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GalacXER 銀河の執行者  作者: Boom
第一章 [解放と希望の団結]
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第一章 9 "デッドゾーン突破"

秘密基地「合流点」での偽りの平穏は終わりを告げた。ステルス艦「ナイトフォール」が、静かに造船所を離れ、暗黒の中心へと向かう。その目標は「デッドゾーン001」。この戦争の運命を握る場所だ。


「ナイトフォール」の薄暗く、狭い艦橋は、触れることができるほどの緊張感に満ちていた。ライトキャプテンが主操縦席に着き、「幻影ファントム・ストライク」チーム全員が最高度の警戒態勢に入っていた。


「まず、皆が知りたいであろう問いに答えよう」ライトが、目の前のレーダー画面から目を離さずに会議を始めた。「この任務に就くのは、我々5人のみだ」


彼が指すのは、彼自身、マキ、ライラ、ギデオン、そしてサイラスだった。「レックス中尉と『ウォー・ハウンド』は、我々が道を切り開いた後に続く第一次増援部隊となる。だが、今回の潜入には、最大限の静粛性と速度が求められる。人員が少なければ少ないほど、探知されにくい」


主コンソールの前に座るライラが付け加えた。「ジャック司令官の情報は正確です。デッドゾーン001のセンサーネットワークは、最新の量子エンタングルメントシステム。質量の大きい物体の移動を、何光分も離れた距離から探知できます。我々の艦一隻だけが、そのエネルギーのカーテンを『すり抜ける』チャンスがあるのです」


「だが、それが我々の唯一の問題ではない」ライトは続けた。彼の声は重かった。「マキの諜報員からの最新情報によれば、デッドゾーンは自動防御システムだけで守られているわけではない」


彼は部屋の中央に3Dのホログラム地図を映し出し、敵の哨戒ルートを示した。「この赤いルートは、首都防衛艦隊から直接派遣された高等哨戒飛行隊『レヴナント』だ。極めて高い速度と精度を誇る」


「そして、この自由に動いている黒いルートは…」ライトは一瞬言葉を止めた。


「…第7部隊だ」マキが彼の言葉を続けた。


室内の誰もが息を呑んだ。いつも笑顔のギデオンさえも、その表情は硬かった。


「そうだ」ライトは頷いた。「俺の古巣だ。奴らは決まったパターンで飛行しない。『狩り』をする。あらゆる異常、漏れ出すあらゆる信号を探知する。奴らこそが、ステーション・ケルベロスの真の守護者だ」


「そりゃ最高じゃねえか!」ギデオンは拳を手のひらに叩きつけた。「首都防衛隊に第7部隊だぁ?まるで俺たちの歓迎パーティーだな!」


「聞け!」ライトは、決然とした指揮官の声で言った。「我々の任務は変わらない。これこそが、我々が訓練されてきたことだ。我々は影、我々は亡霊。奴らが存在さえ知らない隙間を、我々は通り抜ける」


彼はチームのメンバー一人一人の顔を見た。「ライラ、お前は我々の盾だ。サイラス、お前は目。ギデオン、お前は奴らを震撼させる咆哮だ」彼はマキと目を合わせた。「そして、我々二人は、奴らの心臓を貫く刃だ」


「我々はこの任務を成功させる」ライトは締めくくった。「完全ステルスモードへの移行準備」


全員が持ち場に戻った。恐怖は、最高レベルの集中力と決意に取って代わられた。


「デッドゾーン001の外縁部に侵入します…今」ライラが報告した。


彼女の声が終わると、「ナイトフォール」はレーダーからゆっくりと姿を消した。船の外殻は、あらゆる光を飲み込む漆黒へと変わり、それは虚空を移動するただの影となった。何十億もの運命をその双肩に懸けて、宇宙で最も危険な領域へと。


---


「ナイトフォール」が「デッドゾーン001」の外縁部を静かに進んでいた。艦内では、誰もが自らの任務に集中していた。重い沈黙が、まるで全ての命を押し潰そうとしているかのようだった。しかしその時、ライトのスクリーンに最高機密レベルの通信が入った。ジャック司令官からの直通だった。


ジャックのホログラム映像が艦橋の中央に現れた。その表情は、いつもより険しかった。「ライトキャプテン、最優先報告だ」彼は挨拶もなしに言った。「我々の解読班が、たった今キメラファイルからもう一つの層の情報をこじ開けた。それは、ステーション・ケルベロスの『能動的』防御システムの設計図だ。我々が最初に見ていたものは、ただの外殻に過ぎなかった」


「ナイトフォール」のホログラムテーブルで、デッドゾーンの地図が即座に更新された。新たな敵のシンボルが、驚くほど大量に表示された!


「こいつは何だよ…」ギデオンが小さく悪態をついた。


「それこそが奴らの真の牙だ」ジャックは説明した。「連邦は、ここに最新のロボット技術を投入している。戦略拠点に配備された地上戦闘騎『ゴライアス』、隅々まで哨戒する無人殺戮ドローンの大群…」


「司令官!」ライラが焦った声で割り込んだ。彼女は、ステーションの周囲に現れたばかりの衛星のシンボルを指差した。「この衛星は、量子観測衛星です!熱や質量を探知するのではありません。時空の歪みを探知するんです!我々のステルスシステムは、効果がないかもしれません!」


「そして最悪なのは…」ジャックは、重々しい声で続けた。「奴らは最終自己防衛システムとして、戦術核ミサイルを配備している。もし任務が失敗するか、ステーションが占拠されれば、奴らは軌道半径内の全てを爆破する。何の痕跡も残らないだろう」


