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第一章 10 "キメラ計画(2)"


邪魔な警備兵を排除し、連邦の暗い秘密を知った後、彼は一瞬たりとも休まなかった。


ステーション中に鳴り響くサイレンは、彼の時間が極めて限られていることの証だった。


これ以上、ぐずぐずしていれば、ステーションに駐留する連邦の増援部隊が、間違いなくここへ到着するだろう。


(進まなければ…設計図を手に入れなければ)


彼は、今や墓場のように静まり返った隔離ウィングから足を踏み出し、未だ赤い非常灯が照らし出すメイン通路へと戻った。


しかし、何かが変わっていた。


雰囲気が、変わっていた。


通路の照明は、切れかけの電球のように点滅し始め、不気味に揺れ動く影を生み出していた。


かつて連続的に鳴っていたサイレンの音は、途切れ途切れになり、歪み、鼓膜の奥深くに突き刺さるような、甲高い悲鳴へと変わっていた。そして、最悪なことに、彼が聞いた新たな「音」。人間ではない悲鳴、床を引っ掻く金属音、そして、ドアが開け放たれた研究室から聞こえてくる、低い唸り声。


前方の通路は、壁や天井一面に飛び散った血痕で覆われていた。


科学者や警備兵の亡骸が散乱していたが、その死体の状態は、銃火器によるものとしては、あまりにも恐ろしかった。


多くの遺体は、まるで野生動物に食い荒らされたかのように、引き裂かれていた。


今の雰囲気は、伝説的なホラーゲーム『ハーフライフ』の一場面さながらだった。


突如、横たわっていた科学者の一人の体が、おぼつかない様子でゆっくりと起き上がった。


彼の目は見開かれ、虚ろだった。


彼のうなじには、蜘蛛に似た小型の機械の寄生体が、しがみついていた。


それは、ゆっくりとしたリズムで赤い光を点滅させ、やがて、その体は狂ったようにライトに突撃してきた!


バン!


ライトは、本能的に撃ち返した。


弾丸は、その体の頭部中央を貫き、それは力なく倒れた。彼は、その光景を驚愕の目で見つめていた。


ただ、捕獲して実験していただけではない。奴らは、脱走していたのだ。


そして、人間を操ることさえも。


彼の任務は、今や、隠密行動ではなくなっていた。それは、完全なサバイバルゲームへと変貌していた。


彼は、生き残った連邦兵、脱走した機械の群れ、そして、かつては人間だったゾンビたち、その全てから、生き延びなければならなかった。


彼が、次の一歩を踏み出そうとした時、彼のイヤホンに、割り込み通信が入ってきた。


互いの状況を報告し合う、チームの声だった。


『…こちらライラ。予備電源システムにアクセス完了。でも、換気ダクトの中に、「何か」が、いっぱいいる。ギデオン、準備はいい?』


『(ドォンという爆発音!)ギデオンだ!「歓迎の品」は作動した!ライトのための道は確保したぞ!パーティーを楽しめよ、相棒!(重機関銃の連続音)』


『…こちらサイラス。連邦のガードは崩壊しつつある。奴らは、「奴ら」と、混乱の中で戦っている。お前の目標は見えているぞ、ライト。メインデータ室は目の前だ。だが、入り口は、めちゃくちゃだ。気をつけろ』


チームメイトの声は、他の者たちもまた、困難な戦いを強いられていることを、彼に知らせた。しかし、彼らの任務は、まだ続いていた。


ライトは、巨大な中央研究ホールまで走ってきた。


そして、彼が目にした光景は、真の混沌だった。十人ほどの最後の連邦兵が、ひっくり返った実験台の後ろに防衛ラインを築いていた。


彼らは、四方八方から押し寄せる「機械犬」とゾンビ化した科学者の群れに、絶望的な戦いを挑んでいた。


ライトが姿を現した途端、一人の連邦兵が、即座に彼に銃口を向けた。「敵だ!撃て!」


三つ巴のプラズマ弾が、乱れ飛んだ!


