第五章 48 "同盟の結集"
ファイトール難民艦隊の至る所に、ゼル=ロスの布告が響き渡った。「誇り高き同胞諸君!今、我々の中に、裏切り者が現れた!貴様らがかつて英雄と称えた、ズーロ!彼は、高等評議会の命令に従わず、ゼニソールやライキのような罪人どもと、手を組んだのだ!」
「奴らの行動は、我らファイトール族を、破滅へと導くだろう!高等評議会の名において、布告する!ズーロと、その一味は、反逆者である!だが、もし、彼らが、おとなしく投降するならば、高等評議会は、慈悲を示し、彼らを、赦免しよう」
ズーロの仲間たちは、それが嘘であることを、知っていた。
「奴らが、動き出したな」ゼニソールが、静かに言った。「奴らは、シンスロインだけでなく、我々をも、狩るつもりだ」
「それでも、今は、仲間を探す方が、重要だ」ズーロは言った。「散り散りになった、我々の同胞を、一人でも多く、集結させなければならない」
--- **予期せぬ遭遇** ---
ズーロとゼニソールの小規模な艦隊が、次の生存者グループの座標へと、向かっていた。しかし、その時、彼らの目の前の空間が、血のように赤い、ワープゲートによって、引き裂かれた!そして、そこから、インワン帝国の、漆黒の戦闘艦隊が、姿を現した!
ケイレン将軍のホログラムが、ズーロとゼニソールの船の前に、現れた。「ファイトールの指揮官どもに告ぐ。貴様らは、インワン帝国の、領宙を、侵犯した!ジャック皇帝陛下の名において、降伏せよ!」
「ケイレン将軍、貴官の武勇伝は、よく知っている」ゼニソールは、精神波で、返した。「かつて、ビットナリーで、貴官の部下を、救ってやった記憶があるが、どうやら、これが、貴様らの、返礼の仕方のようだな。よかろう。貴様らのような、頑固な種族と、戦えることを、光栄に思う」
その言葉が終わると、ファイトールと、人類との、最初の戦いが、始まった!
ゼニソールの船が、サイキックバリアを展開した!しかし、ケイレンの戦艦は、プラズマ砲ではなく、「高周波ミサイル」を、撃ち込んできた!ドォン!サイキ級バリアが、振動し、亀裂が走った!
「奴らは、我々の弱点を、知っている!」ズーロが、叫んだ!
戦闘は、激化した!サイキックパワーで、優位に立つはずのファイトールが、彼らを「対策」するために、特別に設計された、人間の「技術」と「戦術」に、直面していた!
今や、ズーロとゼニソールは、同族から、逃げるだけでなく、シンスロインの群れと、戦うだけでなく、そして、この、誰も、結末を見通せない、戦争の、第三のプレイヤーとして、参入しようとしている、非情で、予測不能な、新たな「帝国」とも、対峙しなければならなかった。
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見捨てられし者たちの、秘密の拠点にて。ズーロは、最もありえない同盟、彼自身の派閥、ゼニソールとライキの派閥、そして、「ウォー・ハウンド」部隊を、結集させた。そして、彼らは、最初の共同作戦を開始した!
それは、物資と資源を奪うための、中規模のシンスロインの「巣」への、襲撃だった。この戦いで、初めて、ファイトールと、人類が、肩を並べて、戦った。
ファイトールの戦士が、サイキックバリアで、防御し、その間に、「ウォー・ハウンド」部隊が、重火器で、道を、切り開いた!それは、「魔法」と、「技術」の、完璧な、融合だった!
