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GalacXER 銀河の執行者  作者: Boom
第五章 [故郷なきファイトール]
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第五章 57 "惑星ヴェガナスの光"

ファイタール族司令艦のブリッジにて


ズーロは、到着したばかりの惑星ヴェガナスのブリッジの中央に、ただ立ち尽くしていた。 彼は固く拳を握りしめていた。仲間を置き去りにしてきた罪悪感が、未だに彼の心を蝕んでいた。今も通信は途絶えたまま…恐ろしい静寂が、皆を包み込んでいた。


『通信は…完全に途絶した』ライキの声が「言った」。『もはや、彼らの信号を探し出す術はない』


だが…ライキは罪悪感に沈むズーロに目をやった。 彼は、その悲痛な雰囲気を打ち破ることを決意した! 『この馬鹿者が…忘れたのか。奴らは…そんな愚かなことをする戦士ではないと』ライキは、厳しく「言った」。


彼は尊大な態度で、彼らの素晴らしさを語り始めた。 しかし、その言葉は、最も力強い士気の鼓舞となった! 『エラー…彼は極めて優れた戦士だ。彼の体は自己修復が可能で、最も絶望的な状況からの脱出方法を知っている』 『ライトは…知性の高い男だ。機転だけでゴースト部隊を打ち破ることのできた唯一の人間。安易に命を捨てるような男ではない…きっと生き延びている』 『そして、ゼンラー・ロードは…』ライキは一瞬黙り込んだ。彼の瞳は尊敬の念に満ちていた。『彼は、私がこれまで出会った中で最高の力を持つ使い手だ。もし彼が我々に見つけてほしければ、自ら『囁き』を送ってくるだろう』 『だから…敗者のように情けない顔をするな。我々は戦力を再編し…奴らを待つのだ。奴らは、我々が信念を失っていない様を見るに値するのだから』


ライキの、無骨だが誠実な言葉が、絶望の壁を打ち砕いた。 ズーロは顔を上げた。ライキの険しい顔を見つめ、やがてゆっくりと頷いた。「お前の言う通りだ」 しかし、彼ら全員の心の中では、分かっていた。 彼らの最も偉大な戦友たちが、そう簡単に死ぬはずがない、と。


壮大な艦隊が軌道上に浮かんでいた。保守派の青い戦闘艦、ササトール派の漆黒の艦、そして生存者たちの戦闘艦が、今や一つに統合されていた。 大任務を前にした最後の戦争評議会が、終わりを告げた。


ライキはズーロに向き直った。「この件は…私がササトール派の指導者(長老たち)に報告しよう」彼は言った。「全ファイタール族の避難と…現在の状況についてだ」 「彼らは同意しないかもしれんが…理解はするだろう」ライキは続けた。「これが、我々に残された唯一の生存の道だということを」


彼は、星間ゲートの映像が映し出されたホログラムスクリーンに目をやった。 「私の艦隊が…この旅の左翼の護衛部隊となろう」


ササトール族の長老たちのホログラム映像が現れた。 彼らの前に立つのは、ライキだった。 「ササトールの指導者には、起こった全ての出来事を報告した」彼は言った。「ファイニトルの崩壊…ゼニトールの犠牲…そして、我々の新たな同盟について」 『運命がお前たちを連れ戻したのだな…最も暗い日に』長老の一人が「言った」。『惑星ヴェガナスは…お前たちの故郷でもある』


惑星ヴェガナスの地表にて


今や、避難民は着陸し、仮設の居住地の建設を始めていた。 かつて静かだった惑星ヴェガナスは、今、これまでにない活気に満ちていた! ファイタール族は互いに協力し、仮設の住居を建設している。槌の音…クリスタルを切る音…そして話し声が、静寂に取って代わった。 それはささやかな幸福だったが、故郷を失った喪失感からは、逃れることはできなかった。


ズーロは丘の上からその光景を見つめていた。 人々の顔には笑みが浮かんでいた。しかし、全員の瞳の奥には、未だに悲しみと不確実性の影が宿っていた。 避難できたからといって、この場所が常に安全であるとは限らない。戦争はまだ終わっていないことを、彼らはよく知っていた。今や全員が力を合わせ、軍を再建し、そして同胞を失ったファイタール族の心を癒さねばならない。 彼らは、ただの難民ではない。 彼らは、種なのだ。