ライトは、大きな柱の陰へと転がり込んだ。


彼は、連邦兵と戦うためにここへ来たのではない。しかし、奴らが先に撃ってきた以上、彼に選択肢はなかった。


彼は、その混沌を利用した。


彼は、連邦兵のグループの近くにあった、液体窒素のタンクを撃った。


ドォン!


タンクは爆発し、視界を遮る極低温の蒸気を放出し、何人かの兵士の体勢を崩させた。


ライトは、その隙に飛び出し、残った兵士を二、三人を仕留め、そして、飛びかかってきた機械犬に対処した。


彼は、第7部隊の本能で戦った。周りの全てを利用し、敵の敵を陽動に使い、そして、生き残るための隙間を見つけるために、最も危険な場所で動いた。


メインの銃の弾がほとんど尽きるまで激しく戦った後、彼は、その部屋で最後に立っている者となった。


兵士と機械の死体が、山と積まれた中で。


彼は、激しく息を切らしていた。


古傷が開き始め、痛みが走った。しかし、彼の目標は、もう目と鼻の先だった。


彼の前には、チタン合金でできた、円形のブラストドアがあった。


そこには、はっきりと、こう刻まれていた。


「プロジェクト・キメラ - メインデータセンター」


ライトは、ドアの横の壁にもたれかかり、最後の息を整えようとした。彼が通り抜けてきた地獄は終わったのかもしれない。


だが、次の地獄の扉が、彼の目の前で待っていた。


ライトは、「プロジェクト・キメラ」メインデータセンターの、分厚い鉄の扉の前に立っていた。


彼の息は、まだ戦闘で上がっていたが、休んでいる時間はもはやなかった。


『ライト!こちらライラ!まずいわ!連邦の偵察艦隊が、星系にワープアウトしてきた!奴らは、ステーションに強襲艇を送ってきてる!もう時間がない!』ライラの声が、焦ってコムリンクに割り込んできた。『データを取って、すぐに脱出して!私たちのことは気にしないで!行って!』


「了解」


ライトは、短く答えた。彼は、持っていた最後の穿孔爆弾を扉に設置し、最も遠い遮蔽物へと走った。


ドォォォン!!!


巨大な衝撃波が、彼の体を壁に叩きつけた。


フット単位の厚さを持つ鋼鉄の扉が、歪み、引き裂かれた。


その向こうに広がる、暗闇を覗かせて。ライトは、急いで体を起こし、中へと足を踏み入れた。


目にした光景に、彼の血は凍りついた。


ここは、彼がこれまで見た中で、最も先進的なデータセンターだった。


しかし、今や、それは、ただの屠殺場だった。白い白衣を着た科学者たちの遺体が、血の海に沈んでいた。


壁や制御パネルは、金属の鉤爪による深い引っ掻き傷で覆われていた。戦闘の痕跡も、銃創もない。ただ、一方的な虐殺の痕跡だけがあった。


そして、最も不気味なのは、部屋の最も奥の壁に開けられた、巨大な円形の穴だった。


まるで、隠された秘密の部屋から、何かが解き放たれたかのようだった。


第7部隊の本能が、彼の頭の中で叫んでいた。(異常だ…異常すぎる)彼は思った。(ステーションで最も安全なはずのこの部屋で、自動防衛システムが、一つも作動していない。あの穴は、外部からの侵入ではない。内側から『開けられた』ものだ。連邦の奴らは、ミスを犯したんじゃない。奴らは、意図的に、口封じのために、自らの部下を殺すために、怪物を解き放ったんだ!奴らは、一体、何を隠している!?)


彼の視線は、まだ固く閉ざされた、耐火金庫を捉えた。


それは、この部屋で唯一、損傷を受けていないものだった。


その上には、プロジェクト・キメラの、三つの頭を持つ怪物のシンボルが、刻まれていた。

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