第一章 4 "キメラ計画"
三時間後、宇宙の闇の中…
インワン・フリーダム軍のステルス艦「ナイトフォール」が、獲物を待ち伏せる捕食者のように小惑星帯で静止していた。薄暗いコックピットの中で、ライトと彼のチームはホログラムスクリーンに映し出された目標を見つめていた。予測されたルートを、連邦の貨物船が航行している。
「輸送船ステラロン7号、射程内に入ります」ライラが平坦な声で報告する。「アイギス研究ステーションへ医療品と冷却プラズマを輸送中…スケジュール通りです」
「我々のトロイの木馬だ」ライトは呟いた。彼は自身の作戦スーツの上に、連邦兵の装甲服を重ね着していた。まるで、かつて捨てたはずの忌まわしい皮膚を再び纏うような感覚だった。「ライラ、EMPパルスを準備しろ。ギデオン、ドッキングポートに破孔爆弾を。サイラス、そこから我々を援護しろ」
「了解」全員が短く応えた。
ステルス艦「ナイトフォール」は静かに小惑星の影から離れ、ステラロン7号に向けて高出力の電磁パルスを放った。一瞬のうちに、輸送船の電子システムは沈黙し、金属の棺のように宇宙空間を漂った。
ライトのチームは素早く船にドッキングした。ギデオンがドッキングポートに小型爆弾を設置すると、「フッ」という軽い音と共に分厚い鉄の扉が吹き飛んだ。ライトはサプレッサー付きの銃を構え、真っ先に船内へ突入した。
船内には停電に混乱する乗組員が4人いただけだった。彼らは助けを呼ぶ暇もなく、迅速かつ静かに制圧された。
「クリア」ライトがコムリンクを通して言った。「ライラ、この船を蘇生させろ。何事もなかったかのように見せかけるんだ」
--- **破滅への航路** ---
今や彼ら四人は敵の船に乗り、敵の制服を身にまとい、敵の中心部へと向かっていた。船内の空気は緊張感に満ちていた。かかってくる通信の一つ一つが、生と死を試すテストだった。
ライトは操縦席にはいなかった。通信システムを操作するライラの隣に立っていた。
『ステラロン7号、状況を報告せよ』最初の検問所から自動音声が響く。
「航法システムに一時的なエラーが発生、デルタ・セブン・ガンマのコードで再起動中だと伝えろ」ライトが囁いた。ライラは頷き、彼女の指がコントロールパネルの上を舞い、複雑なコードと応答コマンドを打ち込んでいく。
「あなた、連中の専門用語に詳しいのね」応答を待つ間、ライラが何気なく言った。
「俺はかつて、奴らの一員だった」ライトは短く答えた。その声には苦々しさが滲んでいた。
『…了解、ステラロン7号。通過を許可する』
彼らは同じ手口で三つの検問所を通過した。ライトの過去の知識とライラのハッキング能力が、完璧な鍵となった。しかし、彼ら全員が、最も困難な関門が前方に待ち受けていることを知っていた。
--- **最終検問所** ---
ステラロン7号は、アイギス研究ステーションのドッキングベイにゆっくりと近づいていった。ステーションの巨大なアームが、接続のために徐々に伸びてくる。
「ステラロン7号、規定に従い生体認証の準備をせよ」管制塔からの声が響いた。「全乗組員は、IDスキャンポイントへ移動せよ」
それは彼らが最も恐れていたこと…網膜と顔のスキャンだった。
四人はコックピットでお互いの顔を見合わせた。「音声認証をループさせて、レーザー探知システムを10秒ほど誤魔化せる」ライラが早口で言った。「でも、私たち四人の顔を偽装するのは無理。スキャナーが作動した瞬間、ステーション中に警報が鳴り響くわ」
