表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GalacXER 銀河の執行者  作者: Boom
第五章 [故郷なきファイトール]
48/59

第五章 46 "コロセフの炎"

都市コロセフの、血みどろの戦場の真っただ中で、ゼル=ロスのホログラム映像が、煙に巻かれた空に浮かび上がった。彼は、彼のやり方で、「鼓舞」していた。


「ファイトールの同胞諸君!顔を上げよ!」彼の声は、力強いが、現実からは、かけ離れていた。「シンスロインの攻撃は、試練だ!奴らを、食い止めよ!死ぬまで、戦え!この都を守るための自己犠牲こそが、最高の栄誉なのだ!」


しかし、地上では、その「名誉」は、粉砕されつつあった。都市の防衛部隊は、壊滅寸前だった。


そして、その時。ズーロの、小規模な艦隊が、到着した!彼の降下艇は、弾丸の雨を突き抜け、後方へと着陸した。ズーロは、彼に忠実な戦士たちと共に、一人、降り立った。


彼は、雪崩れ込んでくるシンスロインの群れではなく、その軍勢の中心にそびえ立つ、「信号塔」を、見つめていた。ズーロは、知っていたのだ。ただ、信号塔を破壊するだけで、奴らの手足を、断ち切ることができると!


彼は、激しく戦う、都市の防衛司令官の元へと、直行した!「司令官!目標を変更しろ!我々は、あの信号塔を、破壊しなければならない!」


「貴様は、誰だ!?」司令官は、怒鳴り返した!「私は、高等評議会から、奴らを『食い止める』よう、命じられている!無意味な建造物を、攻撃するためではない!」


「あれは、無意味な建造物ではない!奴らの、心臓部だ!」ズーロは、言い返した!「あれを破壊できれば、この戦いは、終わる!」


「黙れ!異端者の命令など、聞くものか!」


ズーロは、即座に、悟った。「名誉」に、目をくらまされた人間の、考えを、変えることは、できないと。「ならば、我々が、やるまでだ」


ズーロは、彼のチームに、向き直った!「高速攻撃部隊!左翼で、混沌を、作り出せ!奴らの注意を、引きつけろ!残りは、私に続け!」


二つの戦線が、形成された!一つは、高等評議会に忠実な兵士たちが、絶望的に、「死ぬまで戦う」、戦線。そしてもう一つは、ただ一つの目標、信号塔を目指し、包囲網を、突破しようとする、ズーロの、部隊!


それは、狂気じみた、戦いだった!ズーロは、指揮を執りながら、自らも、戦わなければならなかった!彼は、禁断のサイキックパワーで、戦車の残骸を持ち上げ、部下たちのための、盾とした!そしてついに、彼は、「虚無の槍」を、信号塔の、基部へと、放った!


ドォォォン!!!


信号塔が、爆発した。そして、都市の防衛部隊を、粉砕しようとしていた、全てのシンスロインの群れが、動きを止め、そして、倒れた。


静寂が、戦場を、支配した。防衛司令官と、生き残った兵士たちは、ただ、その光景を、愕然と、見つめていた。彼らは、「名誉」によってではなく、彼らが、先ほど、侮辱したばかりの、「異端者」の、行動によって、生き延びたのだ。


勝利は、彼らのものと、なった。しかし、古き戦士たちの心の中には、疑問と、混乱だけが、残っていた。


---


コロセフでの、「異端者」の勝利は、ズーロの戦術の正しさを、証明した。しかし、それは、激しい戦闘によって、彼らの戦力を、疲弊させもした。


だが、それは、まだ、終わりではなかった。コロセフを、占領した後、彼らは、絶望的な真実に、直面した。彼らの、目の前に、さらに巨大な、シンスロインの、「主基地」が、存在していたのだ!それは、真の、「主巣」。その占領地域は、コロセフ市全体に、匹敵するほどの、大きさだった!


その、不気味な生体金属の構造物は、惑星を蝕む、悪性の腫瘍のように、広がっていた。そして、最も恐るべきは、それを守る、軍隊だった。激情に駆られた、シンスロインの群れが、巣から、姿を現した。強力な「リーパー」、機敏な「機械犬」、そして、最も、予期しなかった、軍勢。「人間のゾンビ」の、大群!しかし、彼らは、ファイトールではない。そのボロボロの制服は、インワン帝国の、兵士のものだった!


