第二章 48
「前進!」
作戦チームは、迷路のような渓谷を、進み始めた。しかし、彼らが、それほど、遠くまで、進む前に。「キャプテン!」
前方を偵察していたサイラスが、コムリンクで報告した。「敵を探知!前方、防御拠点です!ただの哨戒部隊ではない、重砲を備えた、拠点です!」
ライトが、双眼鏡を覗くと、そこには、多数の、連邦の上級兵士たちが、厳重に、防御を固めている光景が、見えた。奴らは、「生き残った」のではない。奴らは、「意図的に」、ここで、待っていたのだ!
「奴らは、俺たちが、ここへ来ることを、知っていたのか!」ライトは、悪態をついた。「どうやって、計画が、漏れた!?」
彼が答えを見つける前に、最初の一発のプラズマ弾が、彼らに向かって放たれた!惑星インワン解放のための戦いは、予想よりも、早く、始まった!
---
「釘付けにされたぞ、キャプテン!」レックス中尉の声が、爆発音の中で、響いた!「奴らの砲台は、あまりに有利な位置にいる!正面からは、突入できん!」
「幻影」チームと、「ウォー・ハウンド」は、岩陰に、身を隠すことを、余儀なくされた。最初の強襲は、失敗したかに見えた。しかし、全員が、鋼鉄の壁に、直面している、その間に、ライトは、その中に、「隙間」を、見ていた。彼は、HUDを通して、敵の防御陣形を、分析していた。
(防御フォーメーション『シグマ7』。渓谷での防御のための、基本戦術。特殊部隊訓練キャンプの初日に、教わるやつだ)ライトは、心の中で、冷たい笑みを、浮かべた。(そして、その、最大の弱点は…)
「全員!俺の命令を聞け!」ライトの声は、変わっていた。冷徹で、鋭利で、そして、絶対的な自信に、満ちていた。「これは、砲撃戦ではない。『外科手術』だ」
「サイラス!」**<「命令を、キャプテン」>**「座標3-5-デルタの崖が見えるか?奴らの、指揮部隊が、そこを、遮蔽物にしている。奴らの、頭『上』の崖を、撃て。岩雪崩を、起こすんだ!奴らに、当たるかどうかは、気にするな。ただ、奴らの、通信線を、断ち切れば、いい!」
「ギデオン、レックス!サイラスが撃ったら、即座に、バンカー・アルファと、ガンマに、集中砲火だ!中央の、バンカー・ブラボーは、無視しろ!」
**<「ライラ!俺の合図で、バンカー・ブラボーの砲台を、ハッキングしろ!同士討ちを、させるんだ。3秒だけ、時間を、くれ!」>**
「そして、マキ、お前は、俺と来い。砲台が、混乱した、その瞬間に、ブラボーの、隙間を、突破する!」
複雑な計画が、10秒にも満たない時間で、指示された!そして、それは、始まった!
ヒュッ…ドォン!サイラスの、ライフルの弾丸が、敵の指揮部隊の、頭上の崖に、直撃した!岩雪崩が、通信を、断絶させ、混沌を、生み出した!同時に、ギデオンとレックスが、両翼へと、集中砲火を、浴びせた!
**<「今よ、ライラ!」>**
**<「了解!」>**
中央の、バンカー・ブラボーの重砲塔が、互いに、砲口を向け合い、そして、狂ったように、撃ち合い始めた!
「行け!!!」
ライトが、叫んだ!彼とマキは、その3秒間の混沌の中を、駆け抜け、かつては、最も厳重だった、防御の隙間を、突破し、敵の、背後へと、回り込むことに、成功した!鉄壁に見えた防衛線は、わずか1分足らずで、内部から、崩壊した。
「なんてこった、どうやったんだ、キャプテン?」ギデオンが、驚嘆して、尋ねた。
「奴らが、俺を、訓練したんだ」ライトは、平坦に、答えた。
「時間を、無駄にした。これより、部隊を、二手に分ける!ギデオン、レックス、君たちは、東の、副通信塔を、破壊し、陽動を、続けろ!サイラス、ライラ、高所から、我々全員を、支援しろ!マキ、お前は、俺と来い。我々は、奴らの心臓部、『サイクロプス・プライム』を、直接叩く!」
---
作戦は、計画通りに、始まった!**<「こちら、ギデオン!パーティーの、始まりだぜ!奴らを、東へ、おびき寄せている!」>**
**<「ライラより、報告。この地域の、敵の通信システムは、妨害済みです。ですが、気をつけて、キャプテン。隠蔽された、複数の、高速エネルギー反応を、探知。貴方の方へ、向かっています!」>**
「了解」
ライトとマキは、廃墟と化した旧首都の、瓦礫の中を、静かに、進んでいた。そして、彼らは、旧居住区へと、たどり着いた。ライトは、足を止めた。彼の目の前には、黒く焼け焦げた、孤児院の、残骸が、あった。
その瞬間、彼の頭の中に、炎、悲鳴、そして、連れ去られていく、「リーナ」の姿が、鮮烈に、蘇った。彼は、戦場の真ん中で、凍りついた。
「キャプテン」マキが、警告を発した、その時。「敵だ!」
彼女の声が終わると同時に、四方から、ステルス装甲をまとった兵士の影が現れた!連邦の「暗殺部隊」だ!マキは、まだ過去に囚われているライトを、遮蔽物の陰へと突き飛ばした!「しっかりしろ!」
マキは、一人で四人の暗殺者と対峙した!彼女は「ゴースト」としての本能を完全に解放した!彼女の二色の瞳は、熱源と弾道を同時に計算し、人間を超越したレベルで戦場を処理していた!彼女は死の嵐と化し、二人を瞬時に仕留めたが、その腕に深い傷を負った!残りの二人が、その隙を突いて、同時に彼女に襲いかかった!