ついに、彼らは、勝利した。しかし、それは、少なくない、犠牲と、引き換えだった。
--- **戦闘の後** ---
炎上する、残骸のただ中で、レックス中尉は、死んだ、部下の、亡骸を、見つめていた。彼は、固く、拳を握りしめ、そして、絶叫した!「この、クソッタレが!!!」
「人間よ、貴様、我々の、犠牲を、侮辱するのか?」
レックスは、振り返り、怒りに満ちた目で、ゼニソールと、向き直った。「あんたらのことじゃねえよ、水晶頭。俺が、言ってるのは、俺たち、全員を、この地獄に、引きずり込んだ、クソ野郎のことだ!」
「インワンのことだ!あの、権力狂どもめ!」彼は、シンスロインの残骸を、指差した。「もし、あの、偽りの皇帝『ジャック』がいなければ、もし、奴の、狂った計画が、この化け物どもを、解き放たなければ、俺の仲間は、こんな、クソみたいな惑星で、死ぬこともなかったんだ!」
沈黙が、訪れた。今や、ファイトールたち、ズーロも、ゼニソールも、そして、ライキさえも、理解した。人間たちが、「ジャック皇帝」に対して、抱く、憎悪は、彼らが、シンスロインに対して、抱く、憎悪と、同じくらい、深く、そして、痛みに満ちていた。
彼らは、ただ、「共通の敵」を、持つだけではない。彼らは、「同じ憎悪」をも、共有していたのだ。そして、それこそが、いかなる、誓約よりも、強固な、絆だった。
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「これは、始まりに過ぎん」ズーロは、言った。「奴らは、また、必ず、戻ってくる。我々は、生存者を、救出しなければならない」
**<「同意する」>**ゼニソールが、「語った」。**<「戦力の、結集こそが、今、最も、重要だ」>**
しかし、レックス中尉は、首を、横に振った。「俺は、貴方たちと、共に行く。だが、俺の、目的は、違う」彼は、燃えるような、眼差しで、全員を、見つめた。「俺は、俺の、キャプテンを、探さなければならない。ライトキャプテンを」
「奴が、今、どこにいるのかは、知らん。だが、もし、奴が、生きているのなら、我々は、最強の、同盟者を、取り戻せるかもしれない」
ズーロは、頷いた。「わかった。生存者の、救出が、先だ。我々は、貴方が、彼を、探すのを、手伝おう」
そして、新たな、旅が、始まった。人間と、ファイトールの、戦闘艦からなる、小規模な、艦隊が、ビットナリーを、後にした。その道中、彼らは、絶え間なく、戦い続けた!ある時は、シンスロインの群れと、そして、ある時は、彼ら「裏切り者」を、追う、インワン帝国の、哨戒艦隊と。
--- **ヘカトンケイルにて** ---
その頃、別の宙域で、ヘカトンケイルの艦橋に、赤い警報が、鳴り響いていた!
「キャプテン!インワン帝国艦隊、追跡を、振り切れません!間もなく、射程内に!」
ライトは、静かに、艦橋の中央に、立っていた。
「ライラ!ワープエンジンの、状況は!」
「チャージ完了まで、あと3分!間に合いません!」
その時、別の、警報が、鳴り響いた!「緊急ワープアウト、探知!超巨大です!」
ホログラムスクリーンに、無数の、緑色の、シンボルが、現れた!それは、シンスロインの、機械の群れだった!
「挟み撃ちだ!」
今や、「ヘカトンケイル」と、傷ついた、難民船団は、二つの、恐るべき、大国の、真ん中に、閉じ込められていた!片方は、復讐に燃える、ジャックの、インワン帝国。そして、もう片方は、執拗に、追跡してくる、シンスロインの群れ。
「もう、終わりだ…」
絶望の声が、上がり始めた、その時。「静かにしろ!!!」ライトの、咆哮が、艦橋に、響き渡った!
