第三章 64 "神秘的な囁きの謎(1)"
--- **混乱した未来** ---
(この場面は、未来の視点から語られる)
ライトが、未知の座標へと向かう「ナイトフォール」を操縦しながら、彼の心は希望と興奮に満ちていた。彼は、全ての答えを見つけ出せると信じていた。
…しかし、その時の彼はまだ知らなかった。彼が「響きの頂」で出会うことになるのは、「答え」ではなかったのだ。彼は、人間の理解を遥かに超えた、奇妙な「何か」と出会うことになる。
そして、その数週間後、自室でその「何か」を見つめながら、彼はただ、自問自答することしかできなかった。「我々は、一体何のためにここへ来たのだろう?」と。答えを探す旅は、より深く、そして恐ろしい謎だけを残していった。
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ライトは、最初の謎、星系の座標を長老から受け取った後、新たな仲間たちに別れを告げ、再び、一人で旅立った。
「ナイトフォール」は、数日間にわたり宇宙を航行し、ついに、古代の水晶地図が示した、第二の惑星へと到着した。そこは、生命の兆候のない、灰色の惑星だった。
彼が、かつての「首都」の中心であった場所に着陸した時、彼が目にしたのは、巨大な墓場だった。錆びつき、奇妙な植物の蔓に覆われた摩天楼、塵に埋もれた飛行車両。彼は、道端に放置された連邦の装甲車両の残骸と、その色褪せた「血月」の紋章を見つけた。(連邦…奴らも、ここへ来ていたのか)
彼は、街の中央広場で、さらに恐ろしい光景を目にした。何百、何千という人間の骸骨が、生前の日常の姿のまま、残されていたのだ。カフェのテーブルに座ったまま、乗り合い船に乗ろうとしたまま。まるで、「死」が、彼らが気づく間もなく、一瞬にして訪れたかのようだった。
それは、戦争の痕跡ではない。爆発でもない。それは、生命体の「消去」だった。
彼は、エネルギースキャナーを起動した。すると、街の外にそびえ立つ巨大な山の方角から、微弱で、奇妙なエネルギー波が、ゆっくりとした周期で放たれているのを探知した。彼は、死の街を背に、真の「響きの頂」へと、再び歩き出した。
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ライトは、黒い山の麓にある、奇妙な三角形の入り口を発見した。その内部は、自然の洞窟ではなく、人間以外の知的生命体による建造物だった。彼は、エネルギー波を頼りに奥深くへと進み、そして、巨大な地下洞窟へとたどり着いた。
洞窟の中心には、涙の滴の形をした巨大な水晶が、淡い青色の光を、ゆっくりと明滅させていた。「沈黙する神の、堕ちた涙」。しかし、それよりも恐ろしかったのは、その周りに、何百もの機械の群れが、静かに、まるで水晶に「祈り」を捧げるかのように、あるいは、そこから「エネルギーを吸収」しているかのように、佇んでいたことだった!
彼は、すぐさま岩陰に身を隠した。謎の声、神秘的な部族、滅びた星、そして機械の群れ。その全てが、繋がっているに違いない!
彼が、水晶を詳しくスキャンしようと、スキャナーを構えた、その時。再び、彼の頭の中に、あの囁きが響き渡った!しかし、今回は、囁きではない。何千もの憎しみに満ちた、絶叫だった!
**<…侵入者…!!!汚らわしい…肉塊…!!!>**
ヴッ!!!洞窟の中心の巨大な水晶が、まばゆい光を放った!そして、その瞬間、何百もの機械の全てが、一斉に、ライトが隠れている場所へと、その赤い光学センサーの目を向けた!
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絶叫と共に、機械の群れが、彼に、一斉に、襲いかかってきた!しかし、ここは、開けた戦場ではない。岩と狭い通路で満ちた、彼の「遊び場」だ。
「来いよ、鉄屑ども!」
彼は、洞窟の闇の中を舞う「亡霊」と化した!彼は、鍾乳石を撃ち落として機械犬の群れを押し潰し、リーパーの射線を誘導して同士討ちをさせ、そして、死角から、敵を次々と狩っていった!
