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GalacXER 銀河の執行者  作者: Boom
第二章 [反乱軍と同盟の反撃]
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第二章20 "インワンの悪魔を全て狩り尽くせ"

マキが去った後、ライトとステラ王女の間にあった暖かく、共に計画を練っていた雰囲気は、気まずい沈黙に取って代わられた。


「キャプテン…ライト…」ステラは、彼に何かを伝えようと、勇気を振り絞った。「私が抱いている、この想いとは…」


しかしその時、ビーッ!ビーッ!ライトの手首の通信機が、無情にも鳴り響いた!**<全指揮官レベルの士官へ:最終任務ブリーフィング「作戦名:ホームカミング」に参加せよ>**


時刻は07:58!「まずい!」兵士としての本能が、彼の体を支配した!「王女殿下!大変申し訳ありません!時間を完全に忘れておりました!最終ブリーフィングに、今すぐ参加しなければなりません!」


彼は、最も重要な瞬間を台無しにしたことに、全く気づいていなかった。「ええ…もちろんですわ、キャプテン」ステラは、失望を笑みの下に隠した。「任務が、最優先ですものね」


ライトは慌てて敬礼し、バイオドームを駆け去っていった。一人残されたステラは、彼の消えた背中に向かって、口にすることのできなかった言葉を、虚空へと囁いた。「…私が抱いている想いとは、貴方に、無事な『未来』が訪れてほしいという、願いですわ…」


--- **旗艦「ヴィンディケーター」最高作戦司令室にて** ---


ライトが会議室に足を踏み入れると、張り詰めた空気が彼を迎えた。ジャック、ベアトリス提督、ウィリアム王子、エヴァ司令。連合の最高指導者たちが、惑星インワンのホログラムを囲んでいた。


「ちょうどいいところに来た、キャプテン」ジャックが言った。「全ての準備は整った。これが、最終作戦計画だ」


彼は、惑星インワンの地下深くに隠された、巨大な地下構造物を指し示した。「これが君たちの目標、『サイクロプス・プライム』。キメラ計画の主司令部にして、全ての機械の群れを制御する『エレクター=カイ』の所在地だ。そして、ステーション・ケルベロスから逃れた『スペクター』が、インワンの防衛最高司令官に任命された。奴は、そこにいると見て間違いない」


ジャックは、ライトの目をまっすぐに見つめた。「ライトキャプテン、君は『幻影ファントム・ストライク』とレックス中尉の『ウォー・ハウンド』を率い、この強襲作戦の主力となる。目標はただ一つ。エレクター=カイを破壊し、毒蛇の頭を断ち、この宇宙を解放することだ!」


--- **ジャック司令官執務室にて、作戦開始数時間前** ---


ライトは、ジャックに個人的に呼び出されていた。部屋の闇の中には、マキもいた。


「この任務は、ただの強襲ではない、キャプテン」ジャックは、元老院議員カイアスの映像を映し出した。「君とステラ王女が分析した件、我が情報部が動いた。エヴァ司令率いる別動隊が、宇宙ステーション『オアシス』へ向かっている。君が火をつけた、もう一つの戦争、情報戦だ」


彼は、再び惑星インワンの地下を指した。「君の主目標は変わらない。だが、そこへ帰るということは、君自身の墓場へ足を踏み入れるということだ。私は、孤児院のことも、『リーナ』のことも、そして君が仲間を見捨てなければならなかった戦場のことも、全て知っている」


ジャックは、ライトに近づいた。「私は、君に過去に囚われたまま任務に行かせたくはない。痛み、憎しみ、君を形作ったその全てを、武器として使え。今回の君の任務は二つ。一つはエレクター=カイの破壊。そして二つ目は、君自身の過去の謎を、全て解き明かすことだ」


彼は、闇の中に立つマキを見た。「これは君だけの任務ではない、キャプテン。彼女の任務でもあるのだ」


「私は、君に死ねと命じているのではない、ライト」ジャックは、最も真剣な声で言った。「私は、君に、もう一度『生きろ』と命じているのだ。己の悪魔と対峙し、真実を探し出し、過去の鎖から自らを解き放て。そして、君を待つ三人の女性に、どう向き合うべきかを、見つけ出してこい」


--- **7日後、惑星インワン星系** ---


「全部隊、ワープ開始!」


ジャックの号令と共に、何千隻もの連合軍艦が、次元のトンネルへと消えていった。次の瞬間、彼らは惑星インワン星系に到着した。軌道上は、即座に激しい戦闘の光と爆発で満たされた!