見捨てられた者たちの新たな故郷…ファイタール族の静けさが、その場を支配していた。彼らは祝うことなく、静かに、そして整然と新たな居住地の建設を始めていた。 誰もが、過ぎ去ったばかりの忌まわしい記憶から逃れるように、働いていた。


しかし、ライトのグループにとって、その場の空気は他の者たちのように穏やかなものではなかった。 今や仮設のバーへと改造された、艦「ヘカトンケイル」の食堂にて…生き残った「幻影」チームと「戦場の猟犬」部隊は、深い悲しみに沈んでいた。彼らは大量のアルコールを呷っていた。


「キャプテンに!」ギデオンはグラスを掲げながら叫び、一気にそれを飲み干すと、テーブルにグラスを叩きつけた! 「あのクソ野郎どもめ!なんで彼なんだ!」


サイラスは暗い隅で静かに座っていた。 彼は何も言わなかったが、傍らにある空の酒瓶が全てを物語っていた。レックス中尉は、手の中のグラスを虚ろな目で見つめていた。彼は、尊敬する「キャプテン」にようやく再会できたというのに、またしても失ってしまったのだ。 そしてライラ…彼女は仮面を外し、傍らに置いていた。彼女の素顔は青白く、涙に濡れていた。 彼女は、かつてライトの生命反応が表示されていた、空のデータスクリーンを見つめていた。 彼らはただ指導者を失ったのではない。 グループの「心臓」を失ったのだ。全ての希望が、あの次元ゲートと共に、消え去ってしまった。


しかし、その悲しみの雰囲気は、長くは続かなかった。突如、警報が仮設の拠点中に鳴り響いた! 「緊急ワープを検知!多数!大気圏内!」


どこからともなく現れたシンスロイドの群れ! 奴らは次元ゲートから来たのではない。虚空から現れたのだ!奴らは避難場所へと向かってくる! まだ体勢を整えていなかったファイタールたちは、混乱の中、急いで武器を手に取った!


「ありえない!」ズーロは叫んだ。「シンスロイドがどうやってここに!?ゲートは閉じたはずだ!」「奴らは別のゲートを開く方法を見つけたとでも言うのか!?指導者を失ったはずだろう!?なぜ、まるで誰かに指揮されているかのように賢いのだ!」 ズーロは、誰かの仕業であろうと推測したが、考えている時間はなかった。


しかし、奴らが目標に到達する前に… シュッ!シュッ!シュッ!何本もの黒い影が、目にも留まらぬ速さで最前線のシンスロイドの群れを駆け抜けた! 奴らの体は、不可解にも寸断された!残ったシンスロイドも、一分も経たないうちに全滅した。


静寂が戻ると、そこには、誰も見たことのないササトールの戦士の一団が現れた。彼らは全身を漆黒の外套で覆い、まるで死神のようだった。そしてその手には、不気味な紫黒の光を放つレーザーの大鎌が握られていた。彼らのオーラは闇に満ちていた。 彼らはライキの前に進み出ると、一斉に片膝をついた。


「ご無事で何よりです、ライキ様」グループのリーダーが言った。彼を師と仰ぐ言葉だった。「あなたが惑星ヴェガナスへ帰還されたこと、我々は心より嬉しく思います。あなたが去られてから、十年の月日が経ちました」 彼はシンスロイドの残骸に目をやった。「どうやら、凶暴な客人もご一緒のようですね」


ライキは、影の戦士たち…彼の「弟子」たちを見つめた。 『ただいま戻った』彼は敬意を込めて答えた。『その歓迎されざる客人のことだが、我々は奴らをシンスロイドと呼んでいる。奴らは行く手を阻むもの全てを喰らう。詳細は会議で報告しよう』


だが、その時だった。 艦「ヘカトンケイル」にて… 「キャプテン!!!」ライラが歓喜の声を上げた!「私…信号を捉えました!微弱ですが…これは、あなたのコードです!」


今や、ズーロもその信号を受信していた!それは途切れ途切れの声だったが、全員を静止させるには十分なほど、はっきりとしていた。 『…こちら…ライ…ト…エラーも…生きて…いる…』 『…ゼンラー…ロードも…同様だ…』


それを聞いたライトのグループは、安堵した!ギデオンは喜びの雄叫びを上げた!サイラスは静かに頷いたが、その口角は上がっていた。そしてライラは、喜びの涙を流していた。 信号は再び途絶えた。 だが、それだけで、彼らは一息つくことができた。彼らのキャプテンは、生きている。そして今、彼らには、戦い続ける理由ができたのだ。


だが、話はそれだけでは終わらなかった!皆が希望に満ち溢れる中、警報が再び鳴り響いた! 「緊急ワープを検知!多数!惑星地表!」


シンスロイドだ! 奴らは既に、惑星ヴェガナスに基地を築いていた!奴らは追ってきたのではない。奴らが作り出した別の次元ゲートを通じて、「先回り」していたのだ!