その光景が、ライトを現実へと引き戻した!殺されようとしているマキの姿が、リーナの姿と、見捨てた仲間たちの姿と、重なった。(もう二度と、同じ過ちは繰り返さない!)
彼の全ての痛みが、冷徹な決意へと変わった!パン!パン!彼のライフルから放たれた二発の弾丸が、マキに迫っていた暗殺者たちの背中を、正確に撃ち抜いた!
戦闘は、終わった。マキは、荒い息をつくライトを、問い詰めるような眼差しで、見つめていた。ライトは、彼女に、何も言わず、ただ、孤児院の残骸を見つめた。「すまなかった」彼は、小さく言った。
「貴様は、何も、悪くない」
「お前に、謝っているのではない。『彼ら』にだ」
彼は、振り返った。その眼差しは、再び、「キャプテン」のものに戻っていた。過去から、解き放がれた、キャプテンの。「時間を、稼いでくれて、感謝する」
マキは、頷いた。「行こう。この、全てを、終わらせに」
--- **「サイクロプス・プライム」司令部にて** ---
チームは再集結し、連邦の最後の砦、地下司令部の入り口の前に立っていた。「これより先、潜入はしない」ライトが宣言した。「我々が持つ、全ての力で、正面から突入する!ギデオン!レックス!道を切り開け!」
「任せろ!!!」
壮絶な爆発音と共に、最後の強襲が始まった!彼らは、上級兵士、自動砲台、そしてゴライアス戦闘騎が守る地獄の通路を、突き進んだ!ライラが電子戦で道を切り開き、サイラスが遠距離から死を運び、ギデオンとレックスが鋼鉄の嵐となり、そして、ライトとマキが、敵の心臓部を貫く刃となった!
ついに、彼らは最後の広間、「エレクター=カイ」制御室へとたどり着いた。そして、その中央で、彼らを待っていたのは、「スペクター」だった。
「ようやくたどり着いたか、裏切り者」
「レックス、ギデオン!ドアを固めろ!サイラス!エネルギーパイプを狙え!ライラ!『無効化パルス』を準備しろ!」ライトは叫んだ。彼はマキに向き直った。「奴は、我々のものだ」
「計画を覚えているな!90秒、耐え抜け!」
二人は、スペクターに同時に襲いかかった!それは、勝利のためではなく、「時間を稼ぐ」ための戦いだった!
80秒が経過し、全員が限界に達していた!スペクターが、マキに狙いを定めた!ライトは、その動きを読み切り、その攻撃を自らの体で受け止め、スペクターの腕を、一瞬だけ拘束した!
「今だァァァ!!!」
その瞬間、全てが同時に起こった!スペクターの予測システムがクラッシュし、マキの刃がその装甲の弱点を貫き、サイラスの弾丸がエネルギーパイプを破壊し、ライラのアップロードが完了し、そして、ギデオンのロケットが、ショートしたエレクター=カイに直撃した!
音のない、白い閃光が、広間の全てを飲み込んだ。光が消えた時、そこには、黒焦げの金属の残骸と、床に倒れるスペクターの姿だけがあった。任務は、成功した。
「ヴィンディケーター」の艦橋で、歓声が上がった。「司令官!機械の群れが、機能を停止しました!虫のように、空から落ちてきます!」
その頃、エヴァ司令が、ジャックの元へ駆け寄った。「司令官、宇宙ステーション『オアシス』から、緊急の極秘通信が。『シルクワーム』からです。カイアス元老院議員が、インワンでの我々の勝利を知り…『交渉』を望んでいる、と」
ジャックは、解放されたインワンの映像を見つめ、そして、冷たい勝者の笑みを浮かべた。戦場での戦争は終わったのかもしれない。だが、影の戦争は、まだ始まったばかりだった。