「我々の合図だ!」ライトが命じた。「ライラ!降下するぞ!軌道上の戦闘を目くらましに利用しろ!」


「ナイトフォール」は、戦場を突き抜け、オレンジ色の大気圏へと突入した。そして、戦闘区域から離れた深い渓谷に、静かに着陸した。「我々の最初の目標は、この渓谷に残存する連邦の外部防衛線を排除し、『サイクロプス・プライム』への接近ルートを確保することだ!」


しかし、彼らが動き出して間もなく、サイラスから緊急報告が入った。「キャプテン!敵を探知!待ち伏せです!ただの哨戒部隊ではない、重砲を備えた拠点です!」


「奴ら、俺たちがここへ来ることを知っていたのか!」ライトは悪態をついた。「どうやって計画が漏れた!?」


彼が答えを見つける前に、最初の一発のプラズマ弾が、彼らに向かって放たれた!


「釘付けにされたぞ、キャプテン!」レックスが叫んだ。「敵の砲台は、あまりに有利な位置にいる!」


最初の強襲は失敗したかに見えた。しかし、ライトは、敵の防御陣形の中に、致命的な「隙間」を見出していた。(防御フォーメーション『シグマ7』。特殊部隊訓練キャンプの初日に教わる、基本中の基本。そして、その最大の弱点は…)


「全員、俺の命令を聞け!」ライトの声は、氷のように冷徹で、絶対的な自信に満ちていた。「これは砲撃戦ではない。『外科手術』だ」


ライトの、10秒にも満たない、複雑で、しかし完璧な指揮の下、作戦は実行された!サイラスの狙撃が崖崩れを誘発して敵の指揮系統を分断し、ギデオンとレックスの陽動攻撃が敵の注意を両翼へと引きつけ、その隙にライラが中央の重砲塔をハッキングし、同士討ちをさせたのだ!


「行け!!!」


ライトとマキは、そのわずか3秒間の混沌の中を駆け抜け、敵の背後へと回り込むことに成功した!鉄壁に見えた防衛線は、わずか1分足らずで、内部から崩壊した。


「奴らが、俺を訓練したんだ」ライトは、驚愕するギデオンに、平坦に答えた。「時間を無駄にした。これより、部隊を二手に分ける!ギデオン、レックス、君たちは東の副通信塔を破壊し、陽動を続けろ!サイラス、ライラ、高所から我々全員を支援しろ!そしてマキ、お前は俺と来い。我々は、奴らの心臓部、『サイクロプス・プライム』を直接叩く!」


---


ライトとマキは、廃墟と化した旧首都の、オレンジ色の砂が舞う中を、静かに進んでいた。そして、彼は足を止めた。目の前には、黒く焼け焦げた、孤児院の残骸があった。


その瞬間、彼の頭の中に、炎、悲鳴、そして連れ去られていく「リーナ」の姿が、鮮烈に蘇った。彼は、戦場の真ん中で、凍りついた。


「キャプテン」マキが警告を発した、その時。「敵だ!」


彼女の声が終わると同時に、四方から、ステルス装甲をまとった兵士の影が現れた!連邦の「暗殺部隊」だ!マキは、まだ過去に囚われているライトを、遮蔽物の陰へと突き飛ばした!「しっかりしろ!」


マキは、一人で四人の暗殺者と対峙した!彼女は「ゴースト」としての本能を完全に解放した!彼女の二色の瞳は、熱源と弾道を同時に計算し、人間を超越したレベルで戦場を処理していた!彼女は死の嵐と化し、二人を瞬時に仕留めたが、その腕に深い傷を負った!残りの二人が、その隙を突いて、同時に彼女に襲いかかった!