「ありえない…」防衛司令官が、震える声で言った。「奴らは、どうやって、ここに!?」


ズーロは、固く、拳を、握りしめた。彼は、即座に、理解した。


「奴らは、ここへ、『来た』のではない。ここで、『創られた』のだ。シンスロインは、先の戦場の、死体を、収穫し、そして、奴らを、軍隊へと、変えたのだ」


今や、目の前の敵は、もはや、ただの、異星からの、化け物の群れではなかった。それは、かつては、同盟者であったかもしれない、「人間」の、亡骸を、含んでいたのだ。魂のない、操り人形へと、変えられた。それは、最も、心を、えぐり、そして、恐ろしい、光景だった。そして、ズーロと、生き残った戦士たちが、直面しなければならない、新たな、試練だった。


---


奴らは、あまりに、速かった!ファイトールの戦士たちが、先の勝利から、体勢を立て直す、間もなく、シンスロインと、人間のゾンビの、新たな波が、彼らの、防衛線へと、雪崩れ込んできた!


「防衛線を、組め!急げ!」ズーロは、吼えたが、遅すぎた!今からでは、間に合わない!彼の部隊は、あまりに、疲弊し、散り散りになっていた。


彼らが、死の津波に、飲み込まれようとしていた、その時。


彼らの頭上の空が、閃光を放った!何十隻もの、戦闘艦が、雲を、突き破って、現れた!それは、輸送船ではない。完全武装した、爆撃機と、強襲艇だった!その船体には、高等評議会の、紋章が、はっきりと、刻まれていた!


「全部隊!『浄化』作戦を、開始せよ!」


空から響く、その命令が終わると、爆撃機は、絨毯爆撃を、開始した!何発もの、サイキック爆弾が、投下された!それは、炎ではなく、爆発の、半径内の、全てを、「消去」する、エネルギーの波を、生み出した!


かつて、鉄壁に思えた、ゾンビと、機械の群れは、今や、空からの、圧倒的な、火力によって、やすやすと、粉砕されていった。


その、激しい、空爆は、シンスロインの、進軍を、一時的に、食い止め、そして、地上部隊に、貴重な、時間を、もたらした。


ズーロは、その破壊の光景を、見つめていた。彼は、生き延びたことに、安堵した。だが、同時に、彼は、苦々しさを、感じていた。彼は、自らの、戦術の、正しさを、証明したばかりだった。しかし、結局、彼らは、生き残るために、彼が、憎むべき、高等評議会の、「力」と、「権力」に、頼らなければならなかったのだ。


---


破壊された、シンスロインの群れの、残骸と、灰の、ただ中で、気まずい、静寂が、戦場を、支配した。ズーロと、彼の戦士たちは、新たに到着した、高等評議会の、部隊と、向き合っていた。たとえ、同じ種族であっても、彼らが、互いに、向ける、眼差しは、不信に、満ちていた。


「貴官らの、爆撃が、我々のための、時間を、稼いでくれた」ズーロが、静寂を、破った。彼は、高等評議会の、艦隊司令官の元へと、歩み寄った。「だが、我々が、防御を、固め続けるのなら、我々は、いずれ、負けるだろう」


「貴様には、もっと良い、計画が、あるとでも、言うのか?『指揮官』殿?」高等評議会の、士官は、嘲笑した。


「ああ」ズーロは、臆することなく、答えた。「私には、ある」


ズーロは、防御壁を、築くことではなく、「攻撃」について、語った!「我々は、奴らの、『信号塔』を、破壊しなければならない!一つ、また、一つと!」彼は、ホログラム地図を、開き、彼らが発見した、全ての、信号塔の、位置を、表示した。「これこそが、奴らの、弱点だ!正面からの、戦闘ではない!」


高等評議会の、司令官は、その計画を、躊躇の目で、見た。しかし、コロセフで、生き延びたばかりの、戦士たちは、皆、ズーロに、同意して、頷いた。彼らは、この戦術が、実際に、効果があることを、その目で、見たのだ!


「よかろう!」高等評議会の、司令官は、やむなく、同意した。「貴様の、計画に、乗ってみよう。だが、もし、それが、失敗すれば…」


「失敗は、しない」ズーロは、言い切った。「我々、全員が、協力すればな」


そして、ファイトールの、最大級の、反撃作戦が、始まった!全ての、部隊が、ズーロと、高等評議会の、部隊が、一つとなった!