ライトはスクリーンに映し出された検問所の設計図に目をやった。「ならば、作動させなければいい」彼は図上の四つの赤い点を指差した。「警備兵は四人。二人がコンソール、二人が巡回。サイラス、一番遠い兵士を始末しろ。ギデオン、ドアの近くの奴を。ライラ、俺の合図でこの検問所の通信システムを切れ。コンソールの二人は…俺がやる」
全員が頷いた。計画は10秒もかからずに立てられた。
「シュー」という音と共にドッキングポートが開いた。コンソールにいた二人の警備兵が、貨物船の乗組員を迎える準備をしながら、いつも通り顔を上げた。
ライトが静かに手で合図を送る…
フッ!闇の中からほとんど聞こえないほどの音がした。一番遠くを巡回していた警備兵が、額にサプレッサー付きの弾丸を受け、倒れた。サイラスの腕前だ。
最も大柄なギデオンは、まるでヤマネコのように静かに動いた。彼はもう一人の警備兵の背後に現れると、素手で首を捻り、「ゴキッ」という骨の折れる音が響いた。
ライトとライラはコンソールへ突進した。異常に気づいた二人の兵士が銃を構えるよりも早く、ライトは彼らに到達していた。彼は一人の喉に肘を打ち込んでうずくまらせ、すぐさまもう一人の銃を払い、自身の銃のグリップでこめかみを強打し気絶させた。
全ては三秒も経たないうちに起こった。
「通信システムは遮断した!」ライラが最後のコマンドを打ち込みながら囁いた。「これでこの検問所は目と耳を塞がれた…私たちの時間はもう、カウントダウンを始めているわ」
ライトのチームは協力して警備兵の体を素早く闇の中へ隠した。今や、かつて威圧的だった検問所は静まり返り、電子システムのハミング音だけが響いていた。
彼ら四人は、アイギス研究ステーションの紋章が刻まれた巨大な防爆扉の前に立っていた。第一関門は突破した…しかし、本当の任務は…まだ始まったばかりだった。
「フェーズ1完了」ライトがコムリンクを通して言った。彼の声は冷徹で、重々しかった。「ギデオン、『歓迎の品』を準備しろ」
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四人の揃った足音が、アイギス研究ステーションの静寂な金属の通路に微かに響いた。「生物研究区画」と刻まれた巨大な防爆扉の前で、彼らは分岐点に到達した。
「分岐点だ」ライトがコムリンクで言った。「ギデオン、お前の目標は東の補助パワーステーションだ。サイラス、ライラ、ルートを確保し、制御棟でデータ侵入システムの準備を…合流地点で会おう」
「了解。幸運を、ライト」ライラが応えた。
チームは迅速に散開し、分厚い防爆扉の前にライトが一人残された。
彼は一秒たりとも無駄にしなかった。小型の破孔爆弾をコントロールパネルに設置し、後退して起爆装置を押した。
フッ! ドン!
爆発音は可能な限り抑えられていたが、それでも中にいる警備兵に気づかせるには十分な音量だった。
スライドドアが開き、連邦の白い装甲服をまとった五人の兵士が、銃を構えて姿を現した。
戦闘は一瞬で火蓋を切った!
ライトはドア横の遮蔽物に飛び込み、厳しい訓練で培った速さと正確さで応戦した。彼の銃から放たれた青いプラズマ弾が線を描き、最初の二人の警備兵を即座に撃ち倒した。
残りの兵士は激しい制圧射撃を開始した。ライトは床を転がり、壁を焦がす弾丸の雨を避けながら、低い姿勢から反撃し、さらに二人を仕留めた。
最後の兵士は形勢が悪いと見て、壁の警報パネルに向かって走った。
「やめろ!」ライトが叫んだが、遅すぎた…
ウィー!ウィー!ウィー!ウィー!
