で、整備兵の、制服を、盗み、そして、顔を、煤で、汚し、群衆の、中へと、紛れ込んだ。
数時間後、ジャック司令官からの、公式発表が、散り散りになった、艦隊全体に、放送された。
**<「連合の、勇敢なる、兵士たちへ。今日、我々は、偉大なる、勝利を、収めた。だが、それは、悲痛な、犠牲と、引き換えだった。ライトキャプテンと、マキは、敵の、中枢を、破壊する、任務の、最中、英雄的な、犠牲を、遂げた…」>**
彼らの、「死」の報は、瞬く間に、広まった。
「ウィンターズ・クレスト」で、ステラ王女は、その知らせを、聞き、床に、崩れ落ちた。彼女の、「闇の騎士」は、消え去ったのだ。
難民船で、エララは、ただ、虚ろな目で、立ち尽くしていた。彼女の、「兄」、唯一、残された、「家族」は、もう、いない。彼女の悲しみは、静かな、復讐の炎へと、変わった。
そして、「ナイトフォール」で、ギデオンは、コントロールパネルを、粉々に、砕けるほど、強く、殴りつけた!「あの、クソ野郎!!!ジャックめ!!!」
--- **最後の光景** ---
整備兵の中に、紛れ込んだ、ライトは、自らの、「死」の報を、スピーカーから、聞いていた。彼は、嘆き悲しむ、兵士たちの、姿を、見た。彼は、固く、拳を、握りしめた。ジャックは、彼を、裏切っただけではない。奴は、リーナの、「犠牲」をも、盗み、自らの、政治的な、道具として、利用したのだ。
今や、ライトは、完全な、亡霊となった。世界の、目には、死んだ者として。そして、ただ一つの、目的のためだけに、生きる、者として。