「くそっ!」ライキは吼えた。『奴ら、我々のサイキックの匂いを追ってきたか!』


「落ち着け!」ズーロは言った。「今、我々は奴らの基地を破壊し、奴らが残りの群れを呼び寄せる前に、通信を全て断ち切るのだ!」


今や新世代のリーダーシップを受け入れたセル・ロードが、即座に命令を下した! 「評議会軍!配置につけ!拠点の周囲に防衛線を構築せよ!」「ライキの死神の影部隊!強襲部隊として、重要な弱点を攻撃せよ!」「そしてズーロの戦士たちよ、『ダークデス』キャノンと共に、破壊の先鋒となれ!」


新たな故郷を守るための大戦が始まった! 今、彼らは奴らをこの惑星から一掃すべく、駆逐戦を開始したのだ! 『主目標は奴らの『次元ゲート』だ!あれを破壊すれば、奴らは孤立する!』


「了解!」ズーロは答えた。「全員、突撃!あのゲートを破壊しろ!」


最も激しい戦いが、惑星ヴェガナスで勃発した。 一つになったばかりのファイタール族は、彼らの最初の試練に直面した。残された最後の「希望」が、獣の群れに飲み込まれないように、守り抜くための試練に。


戦いはまだ終わらない。シンスロイドの新たな波が迫っており、次元ゲートももはや長くはもたない。 「全員!今すぐゲートに入れ!」ズーロは叫んだ。


だがその時、ゲートが完全に破壊される直前、通信が割り込んできた!それは、ライト、エラー、そしてゼンラー・ロードの途切れ途切れのホログラム映像だった!彼らは惑星ファイニトルの戦場に立っており、背後にはシンスロイドの群れが押し寄せていた!


「ズーロ司令官!」ライトは爆音に負けじと叫んだ。「今、俺の残存部隊が、こちら側からシンスロイドを食い止める!」


「馬鹿を言うな、ライト!」ズーロは絶望的に返した。「シンスロイドの数が多すぎる!我々が助けに戻ることは不可能だ!」


「仕方ないだろう、ズーロ…」ライトは静かに笑った。「俺は言葉より行動で示す方が得意でな」


エラーが映像の中に進み出た。彼の機械の体は傷だらけだった。 『私は彼の側に立とう。私の命は、この惑星ファイニトルに縛られているのだ。貴公の兵士たちに…幸運を。いずれ、我々も助けを送ろう!』(この文は、彼らがズーロたちを追わせないように、敵を可能な限り引きつけるという意味かもしれない)


そして…ゼンラー・ロードの年長の声が、最後に響き渡った。静かで、だが力強い声だった。 『悲しむな、灰の若者よ。一つのサイクルが終わり、また一つのサイクルが始まるのだ。生きよ…そして、『見届けよ』』


『生きよ…そして、『見届けよ』』 ゼンラー・ロードの最後の意志が響き渡り、ライトとエラーのホログラム映像は、次元ゲートの閉鎖と共に消えた。 ライトとの通信は、再び途絶えた。


生存者たちが到着した、惑星ヴェガナスにて、喪失の静寂が、その場を支配した。 「彼らは…我々のために命を…」ズーロは震える声で囁いた。


しかし、彼らが見た最後の光景は、死への降伏ではなかった。 今…ライトと彼の仲間たち…傷ついたエラーと弱ったゼンラー・ロードは、ゲートに間に合わなかった最後のファイタール族を助けていた。 信号が途絶える前の最後のホログラム映像は、援護射撃をするライトの姿だった。 エラーは負傷した戦士の体を担ぎ、ゼンラー・ロードは最後の力を振り絞って、押し寄せるシンスロイドの群れから彼らを守るバリアを張っていた。 それが、彼らが見た最後の光景だった。 栄誉のためではなく、他者の「命」のために、最後の瞬間まで戦い抜いた、勇者たちの姿。


ズーロは、生き残った彼の艦隊を見つめ、傷ついた同胞たちを見つめた。彼は絶望を感じてはいなかった。 むしろ、その肩に重くのしかかる責任を感じていた。彼は「未来」を託されたのだ。 そして今…

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