高等評議会の、艦隊が、軌道上から、支援砲撃を、行い、シンスロインの群れの、混沌を、作り出し、注意を、引きつけた。


ズーロが、率いる、地上部隊が、「槍の穂先」と、なり、それぞれの、信号塔の、位置へと、突撃した!彼らは、それを、一つ、また、一つと、破壊していった!一つの塔が、爆発するたびに、その地域の、シンスロインの群れは、倒れ、彼らが、さらに、前進するための、道を、開いた。彼らは、もはや、防御しているのではない。自らの、領土を、「奪還」していたのだ!


---


しかし、ズーロは、違和感を、感じていた。(簡単すぎる…)彼は、心の中で、思った。(奴らは、外縁の、防衛線を、あまりに、早く、放棄しすぎている。まるで、我々を、中へと、『招待』しているかのようだ)


彼は、高等評議会の、司令官に、警告しようとした。「司令官!何かが、おかしい!これは、罠かもしれない!」


「罠だと!?」高等評議会の、士官は、嘲笑した。「貴様には、見えんのか!?奴らは、壊滅寸前だ!貴様の、臆病さで、我々の、士気を、下げるな!」


彼らは、目の前の、勝利しか、見ていなかった。「突入しろ!フィニトールのために!」


全部隊が、今や、静まり返った、主巣の、中心部へと、突入した。しかし、ズーロは、目に見えない、危険を、感じていた。この、静寂は、あまりに、不気味すぎた。


コロセフでの、「異端者」の勝利は、ズーロの、戦術の、正しさを、証明した。だが、彼が、瓦礫の、ただ中に、立った時、彼は、奇妙な、孤独感を、感じていた。彼の隣には、エラーが、いなかった。


そして、彼らの目の前に、シンスロインの、真の、「主巣」が、恐るべき、軍勢と、共に、姿を現した。狂乱した、機械の群れと、制御された、人間のゾンビたち。


「我々は、突入するしかない!」ズーロは、生き残った戦士たちに、宣言した。しかし、彼の心の中では、それが、自殺任務で、あることを、知っていた。エラーが、いなければ、全てが、十倍、困難になることを。


戦闘が、勃発した!ズーロは、「剣」と、「盾」の、両方の、役目を、同時に、果たさなければならなかった!彼は、指揮を執り、部下たちのために、サイキックバリアを、展開し、そして、同時に、自らが、最前線で、突撃しなければならなかった!


しかし、真の敵が、姿を現した。「ハイヴ・タイラント」。巨大な、シンスロインユニットが、彼らの、行く手を、塞いだ!


「奴の、動力炉心を、破壊しなければならない!」ズーロは、叫んだ!「全員!私を、援護しろ!」


彼が、突進した、その時、かつて、彼を、侮辱した、高等評議会の、年老いた、上級士官が、一歩、前に出た!「ズーロは、正しかった。無意味な死は、名誉ではない!」彼は、叫んだ!「だが、希望への、道を、開くための、自己犠牲こそが、最高の、名誉だ!全員!私に続け!我々が、我々の『指揮官』のために、時間を、稼ぐのだ!」


今や、「目覚めた」、高等評議会に、忠実だった、戦士たちが、一斉に、ハイヴ・タイラントへと、突進した!彼らは、自らの、体と、力を、「人間の盾」とすることを、厭わなかった!


「行け!ズーロ!これを、終わらせろ!!!」


ズーロは、粉々になった、心で、その光景を、見た。彼は、固く、拳を握りしめ、そして、踵を返し、最後の、目標、巣の、主反応炉へと、走った!


彼は、たどり着き、そして、持てる、全ての力を、解放した。音のない、白い閃光。巣の、全てが、破壊された。ハイヴ・タイラントも、そして、勇敢なる、戦士たちも、ろもに。


ズーロは、瓦礫の、ただ中に、一人、立っていた。彼は、ただ、戦友を、失っただけではない。彼は、真の、「名誉」が、何であるかを、見たのだ。それは、自己犠牲。今や、彼は、ただ、復讐心を、背負うだけではない。去っていった、全ての者たちの、「意志」を、その肩に、背負っていた。


---


コロセフでの、ズーロの勝利は、多くの、犠牲と、共に、もたらされた。彼の戦士たちは、疲弊し、傷ついていた。そして、さらに悪いことに、シンスロインは、弱体化する、兆しを、全く、見せなかった。


その時、最悪の、知らせが、届いた。「ズーロ指揮官!砦『エル=シレス』より、緊急警報!我々は、攻撃を、受けています!」


「砦と、都市アンフリンが、エラーがいる、あの場所が、膨大な数の、機械の群れに、襲われています!」


「全員!準備しろ!」ズーロが、命令を、下そうとした、その時。高等評議会の、ゼル=ロスの、声が、全ての、通信チャンネルに、割り込んできた!