警報サイレンがステーション中に鳴り響き、赤い非常灯が全ての通路を照らし出した。「侵入者発生!生物研究区画にて侵入者発生!」自動アナウンスが轟いた。
様々な研究室のドアが開き、白衣を着た科学者たちがパニックに陥って逃げ惑う。ライトは目標に向かって深く進むため、彼らとすれ違った。
その混乱の中…彼がメインの観察ホールに曲がろうとした瞬間、彼は息を呑んだ。
軍曹の階級章をつけた一人の兵士が、彼の行く手を塞いでいた。その口元に浮かぶ侮蔑的な笑みと、憎しみに満ちた眼差し…彼はそれをよく覚えていた。惑星ザムのバー「宇宙の果て」で会った、あの軍曹だった。
「よう…」軍曹が、サイレンの音に負けないほどの声で言った。「新しい嵐が何を運んできたかと思えば…第7部隊の亡霊じゃないか。てっきりあの田舎の惑星と一緒に朽ち果てたもんだと思っていたぜ」
「どけ」ライトは冷たく応え、銃口をかつての敵にまっすぐ向けた。
「どけだと?ハハハ!」軍曹は高笑いした。「ありえねえな!お前のせいだ!お前のせいで、俺はあのザムからこんなクソみたいなブリキ缶の警備に左遷されたんだ!ここでてめえを叩きのめして…その首を司令官への土産にしてやる。俺が無能じゃないってことを、見せてやるんだ!」
雄叫びが終わると同時に、軍曹は狂ったようにライトに突進した!
ライトは引き金を引いたが、軍曹は分厚い装甲で覆われた腕を瞬時に上げて防御した。プラズマ弾は弾き飛ばされ、遠距離からの射撃は効果がないとライトは即座に判断した。彼は銃を収め、近接戦闘の構えを取った。
鉄槌のように重い軍曹の拳が繰り出される。ライトは紙一重で身をかわし、装甲服の首の関節部分に手刀を叩き込んだ。しかし、装甲が厚いため、彼はわずかにふらついただけだった。
「その程度か!」軍曹は怒鳴り、その強靭な力と体重で猛攻を仕掛けてきた。ライトは後退を余儀なくされ、速さと機敏さで重い攻撃を避け続けた。しかし、広くないホールでは、彼の有利は徐々に失われていった。
ドカッ!
ついに、軍曹の拳の一つがライトの防御を突き破り、脇腹に強烈な一撃を食らわせた。彼は壁際のコントロールパネルに叩きつけられ、激痛が全身を走った。
「捕まえたぜ!」軍曹は勝利を確信した笑みを浮かべた。彼は巨体でライトをパネルに押し付け、容赦なく拳の雨を降らせた。ライトは腕を上げて防ぐのが精一杯だった。金属同士がぶつかる音が響き渡り、一撃ごとに彼の体内のシステムが揺さぶられた。
絶体絶命のその時、ライトの視界にパネルの横にある赤いエネルギーパイプが映った。彼は痛みをこらえ、ありったけの力で軍曹の膝の関節を蹴り上げ、一瞬だけ体勢を崩させた。その隙に、彼はピストルを抜き、エネルギーパイプを撃った!
バン!
ドォン!
エネルギーパイプが爆発し、火花が周囲に飛び散った。軍曹は驚きに叫び、爆風に吹き飛ばされて後退した。ライトはその機会を逃さず、ショート寸前のコントロールパネルから飛び退いた。
今度は…彼の反撃の番だった。
ライトは敵に体勢を立て直す隙を与えなかった。彼は嵐の影のように高速で突進した。彼の拳と足はもはや分厚い装甲を狙わず、関節、装甲の隙間、そしてヘルメットを、連続的かつ正確に打ち続けた。全ての攻撃は計算され尽くしていた。
爆発でまだ朦朧としている軍曹は、でたらめに防御することしかできなかった。彼は動き回るライトを捕まえようとしたが、空を切るばかりだった。
「くそっ!この卑怯者め!逃げ回ってないで正々堂々戦え!」
「これが戦いだ…馬鹿力を使うことじゃない」ライトは冷たく言い返した。
そして、好機が訪れた。軍曹が拳を振り回して空振りし、首元に隙ができた瞬間、ライトは躊躇しなかった。彼は軍曹の喉に肘を叩き込んでむせさせ、背後から腕を回して首をロックし、隠し持っていたコンバットナイフを取り出した。
ザクッ!
