第三章 51
--- **影の会議** ---
物語は、戦争評議会室から始まる。しかし今回、それは戦闘計画ではなく、最高指導者たちと直接の工作員のみが参加を許された、「秘密作戦」の立案会議だった。
エヴァ司令が、ホログラムスクリーンの前に立ち、報告した。「カイアス元老院議員との秘密ルートを介した接触は成功しました!彼は、連邦評議会内のタカ派将軍たちを失脚させうる『重要な証拠』の提供に同意。しかし、条件は一つ、我々が彼の家族の安全を保障し、首都から密かに脱出させることです」
「予想通りだな」ジャック司令官は頷いた。「会合の場所は?」
「取引は、宇宙ステーション『オアシス』で行われます」エヴァは答えた。「そこは、宇宙のあらゆる場所から外交官、商人、そしてスパイが集まる中立ステーション。危険ですが、最高の隠れ蓑となります」
「これほど繊細で危険な任務には、最高のチームを送らねばならない」ジャックは、即座に決断した。「ライトキャプテンとマキ、君たちが現場での作戦チームを率い、目標を護衛する。ステラ王女殿下には、連合の『大使』として同行いただき、信頼を構築し、直接交渉を行っていただく。そしてエヴァ司令、君が、この任務の連絡調整および情報担当官だ」
「王女殿下をそのような蛇の巣へ送るのは、あまりに危険すぎる!」ウィリアム王子が、即座に抗議した。
「だからこそ、ライトキャプテンとマキが同行するのだ」ジャックは冷徹に返した。「彼らこそが、今、王女殿下が得られる、最高の護衛だからな」
彼は、ライトに向き直った。「キャプテン、君の任務は二つ。一つ、取引を成功させること。二つ、何としても、ステラ王女殿下の安全を確保すること。いいな?」
「拝命いたします、司令官」ライトは、力強く答えた。
--- **変装** ---
数時間後、ハンガーで、四人の作戦チームが、紋章のない小型の外交船の前に集結した。彼らの服装は、一変していた。ステラ王女は、優雅なダークブルーのイブニングドレス。エヴァ司令は、威厳のあるビジネススーツ。マキは、美しくも、いつでも動けるタイトな黒のドレス。彼女のカタナは、特注のバイオリンケースに収められていた。そしてライトは、洗練された漆黒のスーツを身にまとっていた。
「キャプテンが、そんな格好をすると、案外似合うのね」見送りに来たエララが、からかわずにはいられなかった。ライトは、苦笑いを返すことしかできなかった。
--- **新たな戦場へ** ---
四人は船に乗り込み、秘密基地「合流点」を離陸した。彼らの目的地は、宇宙ステーション「オアシス」。それは、弾丸ではなく、嘘と、策略と、そして駆け引きによって雌雄を決する、もう一つの戦争だった。
外交船「平和の使者」が、宇宙ステーション「オアシス」に静かに着艦した。彼らを出迎えたのは、豪華で、明るく、洗練された世界。銃ではなく、「言葉」と「視線」で戦う戦場だった。
四人は、要人とその護衛のように、メイン通路を歩いた。優雅なステラ王女が「隠れ蓑」となり、エヴァ司令が「顧問」として周囲を分析し、そしてライトとマキが、「護衛」として、群衆の中に潜む脅威を警戒していた。
彼らは、最初の合流地点であるカフェに着席した。やがて、一人のウェイターが、「善意の友からです」と言って、エヴァ司令の前に一つのカクテルを置いた。そのグラスには、「水晶蘭」が飾られていた。それが、「合図」だった。
「30分後、『スターライト・ラウンジ』で休憩すると、友人にお伝えください」エヴァが、平坦に言った。
しかし、そのウェイターが去る時、ライトは、遠くのテーブルに座る連邦の士官が、合図を送るのを見逃さなかった。そして、マキが、彼の耳元で、ほとんど聞こえない声で囁いた。「二階、11時の方向。スナイパーライフルのレンズの反射光」
彼らは、罠に足を踏み入れていた。
--- **罠の露見** ---
彼らが「スターライト・ラウンジ」に到着すると、そこは不気味なほど静まり返っていた。最も暗い隅のブースで、情報屋「シルクワーム」が、背中にプラズマ弾の焦げ跡を残し、テーブルに突っ伏して死んでいた。
「罠だ!全員、退避しろ!」ライトが叫んだが、遅すぎた。入り口は重々しい音を立ててロックされ、窓は全て、防弾シャッターで覆われた!
そして、闇の中から、十数人の漆黒の暗殺部隊兵が現れ、彼らを完全に包囲した!
「ライトキャプテン、裏切り者」隊長が、嘲笑を込めて言った。「マキ、壊れた玩具。エヴァ司令、失敗したスパイ。そして、滅びた王国のステラ王女。実に惨めな、敗北者たちの集いだ」
「貴様らの指導者、『ジャック司令官』。奴は、過去の亡霊だ。そして今日、我々は、奴の最も重要な駒を、地獄へ送り返してやる」
「真の犯罪者とは、権力を守るために、自らの星を焼き、民の命を犠牲にする者たちのことですわ」ステラが、臆することなく言い返した。
「口の達者なことだ、籠の中の鳥にしてはな」隊長は笑った。「さて、お喋りの時間は終わりだ」彼は、手を上げた。「王女は捕らえろ。残りは、全て始末しろ」
--- **閉鎖空間での死闘** ---
命令が終わると同時に、戦闘が勃発した!ライトが大理石のテーブルを蹴り倒して即席のバリケードを作り、その陰で、ステラとエヴァが身を伏せた!同時に、マキが影のように側面へ飛び、二丁の消音ピストルで敵を牽制した!
ステラの目には、彼女が想像していたような優雅な戦争の姿はなかった。ライトは、生き残り、そして守るために、あらゆるものを武器として利用する、獰猛で狡猾な「狩人」だった。そしてマキは、死の舞踏を踊るように、美しくも恐ろしい「死の嵐」そのものだった。
「ステーションのロックを突破したわ!」エヴァが叫んだ!「バーカウンターの裏のサービスドア!30秒だけ開けられる!今よ!」
ライトとマキは、互いを援護しながら後退し、死の罠からの脱出が、始まった。
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「こっちよ!」エヴァが先導した!四人はサービスドアを突き抜け、暗く狭いメンテナンス通路へと飛び込んだ!
**<!!!最高レベル警報!C-7地区にてテロリストを探知!ステーションを完全封鎖せよ!>**
警報が鳴り響き、ステーションは大混乱に陥った。彼らは、完全武装した連邦兵と、無数の偵察ドローンが展開する、絶望的な状況に追い詰められた!
「貨物輸送ドックの下層へ行かなければ!」エヴァが言った。「そこなら、まだ逃げ道があるかもしれない!」