その光景が、ライトを現実へと引き戻した!殺されようとしているマキの姿が、リーナの姿と、見捨てた仲間たちの姿と、重なった。(もう二度と、同じ過ちは繰り返さない!)


彼の全ての痛みが、冷徹な決意へと変わった!パン!パン!彼のライフルから放たれた二発の弾丸が、マキに迫っていた暗殺者たちの背中を、正確に撃ち抜いた!


戦闘は、終わった。ライトは、孤児院の残骸を見つめた。「すまなかった」彼は、小さく言った。


「貴様は何も悪くない」


「お前に謝っているんじゃない。『彼ら』にだ」


彼は振り返った。その眼差しは、再び「キャプテン」のものに戻っていた。「時間を稼いでくれて、感謝する」


マキは、頷いた。「行こう。この全てを、終わらせに」


--- **「サイクロプス・プライム」司令部にて** ---


チームは再集結し、連邦の最後の砦、地下司令部の入り口の前に立っていた。「これより先、潜入はしない」ライトが宣言した。「我々が持つ、全ての力で、正面から突入する!ギデオン!レックス!道を切り開け!」


「任せろ!!!」


壮絶な爆発音と共に、最後の強襲が始まった!彼らは、上級兵士、自動砲台、そしてゴライアス戦闘騎が守る地獄の通路を、突き進んだ!ライラが電子戦で道を切り開き、サイラスが遠距離から死を運び、ギデオンとレックスが鋼鉄の嵐となり、そして、ライトとマキが、敵の心臓部を貫く刃となった!


ついに、彼らは最後の広間、「エレクター=カイ」制御室へとたどり着いた。そして、その中央で、彼らを待っていたのは、「スペクター」だった。


「ようやくたどり着いたか、裏切り者」


「レックス、ギデオン!ドアを固めろ!サイラス!エネルギーパイプを狙え!ライラ!『無効化パルス』を準備しろ!」ライトは叫んだ。彼はマキに向き直った。「奴は、我々のものだ」


最後の2対1の戦いが始まった!「計画を覚えているな!90秒、耐え抜け!」


二人は、スペクターに同時に襲いかかった!しかし、それは勝利のためではなく、「時間を稼ぐ」ための戦いだった!ライトが「囮」となって予測不能な動きで攻撃を逸らし、マキが全方位から攻撃を加える!


80秒が経過し、全員が限界に達していた!スペクターが、マキに狙いを定めた!ライトは、その動きを読み切り、その攻撃を自らの体で受け止め、スペクターの腕を、一瞬だけ拘束した!


「今だァァァ!!!」


その瞬間、全てが同時に起こった!


ピッ!スペクターの予測システムがクラッシュした!3秒の時間が始まった!

ザクッ!マキの刃が、スペクターの装甲の弱点を貫いた!

ズドン!サイラスの弾丸が、エネルギーパイプを破壊した!

**<「アップロード完了!」>** ライラの声が響き渡った!

「地獄で眠りやがれ!!!」そして、ギデオンのロケットが、ショートしたエレクター=カイに直撃した!


音のない、白い閃光が、広間の全てを飲み込んだ。光が消えた時、そこには、黒焦げの金属の残骸と、床に倒れるスペクターの姿だけがあった。任務は、成功した。


「司令官!機械の群れが、機能を停止しました!虫のように、空から落ちてきます!」


惑星ヴェリディア、そしてセクター全域での勝利が、確定した。重傷を負ったライトは、床に崩れ落ちた。インワンでの戦争は、終わったのだ。


その頃、旗艦の艦橋で、エヴァ司令がジャックの元へ駆け寄った。「司令官、宇宙ステーション『オアシス』から緊急の極秘通信が。『シルクワーム』からです。カイアス元老院議員が、インワンでの我々の勝利を知り…『交渉』を望んでいる、と」


ジャックは、解放されたインワンの映像を見つめ、そして、冷たい勝者の笑みを浮かべた。戦場での戦争は終わったのかもしれない。だが、影の戦争は、まだ始まったばかりだった。

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