振動するバイブロブレードの刃が、ヘルメットと首の装甲の隙間を正確に貫いた。
軍曹の巨体が痙攣し、その目は信じられないというように見開かれた。やがて、その全身から力が抜け、息絶えて床に崩れ落ちた。
ライトはかつての敵の亡骸の上で、荒い息をついていた。彼は虚ろな目で自分のしたことを見下ろした。喜びも、満足感もない。ただ、魂を蝕むような疲労感だけがあった。
サイレンはまだ周囲で鳴り響いている。過去に浸っている時間はない。ライトはその亡骸に背を向け、彼の目標…キメラ計画のメインデータセンターへと走り続けた。
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ライトはクルーズ軍曹…惑星ザムからの因縁の敵の亡骸の上で息を切らしていた。彼は今や息絶えたが、ステーション中に鳴り響くサイレンは、一秒たりとも休んでいる暇はないという警告だった。失われた一秒一秒が、連邦の増援部隊が到着する機会を与えていることを、彼はよく理解していた。
「先に進まなければ…設計図を盗み出さなければ」
彼は疲れ始めた体に鞭を打ち、赤い非常灯に照らされた通路を走り続けた。パニック状態で逃げ惑う科学者たちの混乱の中、彼は手首のスキャナーでステーションの設計図を再確認した。メインデータセンターは「サンプル管理・隔離ウィング」の隣にある。そこを通過する以外の選択肢はなかった。
隔離ウィングの自動ドアが開くと、中の雰囲気は外とは全く異なっていた。ここは遥かに静かで、サイレンの音はまるで水中にいるかのようにくぐもって聞こえた。空気は冷え切り、微かにオゾンの匂いがした。
通路はまっすぐに伸び、両脇には分厚い防弾ガラスの壁が並んでいた。その向こうには空の研究室が見える…彼が最後の二つの部屋にたどり着くまで。
ライトの心臓はほとんど止まりそうになった。
ガラスの向こうにいたのは、実験器具や異星の生物ではなかった。それは「奴ら」だった。
二体の機械の獣が高圧電力の部屋に閉じ込められていた。その姿は、鈍く黒光りする金属と、ドクドクと脈打つ生体組織の恐ろしい融合体だった。一体は金属の鉤爪で狂ったようにガラス壁を引っ掻いていた。その単一の赤い光学センサーの目は、憎しみに満ちて彼を睨みつけていた。もう一体は彫像のように静かに立っていたが…それもまた、彼を「観察」していた。
「機械種族…信じられない…」ライトは小さく呟いた。「奴らは侵略してきただけじゃない…連邦は奴らを捕獲していたのか」
これは最高機密だった。発見ではなく、生け捕り!特殊部隊兵としての思考が頭をよぎった。「予測不能な変数は排除しろ」
彼は一瞬も躊躇わなかった。ライトはライフルを構え、二つの隔離室のエネルギー制御パネルに狙いを定め、正確に撃ち抜いた。
バン!バン!
エネルギーシステムは停止し、奴らを閉じ込めていたレーザー光線が消えた。しかし、解放される代わりに、二体の獣の体は激しく痙攣し、内部から爆発した。隔離システムが停止した場合の自爆装置だった。
焼け焦げた金属と生体組織の破片が床に散らばる中、彼のヘッドフォンから声が聞こえた。
『連邦のペットに出くわしたようだな、ライト』
それはジャック司令官の声だった。まるで何が起こるか全て知っていたかのように、冷徹で落ち着き払っていた。
「このことを知っていたのか?」ライトは問い返した。彼の驚きは混乱に変わっていた。
『信じろ…私は連邦の実験についてはずっと前から知っていた。奴らは10年近く前にセクターの辺境で機械種族を発見したが、情報を隠蔽し、密かにサンプルを持ち帰って研究していたのだ』
ジャックは一瞬黙り、さらに危険な声色で続けた。
『このセクターで最強の艦隊が、なぜ侵略に対してこれほど反応が遅いのか、疑問に思ったことはないか?なぜ惑星ザムがあんなにも簡単に飲み込まれるのを許したのか…まるで、奴らが意図的に事件が起こるのを許していたかのようだ。おそらく、広範囲にわたる混乱と恐怖は、奴らにとって有益だったのだろう』
その陰謀論は、ライトの血を凍りつかせた。
『だがその話は後だ。お前の主な任務はまだ終わっていない。キメラ計画の設計図を手に入れろ。機械種族の件は二の次だ。いいな?』
ジャックからの通信は途絶え、ライトは静寂と恐ろしい真実の中に一人取り残された。
彼の頭の中で、全ての物語が繋がり始めた。惑星ザムでDECビルを破壊した時の、将軍の怒声…「貴様は連邦の資産を破壊した!」
「連邦の資産…」ライトは心の中で繰り返した。「まさか、あのDECビルは…単なる司令部ではなく、ここ(ここ)と同じような研究室だったのか!俺が破壊した『資産』とは、建物ではなく…中に閉じ込められていた『奴ら』だったのか!」
その考えに、彼は床に膝をついた。これはもはや三つ巴の戦争ではない。彼が想像していたよりも遥かに複雑で、歪んだ政治ゲームだった。連邦は機械種族と戦っているのではない…彼らは奴らを…「制御」しようとしているのかもしれない。
「キメラ計画」を盗むという任務は、もはや単なる兵器の設計図を盗むことではなかった。それは、連邦の最も暗い秘密の仮面を剥ぎ取ることだったのだ!