戦いは、ライトの、圧勝だった。彼は、疲労困憊になりながらも、ついに最後の一体を倒した。彼は、よろめきながら、水晶の前へと、歩み寄った。「お前は、一体、何なんだ」
彼が、その、冷たい表面に、触れた、その時。
ヴッ!
ライトの世界は、まばゆい白い光に包まれた!何百万もの映像が、彼の頭の中に流れ込んできた。未知の星々、人間でも機械でもない生命体、そして、彼が知ることのない、太古の大戦争の光景。そして、あの囁きが、今度は言葉ではなく、「感情」として、彼の心に直接流れ込んできた。「孤独」、「待機」、そして、「招待」。
全てが暗転し、彼は、何かのエネルギーによって弾き飛ばされた。彼が意識を取り戻した時、巨大な水晶は、もはや光を失い、ただの岩と化していた。しかし、彼の手首のHUDには、新たなデータが表示されていた。それは答えではなく、さらに遠くにある、別の星系の「座標」だった。
--- **最後の旅路** ---
ライトは、「ナイトフォール」へと、帰還した。彼は、明確な答えではなく、次の「目的地」を、手に入れた。
**<「キャプテン?そこの座標は、一体、どこですか?」>** ライラが、遠隔通信で、尋ねた。**<「我々の、探査領域を、遥かに、超えています!危険です!」>**
「わかっている」ライトは、返した。「だが、行かなければならない。そこに、答えが、ある」
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数日後、ライトは、その座標へと、到着した。そこは、驚くほどに豊かな、エメラルドグリーンの、惑星だった。彼は、森の中へと、着陸した。
そして、彼は、それらを、見つけた。鋼鉄ではなく、水晶と、巨大な樹木が、融合して「育てられた」かのような、「都市」を!
その時、彼の目の前の空間から、光の粒子が集まり、一体の存在が姿を現した。それは、純粋なエネルギーで構成された、背の高い、優雅な人影だった。
ライトは、反射的に銃を構えた!しかし、その時、あの「囁き」が、すぐ隣で話しかけてくるかのように、明確に、彼の頭の中に響いた。
**<…武器を降ろせ、灰の子よ。我々は、汝の敵ではない…>**
「お前は、誰だ?」
**<…我々はウォッチャー。我々は始まり。我々は、このサイクルを、永劫の時の中、見つめてきた…>**
彼の頭の中に、再び映像が流れ込んできた!侵略者ではなく、惑星をテラフォーミングするための「道具」として作られた、機械の群れ。彼が触れた水晶は、観測のために残された、ウォッチャーの「種子」。
**<…『捕食者』(機械の群れ)は、歪んだ形で目覚めた。奴らの意志は捻じ曲げられ、全ての生命が沈黙するまで、止まらないだろう。汝らの連邦は、それを制御しようと試みたが、それは、子供の火遊びに過ぎぬ。汝らの革命軍は、それを破壊しようとしているが、それもまた、無駄な試みだ…>**
「ならば、答えは、何だ!?」
ウォッチャーは、答えの代わりに、最後の、最も恐ろしい光景を、彼の心に映し出した。銀河の彼方から、ゆっくりと、しかし確実に、近づいてくる、より巨大な「暗黒」。それは、機械の群れさえも恐れる、何か。
**<…汝に、静寂を止めることはできぬ。ただ、それにどう向き合うか、選ぶことしかできぬ。汝らの戦争は、訪れんとする真の暗黒の前には、無意味だ。我々は、ただ、終わりの目撃者に過ぎぬ…>**
その声を最後に、光の人影は消え去った。
彼の謎を探す旅は終わった。彼は答えを見つけた。だが、その答えは、問いよりも、遥かに絶望的だった。彼が戦っている戦争も、彼が参加している革命も、その全てが、無意味なのかもしれない。




