第二章 33
--- **数ヶ月後** ---
時は傷を癒し、ライトは完全に回復した。彼はこの数ヶ月を、肉体の回復と過酷な訓練に費やし、以前にも増して強靭になっていた。「キャプテン」という重い責務と共に。
その間、ジャック司令官もまた、静観してはいなかった。ステーション・ケルベロスでの勝利と新たな同盟の噂は、野火のようにザン・セクター全域に広まった。ジャックはこの機を逃さず、秘密裏に外交交渉を進め、ついにサラダー共和国と他の多くの独立植民惑星を、正式に革命軍へと参加させることに成功したのだ!今や、「ザン・セクター解放連合軍」は、真に巨大で恐るべき軍隊となっていた。そして、奪還の日がやってきた。
基地「合流点」の最大作戦司令室に、連合の全ての指導者たちが集結した。
「同志諸君!」ジャックが力強い声で会議を始めた。「今こそ、我々が反撃する時だ!」
ホログラムスクリーンに、連邦の防衛艦隊に厳重に包囲された氷の惑星、マリアが映し出された。「本日、我々は作戦名『冬の烈風』、惑星マリア奪還作戦を開始する!」
ベアトリス提督が作戦計画を説明した。主力艦隊が軌道上の敵艦隊と正面から衝突し、インワン・フリーダム艦隊が側面から包囲攻撃を行う。しかし、最大の障害は、王宮を中心に惑星全体を覆うエネルギーシールドだった。
「そしてそれこそが、君たちの任務だ、キャプテン」ジャックがライトを見た。「『幻影』チームは、宇宙での戦闘が始まる前に、惑星マリアへ最初に潜入する。任務はただ一つ。王宮へ侵入し、内部からエネルギーシールド発生装置を破壊しろ。君たちが、我々全軍の勝利への扉を開く鍵なのだ」
ライトは、希望に満ちた眼差しで彼を見つめるウィリアム王子とステラ王女、そして、マキ、ライラ、ギデオン、サイラスといった彼のチームを見た。全員、準備はできていた。
「拝命いたします、司令官」ライトは、力強く敬礼した。
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会議の後、ジャックは主要メンバーだけを残した。「個人的に話さねばならない、最後の秘密がある」
ホログラムには、要塞と化した王宮が映し出された。「連邦は、王宮を最高セキュリティの『刑務所』としても利用している」ジャックは、重要人物たちのリストを表示した。その顔ぶれに、ウィリアムとステラは息を呑んだ。「首相、議員、そして…国王と王妃両陛下も、そこに幽閉されている」
「父上!母上!」ステラが、驚きと喜びの入り混じった涙を浮かべて声を上げた。
「その通りだ」ジャックは頷いた。「そしてそれ故に、君の任務は、さらに一段階複雑になる、ライトキャプテン。シールドを破壊した後、第二の任務として、国王陛下、王妃陛下、そして政府の要人全員を解放しろ。そして、我々の主力部隊が到着するまで、王宮内の全ての連邦軍を、君のチームだけで持ちこたえるのだ」
それは、紛れもない自殺任務だった。しかし、ライトは動揺を見せず、ただ静かに頷いた。「拝命いたします、司令官」
--- **惑星マリア地表にて** ---
「ナイトフォール」から射出された降下ポッドが、厚い雪の中に静かに着陸した。摂氏マイナス50度の極寒の世界。ライト、マキ、ギデオン、サイラス、そしてレックス中尉率いる「ウォー・ハウンド」の10名からなる潜入チームは、猛吹雪を隠れ蓑にして、占領された首都へと向かった。
しかし、彼らは進路上で二つの敵グループ、連邦の哨戒部隊と「機械犬」の群れに挟まれてしまう!連邦兵に発見され、銃撃戦が勃発すると、その音に気づいた機械犬の群れもまた、近くにいた連邦兵に襲いかかった!
状況は、完全な三つ巴の乱戦となった!
「突破はしない!」ライトは叫んだ。「この混沌こそが、我々の最大の目くらましだ!中央を突き抜けろ!今だ、動け!」
ライトの狂気じみた決断は功を奏した!チームは、連邦兵と機械獣が殺し合う戦場の中心を嵐のように駆け抜け、首都の深部へと侵入することに成功した。しかし、その時、新たな災厄が訪れた。