疲労感は完全に消え去り、それまで以上に冷たく、そして強固な決意に取って代わられた。彼は連邦が一体何を企んでいるのかを知らなければならない…そして、それを止めなければならない!
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ライトが邪魔な警備兵を排除し、連邦の暗い秘密を知った後も、彼は一瞬たりとも足を止めなかった。ステーション中に鳴り響くサイレンは、彼の時間が限られていることの証明だった。これ以上長引かせれば、ステーションに駐留する連邦の増援部隊が必ずここに到着する。
「先に進まなければ…設計図を手に入れなければ」
彼は今や墓場のように静まり返ったサンプル隔離ウィングを出て、まだ赤い非常灯が照らし続けるメイン通路に戻った。しかし、何かが変わっていた。
雰囲気が変わっていたのだ。
通路の照明が、切れかけの電球のように点滅し始め、不気味に踊る影を作り出していた。鳴り続けていたサイレンは途切れ途切れになり、神経を逆撫でするような甲高い音に変わっていた。そして最悪なのは、彼が聞いた新たな「音」だった。人間のものではない悲鳴、床を金属が引っ掻く音、そしてドアが開いたままの研究室から聞こえる低い呻き声。
前方の通路は、壁や天井一面に血が飛び散っていた。科学者や警備兵の死体が散乱していたが、その状態は銃によるものとは到底思えないほどおぞましかった。多くの死体は、まるで野生動物に引き裂かれたかのようだった。
今の雰囲気は、伝説的なホラーゲーム『ハーフライフ』と何ら変わりなかった。
突如、横たわっていた科学者の一人の死体が、ゆっくりと、ぎこちなく立ち上がった。彼の目は見開かれ、虚ろだった。首の後ろには、蜘蛛に似た小型の機械寄生体が張り付いていた。それがゆっくりと赤い光を点滅させると、その体は狂ったようにライトに襲いかかってきた!
バン!
ライトは反射的に応戦した。弾丸はその体の頭の中心を撃ち抜き、彼は動かなくなった。ライトはその光景に愕然と見つめた。捕獲して実験するだけではない、奴らは脱走し、さらには人間を操ることまでできるのだ。
彼の任務は今や、潜入ではなくなっていた。それは完全な「サバイバルゲーム」へと変貌していた。彼は生き残った連邦兵、脱走した機械、そしてかつて人間だったゾンビたちの両方から生き延びなければならなかった。
彼がさらに進もうとした時、彼の耳元の通信に雑音が混じった。それはチームがお互いに状況を報告し合う声だった。
『…こちらライラ。予備電源システムにアクセス完了。でも、通気ダクトの中に「何か」がいっぱいいる…ギデオン、準備はいい?』
『(爆発音)ギデオンだ!「歓迎の品」は作動したぜ!ライトへの道は開けておいた!パーティーを楽しめよ、相棒!(重機関銃の連続音)』
『…こちらサイラス。連邦の守備隊は崩壊しつつある。奴らは「奴ら」と混乱の中で戦っている。目標が見えたぞ、ライト。メインデータ室は目の前だ。だが入り口は…めちゃくちゃだ。気をつけろ』
チームメイトの声から、他の者たちもまた困難な戦いを強いられていることがわかった。しかし、彼らの任務はまだ続いていた。
ライトは巨大な中央研究ホールにたどり着いた。そして彼が目にしたのは、まさに混沌そのものだった。約十人の連邦兵の最後のグループが、倒れた実験台の後ろに防衛線を築いていた。彼らは、四方八方から押し寄せる「機械犬」の群れとゾンビ化した科学者たちに対して、絶望的な戦いを繰り広げていた。
ライトが姿を現すと、連邦兵の一人がすぐに銃口を彼に向けた。「敵だ!撃て!」
三つの勢力からのプラズマ弾が入り乱れて飛び交った!
