第二章 35
静寂が、かつて激戦だった戦場を、支配していた。ライトのチームは、今や、いかなる動きも見せない、機械たちの、墓場のただ中に、立っていた。
「信じられん…」ギデオンは、一体のリーパーの残骸を、蹴った。「あの、クソみたいな塔を、破壊しただけで、全てが、終わったというのか」
「それは、中央集権型の、司令ネットワークだからだ」ライラが、データを分析した後、コムリンクで、報告した。「あの塔は、この地域の、司令『ノード』だった。我々が、ノードを破壊したことで、それに接続されていた、全ての下位ユニットが、同時に、機能を停止したのだ」
チームの全員が、顔を見合わせた。そして、彼らの心の中に、新たな真実が、閃光のように、現れた。
「奴らは、我々が、思っていたほど、恐ろしくはないのかもしれない」ライラが、小さく、言った。
「ああ」ライトが、付け加えた。彼は、機械たちの残骸の向こうにある、遠くの、連邦の拠点を見つめた。「奴らの数は、膨大だが、致命的な、弱点も、ある。我々は、もはや、何百万もの、奴らと、正面から、戦う必要はない。ただ、奴らの、司令部を、破壊すれば、いいのだ」
皆の顔に、かすかな笑みが、浮かんだ。彼らは、鉄壁に見えた、敵を、打ち破る、道を、見つけたのだ。しかし、その時、ライトが、次に放った言葉が、その喜びを、完全に、打ち砕いた。
「だが、それよりも、恐ろしいのは、連邦だ」
彼は、敵の拠点を、指差した。「なぜなら、たとえ、奴らの、司令部が、破壊されようとも、奴らは、この、機械たちのように、倒れはしないからだ」
彼の言葉は、過酷な、真実だった。連邦の兵士は、一人一人が、自らの、意志を持ち、規律を持ち、そして、忠誠心を持っている。彼らは、命令が、なくとも、戦い続けるだろう。彼らこそが、真の、敵なのだ。
その時、**<「キャプテン!大変です!」>** ライラの、切迫した声が、割り込んできた!**<「連邦の、輸送船を、多数、探知!『目標ブラボー』へ、向かっています!奴らは、我々が、どこへ行くかを、知っています!奴らは、防衛を、固めに向かっているのです!」>**
「クソが!」レックスが、吐き捨てた。「思ったより、奴らの、適応は、速いな!」
ライトは、彼の、次の目標を、見た。第二の、エネルギー供給ステーション。そこには、今や、完全武装した、連邦兵が、彼らを、待ち構えているだろう。
「少なくとも…」ギデオンが、皆を、鼓舞するために、言った。「…今度の、敵は、一群だけだぜ!」
「彼の、言う通りだ」ライトは、言った。「任務は、続く。我々は、機械たちの、弱点を、見つけた。今度は、我々が、連邦に、思い出させてやる番だ。人間が、どれほど、恐ろしいかをな」
彼は、彼のチームに、向き直った。全員の、眼差しが、再び、決意に、満ちていた。
「全員、出発だ!」
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眼下の、銃声と、金属の、悲鳴が、徐々に、静まっていった。ライトのチームは、連邦の、哨戒部隊と、機械犬の群れとの、戦いが、終わるのを、尾根の、隠れ家から、見守っていた。両陣営に、生存者は、いなかった。
「クリアです」サイラスが、報告した。「奴らの、生き残りは、このエリアから、移動しています」
「よし」ライトは、言った。「降下する。だが、警戒は、怠るな」
彼らは、静まったばかりの、戦場へと、降りていった。
「キャプテン、少し、お時間を」ライラが、言った。彼女は、一体の、機械犬の、残骸へと、向かい、その回路基板から、「プロセッシング・コア」を、取り出した。
「奴らの、ネットワーク・アーキテクチャは、私が、これまで、見た、何とも、似ていません。このデータは、非常に、有用かもしれません」