「エル=シレスの、勇敢なる、戦士たちへ!」その声は、力強いが、冷たかった。「貴様らの、任務は、その場を、死守し、奴らを、食い止めることだ!戦士の、名誉のために!」


「あの、クソ爺が…」ズーロは、吐き捨てた。「奴は、彼らを、死なせる、つもりだ!」


彼は、もはや、躊躇しなかった。「あの、綺麗事を、聞くな!それは、名誉ではない!無駄死にだ!我々の仲間が、死にかけている!エラーが、死にかけている!そして、私は、それを、決して、許さない!」


「全員!準備しろ!我々は、今すぐ、出撃する!彼らを、助けに行くのだ!」


今や、ズーロの行動は、もはや、ただの、命令違反ではなかった。それは、腐敗した、古い体制、高等評議会への、完全な、「宣戦布告」だった。彼の、親友の、命を、賭けて。


---


しかし、偵察部隊からの、ホログラム映像が、ズーロの、心の炎を、消し去った。砦「エル=シレス」は、シンスロインの、「黒い海」に、完全に、包囲されていた。その数は、コロセフの、何十倍も、多かった。今から、助けに、向かっても、間に合わない。


彼は、「敗北」したのだ。戦争の、現実に。


「全員!」ズーロは、再び、命令した。しかし、今度、その声は、痛みに、満ちていた。「計画変更!我々は、コロセフを、放棄する!全ての船を、用意しろ!我々は、撤退する!」


彼は、エラーの、運命が、どうなるか、知らなかった。彼は、ただ、親友が、生き延びることを、祈るしか、なかった。


その時、高等評議会の、巨大な、避難船が、都市の、中心部に、着陸した。「ズーロ指揮官へ!高等評議会は、後退を、命じる!全部隊、今すぐ、乗船せよ!我々は、この惑星を、放棄する!」


ズーロは、生き残った、全ての戦士たちと、共に、その避難船へと、乗り込んだ。彼が、奪還したばかりの、都市を、後に、残して。


軌道上へと、上昇する船の中から、ズーロは、眼下の、惑星を、見下ろした。彼は、戦いの、光を、見た。それは、砦「エル=シレス」だけでなく、他の、多くの、都市でも、同時に、起こっていた。ファイトールは、今や、追い詰められていたのかもしれない。彼らは、故郷を、失い、そして今、最後の、避難所をも、失おうとしていた。


---


高等評議会の、指揮艦で、ズーロと、生存者たちは、ただ、自分たちの、最後の拠点が、シンスロインに、喰われていくのを、ホログラムで、見つめていた。


その時、ゼル=ロスの、布告が、艦隊中に、響き渡った。彼は、死んでいった、戦士たちの、「名誉ある、自己犠牲」を、偽りの、悲しみの声で、称えた。


そして、彼は、即座に、話題を、変えた。「だが、今、それよりも、遥かに、巨大な、脅威が、存在する!内なる、脅威!ゼニソールという、裏切り者だ!」


スクリーン上の、映像は、驚くべき、情報へと、切り替わった!「奴は、今、ザン・セクターの、惑星ビットナリーにいる!人間の、生存者や、ササソールの、反乱分子と、手を、組んでいる!」


ゼル=ロスは、ホログラムを通して、ズーロを、まっすぐに、見つめた。「ズーロ指揮官!貴様の、勇敢さと、能力を、見込んで、貴様に、新たな、任務を、与える!」


「貴様に、命じる!特殊部隊を、率いて、ゼニソールを、探し出し、そして、奴を、処刑せよ!我々の、種族の、純粋さと、名誉を、守るために!」


その命令が終わると、ズーロは、静かに、座っていた。彼は、名誉も、忠誠も、感じなかった。彼が、感じていたのは、ただ、虚無感と、嫌悪感だけだった。


彼は、解放のためではなく、腐敗した、体制の、「暗殺者」として、送り出されようとしていた。そして、彼には、拒否するという、選択肢は、なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