ライトは大きな柱の陰に転がり込んだ。彼は連邦兵と戦うためにここに来たわけではなかったが、彼らが先に撃ってきた以上、選択の余地はなかった。
彼は混乱を利用した。彼は連邦兵のグループの近くにあった液体窒素のタンクを撃った。
ドォン!
タンクが爆発し、視界を遮る極低温の蒸気と、一部の兵士の体勢を崩した。ライトはその隙を突いて飛び出し、残りの兵士を数人仕留め、向き直って飛びかかってくる機械犬を処理した。
彼は第7部隊の直感で戦った。周囲の全てを利用し、敵の敵を囮として使い、生き残るための隙を見つけるために最も危険な場所を移動した。
メインライフルの弾がほとんど尽きるまで激しく戦った後、その部屋で立っている最後の一人となっていた。兵士と機械の死体が山積みになる中で。
彼は荒い息をついていた。古い傷が開き、痛みが走り始めた。しかし、彼の目標はもう目と鼻の先だった。
彼の目の前には、チタン合金製の円形の防爆扉があった。そこにははっきりとこう刻まれていた。
**「キメラ計画 - メインデータセンター」**
ライトはドアの横の壁にもたれかかり、最後の息を整えようとした。彼が通り抜けてきた地獄は終わったのかもしれない。しかし、次の地獄の扉が…彼の目の前で待っていた。
---
ライトは「キメラ計画」メインデータセンターの分厚い鉄の扉の前に立っていた。戦闘で息はまだ上がっていたが、休んでいる時間はもうなかった。
『ライト!こちらライラ!まずいわ!連邦の偵察艦隊がシステム内にワープしてきた!ステーションに強襲艇を送り込んでいる!もう時間がない!』ライラの声が焦ってコムリンクに割り込んできた。『データを取ったらすぐに脱出して!私たちのことは心配しないで!行って!』
「了解」ライトは短く答えた。彼は手持ちの最後の徹甲爆弾を扉に設置し、できるだけ遠くの遮蔽物まで走った。
ドォォォン!!!
巨大な衝撃波が彼の体を壁に叩きつけた。1フィートもの厚さがある鋼鉄の扉が歪み、引き裂かれ、内部の暗闇を露わにした。ライトは急いで体を起こし、中へ足を踏み入れた。
目にした光景に、彼の血は凍りついた。
ここは彼が今まで見た中で最も先進的なデータセンターだった。しかし今、それはただの屠殺場と化していた。白衣を着た科学者たちの死体が血の海に沈んでいた。壁やコントロールパネルは、金属の鉤爪による深い引っ掻き傷で覆われていた。戦闘の痕跡も、銃弾の痕もない。ただ、一方的な虐殺の痕跡だけがあった。
そして最も不気味だったのは、部屋の一番奥の壁に開けられた巨大な円形の穴だった。まるで、隠された秘密の部屋から何かが解き放たれたかのようだった。
第7部隊としての直感が、彼の頭の中で叫んでいた。「異常だ…異常すぎる」と彼は思った。「ステーション内で最も安全なはずの部屋…なのに、自動防衛システムが一つも作動していない。あの穴は…外部からの侵入ではなく、内部からの『解放』だ。あの連邦のクソ野郎どもは、失敗したんじゃない。奴らは意図的に化け物を解き放って、自分たちの人間を口封じのために殺したんだ!一体何を隠しているんだ!」
彼の視線は、まだ固く閉ざされたままの耐火金庫に留まった。それはこの部屋で唯一、損傷を受けていないものだった。その上には、キメラ計画の三つ首の獣のシンボルが刻まれていた。