彼は、二つの方向から、迫り来る、災厄を、見つめ、そして、不敵に、笑った。
「奴ら、両方と、戦えないのは、事実だ。だが、誰が、戦うと、言った?」
彼は、ライラに、命令した!「ライラ!全エネルギーを、後部シールドに!前方は、無視しろ!」「ギデオン!右舷の、全主砲、準備!俺の、合図を、待て!」
「何を、なさるおつもりです、キャプテン!?」アリステアが、尋ねた。
ライトは、全員を、見た。「逃げられないのなら、我々は、自らが、最も危険な、『囮』と、なるまでだ。我々は、奴らと、戦わない。奴らに、互いに、戦わせるのだ!」
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ライトは、辛うじて、その危機を、乗り越えた。しかし、彼の心は、晴れなかった。「エララ、ステラ王女…ジャックが、俺たちを、裏切った、あの日から、彼女たちとは、会っていない」
彼の心は、目の前の、戦争ではなく、過去の、喪失に、囚われていた。彼は、指揮官の、椅子に、崩れ落ちた。
しかし、その時、ライラが、そっと、警報の、音量を、下げ、ギデオンが、黙って、彼の、椅子の横に、立ち、サイラスが、静かに、冷たい水の、グラスを、彼の、隣のテーブルに、置いた。そして、エヴァが、言った。「ワープエンジン、準備完了です、キャプテン。貴方の、命令を、お待ちしています」
彼らは、慰めの、言葉を、かけなかった。だが、彼らは、彼に、示したのだ。彼が、一人ではない、ということを。
ライトは、顔を、上げた。「ワープの、設定を、しろ。次の、合流ポイントへ」
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「それで、どこへ、行く?」
その問いに、ライトは、ある、記憶を、思い出していた。「ライラ、この船の、データベースに、削除された、『遠距離観測ステーション』に関する、ファイルは、あるか?」
「ありました!『観測ステーションXG-7』!未探査領域の、無名の、惑星に!」
それは、かつて、彼の、頭の中に響いた、「声」が、語っていた、惑星だった!「エメラルド」。
--- **新たな故郷にて** ---
彼らが、到着した、その惑星は、エメラルドグリーンの、楽園だった。そして、そこには、光で、構成された、背の高い、人影たちが、彼らを、静かに、「観測」していた。
**<…ついに、たどり着いたか、灰の子よ…>**
その声は、かつての、囁き声ではなく、明確で、力強い、「通信」だった!
**<…我々は、ウォッチャー。この庭の、管理者。そして、お前たちは、道に迷った、種子だ…>**
「どういう、意味だ!?」
**<…お前たちの、種族、人間は、我々が、遠い昔に、撒いた、『種子』の、一つ。しかし、お前たちは、歪に、成長した…>**
「では、『捕食者』(シンスロイン)は!?」
**<…『エラー』だ。そして、お前は、それよりも、さらに、恐るべき、『エラー』を、目覚めさせてしまった。感情から生まれた、新たな、『女王』をな…>**
「ならば、どうしろと!?」
**<…我々は、ただ、終わりを、『観測』するだけだ。だが、お前の、到来が、新たな、『変数』を、生んだ。お前は、囁きを、聞く者。宇宙の、『意志』と、繋がる者。選ぶがいい、灰の子よ。お前たちの、無意味な戦争と、共に、沈むか、それとも、それを、乗り越え、訪れんとする、『真の静寂』と、向き合うかを…>**
その言葉を、最後に、光の人影たちは、消え去った。その時、一体だけが、残り、その姿を、現した。
**<「私は、ゼン=ロード。私は、ファイトール。だが、お前たちが、知る前の、時代のな」>**
彼は、未来を、予知し、この星へと、たどり着き、そして、何千年もの間、全てを、「観測」していたのだ。
「ゼン=ロード殿」ライトは、敬意を、込めて、言った。「我々は、生き残りです。どうか、一時的にでも、ここに、我々の、身を、置くことを、お許し願えないだろうか?」
**<「…よかろう。だが、条件がある。お前たちの、『意志』が、この、『サイクル』を、変えるに、足る、強さを持つか、それとも、ただ、時の風に、吹き消される、もう一つの、灰に過ぎぬかを、私に、証明して見せよ…>**