「必要なものだけを、取れ」ライトは、命じた。「我々は、急がなければならん」
チームは、再び、出発した。彼らの、次の目標、エネルギー供給ステーション「ブラボー」を、目指して。
数時間の、過酷な、吹雪の中の、行軍の、後、彼らは、ついに、目標を、視認できる、地点へと、到着した。そして、その光景に、誰もが、息を、呑んだ。
ステーション「ブラボー」は、ただの、エネルギー供給ステーションではなかった。それは、氷の山に、深く、掘り込まれた、「要塞」だった!高く、そびえ立つ、壁、完全に、稼働する、自動砲台、そして、厳重に、巡回する、連邦の、上級警備兵。奴らは、革命軍が、来ることを、知っていたのだ。
「オーケー、こいつは、あの、狂った巣よりも、厄介だな」ギデオンが、呟いた。
「我々の、任務は、変わらない」ライトは、言った。彼の目は、その要塞の、弱点を、スキャンしていた。「我々は、あの、エネルギーシールドを、停止させなければならない。我々の、艦隊の、道を、開くために。そして、王宮に、囚われている、重要人物たちを、救出するために」
彼は、彼のチームの、顔を、見た。全員が、決意に、満ちていた。「ライラ、砲台ネットワークの、脆弱性を、探せ。サイラス、奴らの、司令部の、位置が、必要だ。ギデオン、レックス、正面からの、混沌の、準備を。マキ、お前は、私と、来い。我々は、上から、突入する」
ライトは、深く、息を、吸った。「さて、始めるか」
--- **要塞「ブラボー」にて、惑星マリア** ---
「作戦開始!」
ライトの命令と、同時に、新たな、小規模な戦争が、勃発した!ギデオンと、レックス中尉が、傭兵部隊を、率いて、要塞の、正面ゲートを、激しく、攻撃した!爆発音と、重機関銃の轟音が、氷の谷に、響き渡った。完璧な、陽動作戦だった!
連邦の兵士、全員が、正面の、戦闘に、注意を、向けている、その間に、ライトと、マキは、彼らの、最高レベルの、潜入技術を、駆使していた。彼らは、サイラスの、遠距離からの、援護射撃を、受けながら、亡霊のように、険しい、氷の崖を、登っていった。
二人は、屋上からの、要塞への、潜入に、成功し、そして、内部から、外部への、掃討を、開始した。
残された、エネルギー供給ステーションを、破壊するための、戦いは、激しく、そして、長く、続いた。チーム「幻影の影」と、「ウォー・ハウンド」は、完璧に、連携した。彼らは、誰にも、止められない、破壊の嵐と、なった。ステーション「ブラボー」は、破壊され、ステーション「チャーリー」は、爆破され、そして、最後の、ステーション「デルタ」もまた、サイラスの、ライフルの、たった一発の、正確な、狙撃によって、破壊された。
そして、その瞬間、惑星マリアの、空に、変化が、起こった。惑星全体を、覆っていた、巨大な、エネルギーシールドが、激しく、明滅し、そして、一瞬にして、消滅したのだ!
今や、惑星マリアの、空は、何ヶ月もの間、初めて、開かれた。頭上には、依然として、激しい、宇宙戦争の、光景が、広がっていた。
「司令官!こちら、ライトキャプテン!」ライトは、即座に、報告した。「作戦成功!惑星マリアの、エネルギーシールドは、破壊されました!」
**<「素晴らしいぞ、キャプテン!次の、フェーズの、準備をしろ!」>** ジャックの声が、返ってきた。
「ですが、新たな情報が!」ライトは、続けた。「この星の、機械の群れは、一つの、中心から、制御されているわけでは、ありません!我々は、奴らの、『巣』と、『信号塔』が、大陸中に、点在しているのを、発見しました!一つの塔を、破壊しても、その地域の、奴らを、停止させられるだけです!」
通信チャンネルに、一瞬、沈黙が、訪れた。そして、再び、ジャックの声が、戻ってきた。しかし、今回は、もはや、ただの、会話ではなかった。連合艦隊、全体への、布告だった!
**<「連合軍の、勇敢なる、兵士たちへ!今!敵の、盾は、『幻影の影』チームの、手によって、破壊された!」>**
**<「我々は、機械の群れの、弱点を、発見した!我々の、目標は、明確だ!今、私は、命じる!全面的な、地上作戦を、開始せよ!」>**
「これは、人類史上、最大級の、侵攻となる!全戦力を、降下させろ!惑星マリアを、解放するのだ!!!」
ジャックの、布告が、終わると、最も、驚くべき、光景が、繰り広げられた。何百隻もの、戦闘艦の、ハンガーベイが、開き!何千隻もの、降下艇と、兵員輸送船が、母艦から、飛び出し、解放の、流星群となって、惑星マリアの、地表へと、向かっていった!
ライトと、彼のチームは、その光景を、山の頂から、言葉にできない、感情と、共に見つめていた。
**<「キャプテン、君たちの、仕事は、まだ終わっていない」>** ジャックの声が、プライベートチャンネルで、再び、響いた。「我が、主力軍が、連邦兵と、機械の巣を、掃討している間に、君たちの、最後の任務、最も重要な、目標である、王宮へ、向かえ」
「内部へ、侵入し、そして、重要人物、全員を、救出しろ。残りは、我々が、引き受ける」
ライトは、今や、完全な、戦場と化した、首都の、中心にそびえ立つ、王宮を、見つめた。「了解」彼は、短く、言い、そして、彼のチームに、向き直った。「全員、聞いたな。最後の、仕事に、取り掛かろう」
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惑星マリアの、氷の首都で、戦争の、轟音が、響き渡っていた。
その、混沌の、ただ中を、「幻影の影」と、「ウォー・ハウンド」は、亡霊のように、動き、最も、恐るべき、最後の目標、王宮へと、向かっていた。
彼らが、王宮を、はっきりと、見渡せる、潜伏ポイントに、到着した時、その光景に、誰もが、息を、呑んだ。かつて、おとぎ話のように、美しかった、王宮は、今や、死の、要塞と、化していた。
「正面ゲートは、明らかな、殺戮の罠だ」ライトは、状況を、評価しながら、言った。「我々は、別の、侵入経路を、探さなければならない」
**<「キャプテン、見つけました」>** ライラの声が、コムリンクから、響いた。**<「閉鎖された、旧王室用の、地下鉄トンネルが、あります!その入り口は、旧市街の、中央広場!王宮の、地下へと、直接、繋がっています!」>**
「素晴らしい、ライラ」ライトは、言った。「全員、計画変更だ!」
彼は、レックス中尉に、向き直った。「レックス!君と、ギデオンに、北門で、最大の、『お祭り』を、始めてほしい!可能な限り、激しく、攻撃しろ!奴らに、我々が、そこから、突入すると、思わせるんだ!」
「ハッ!お安い御用だ、キャプテン!」レックスは、にやりと、笑った。
作戦は、即座に、開始された!北門から、巨大な、爆発音が、響き渡った!ギデオンと、傭兵部隊が、激しく、攻撃を、開始した!王宮中に、配置されていた、連邦兵たちが、即座に、その大規模な、攻撃に、注意を、向けた!
ライトは、その隙を突き、マキと、数名の、兵士を率いて、旧市街の、中央広場へと、突進した!しかし、奴らは、愚かではなかった。廃墟のはずの、地下鉄の入り口に、連邦の、上級部隊の、一団が、待ち構えていたのだ!
「奴らに、気づかれた!やるぞ!」ライトが、叫んだ!
広場での、戦闘が、勃発した!ライトと、マキが、上級兵士と、激しく、戦う、その、同時。
**<「キャプテン!まずい!」>** レックスの、切迫した声が、コムリンクから、響いた!**<「北門だ!奴らは、巨大な、隠し砲台を、持っていた!我々は、釘付けにされている!ギデオンが、爆弾を、仕掛けに…ぐあああっ!ギデオンが、撃たれた!足だ!彼を、助けに行けない!!!」>**
その、凶報に、ライトの心臓は、ずしりと、重くなった!彼の、仲間が、彼の、チームの一員が、重傷を負い、包囲されている!しかし、彼の目の前には、王家を、救出し、惑星、全体を、解放するという、任務が、あった。
今や、ライトは、「キャプテン」として、最も、過酷な、決断に、直面していた。彼は、大義に、忠実であり続けるか、それとも、彼の、「家族」の命を、救いに、戻るか。
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レックスからの、ギデオンの、負傷に関する、切迫した、報告は、ライトに、最も、痛みを伴う、一瞬の、決断を、強いた。
「レックス!」彼は、氷のように、冷たく、断固とした声で、コムリンクに、命令を、叫んだ!「そこを、死守しろ!可能な限り、ギデオンを、援護し、混沌を、引き起こし続けろ!我々は、当初の、計画通り、突入する!」
「しかし、キャプテン!」
「これは、命令だ!」ライトは、言い放った。「我々が、失敗すれば、ギデオンの、犠牲は、無意味になる!計画を、遂行しろ!」
彼は、残された、仲間たちに、向き直った。「行くぞ!」
ライトと、マキは、戦争の、喧騒と、罪悪感を、背後に、残し、暗い、地下鉄の、トンネルへと、飛び込んだ。
--- **王室地下鉄トンネル内部にて** ---
そこは、忘れ去られた、過去だった。錆びついた、レール、骸骨の、ような、豪華な、列車。そして、時折、点滅する、非常灯だけが、その闇を、破壊していた。
**<「トンネル内の、警備システムは、まだ、生きています!前方に、自動砲台!」>**
ライラの声が、終わると、同時に、天井に、隠されていた、砲台が、姿を、現し、プラズマ弾を、撃ち込んできた!
**<「サイラスより、報告。貴方たちの、上方の、メンテナンスシャフトから、連邦兵の、一団が、移動中!あと、2分で、そちらへ、到達すると、推定!」>**
「ライラ!」ライトが、叫んだ!**<「わかってる!あと、10秒、ちょうだい!時間を、稼いで!」>**
北門では、足を、負傷した、ギデオンが、歯を、食いしばりながら、グレネードランチャーを、撃ち返していた!「足の、一本くらい、くれてやる!だが、腕は、まだ、動くんだよ!」
**<「成功!砲台、停止!」>**
ライトと、マキは、その隙を突き、前へと、走り抜けた!彼らは、王宮の、地下にある、廃墟の、地下鉄駅へと、たどり着いた。しかし、そこは、上級警備兵で、満たされた、最後の、防衛拠点と、化していた!
狭い、駅構内での、近接戦闘が、始まった!ライトと、マキは、背中合わせで、戦った。まるで、一人の、人間のように、連携し。ライトの、銃弾が、道を切り開き、マキの、刃が、全てを、薙ぎ払った。
最後の、兵士が、倒れると、駅は、再び、静寂に、包まれた。彼らの目の前に、マリアン王家の、紋章が、刻まれた、巨大な、サービスドアが、あった。
「ライラ、着いた。ドアを、開けろ」
**<「了解…システムを、バイパス…成功!」>**
重々しい、機械音が、響き、そして、厚い、鋼鉄の、扉が、ゆっくりと、開かれていった。その向こうには、明るく、豪華な、王宮の、地下通路が、広がっていた。
彼らは、ついに、敵の、心臓部へと、到達したのだ。しかし、本当の、任務は、まだ、始まったばかりだった。