沈黙が艦橋を支配した。かつて「決死」だった任務は、今や完全に「不可能」な任務へと変わった。


しかしその時、ジャックは笑みを浮かべた。それは、災厄の中に好機を見出す革命家の笑みだった。「だがそれは、我々が得る報酬が、以前よりも遥かに大きくなったということも意味する」彼は力強い声で言った。「ステーション・ケルベロスは、ただの司令部ではない。連邦の秘密の兵器庫であり、全技術の心臓部だ!これを破壊、あるいは占拠できれば、それはただの勝利ではない。敵の手足を切り落とし、再起不能にすることだ!連邦の時代が終わったことを、全宇宙に知らしめることになるのだ!」


彼はホログラム越しに、「幻影ファントム・ストライク」の全員を見つめた。「今回のインワン・フリーダムの勝利は、全ての星々に轟くことになるだろう!」


「さて諸君、任務に取り掛かれ!」


ジャックの映像は消え、不可能に立ち向かう五人のチームだけが残された。ライトは深く息を吸い込み、チームに向き直った。その眼差しに恐怖はなく、ただ冷たい決意だけがあった。


「皆、聞いたな」彼は平坦な声で言った。「ライラ、あの衛星ネットワークの隙間を見つけろ。サイラス、最初のゴライアスの位置を特定しろ。ギデオン、お前のおもちゃの準備をしておけ。マキ、刃を研いでおけ」


彼は「ナイトフォール」の操縦桿を固く握りしめた。「仕事の時間だ」


---


ステルス艦「ナイトフォール」が、亡霊のように「デッドゾーン001」の暗闇を進んでいた。艦橋では、全員が静寂の中、自らの任務に集中していた。ただ、ライラが状況を断続的に報告する声だけが響いていた。


「第一センサー網を通過中。ステルスシステムは依然、完全機能。敵はこちらを視認できず」「『レヴナント』級哨戒艦が離脱していくのを確認。前方のルートはクリアです」


ライトは操縦桿を固く握り、目に見えない罠で満ちた前方の虚空を見つめていた。彼は、ライラが発見したセンサーネットワークの「隙間」を通り抜けるために、持てる全ての操縦技術を駆使していた。それは、見えない針の穴を高速で通り抜けるようなものだった。隣に座るマキは何も言わなかったが、彼女もまた最高度の警戒状態にあることを、ライトは感じていた。


全てが順調に進んでいるように見えた。その時までは。


**<!!!最高レベル警報!!!>**


聞いたことのない警報音が、艦橋を照らす赤い閃光と共に鳴り響いた!


「何!?」ライラが驚愕の声を上げた。「センサーネットワークじゃない!これは…タキオン波!奴ら、ステルス物体を探知するために、直接スキャン波を照射してきてる!奴らは私たちの居場所を知ったんだわ!私たちは、暴露された!」


彼女が言い終わると同時に、メインスクリーンに、近くの岩の月の表面から放たれる巨大なエネルギー源が映し出された。その表面が裂け、戦艦よりも巨大な、巨大な砲口が現れた。


「イオン・キャノン…」ライトは小さく呟いた。「本当の罠は、ここにあったか」


「全シールドにエネルギー最大!衝撃に備えろ!」彼は叫んだ。


遅すぎた。キャノンの中心部が、まばゆい青い光の球となってエネルギーを集束させ、光速を超える速度で、巨大なイオンビームを彼らに向けて放った!


ライトは死に物狂いで機体を回避させた。主ビームは船体をわずか数メートルでかすめ、船体の表面の水分は一瞬で蒸発し、彼らの背後にあった小惑星は、まるで最初から存在しなかったかのように消滅した。


だが、キャノンはすぐさま第二射を放ってきた。今度は、より広範囲をカバーする拡散弾だった!


ドォォォン!!!


「ナイトフォール」は、粉々になるかのように激しく振動した。コントロールパネルが爆発し、火花が室内に飛び散った。主電源が落ち、非常灯の赤い光だけが混沌を照らし出した。


「右翼被弾!安定化装置、機能停止!」ライラが叫んだ。「制御を失っています!艦が落ちる!」


窓の外の景色が回転し、「ナイトフォール」は、キャノンが設置されている岩の月の表面へと、高速で墜落し始めた!ライトは全力で操縦桿を引いたが、効果はなかった。


「艦を放棄する!」彼は一瞬で決断した。「全員、今すぐ脱出しろ!予備の合流地点で会おう!行け!」


ライトとマキは同時に脱出ボタンを押した。コックピットの天蓋が吹き飛ばされ、彼らの座席は炎上する機体から射出された。艦の後部にいたライラ、ギデオン、そしてサイラスの座席も、すぐさま続いた。


しかし、彼らが宇宙空間を漂っていた、その時。炎上する「ナイトフォール」の翼の破片が、再び爆発した!その爆風で、ライラ、ギデオン、そしてサイラスの脱出ポッド群は別の方向へと吹き飛ばされ、ライトのレーダーから消えた。


彼とマキは、「ナイトフォール」、革命軍の最も先進的なステルス艦が、月の表面に激突し、辺り一面を照らす最後の爆発を起こすのを見つめていた。


---


**荒涼とした月の表面にて**


ライトとマキの脱出ポッドは、岩だらけの地面に激しく衝突した。二人はすぐさまシートベルトを外し、大破したポッドから這い出た。周囲は、鋭い岩々と、空気のない漆黒の空が広がる光景だった。


ライトは急いで通信システムを確認した。「ライラ?ギデオン?サイラス?応答しろ!」


返ってきたのは、妨害電波のノイズだけだった。


艦は破壊され、チームは分断された。彼らは、脱出手段もなく、最も危険な敵地の中心に取り残された。


マキは、パニックの素振りを一切見せなかった。彼女はライフルを構えてチェックし、即座に周囲をスキャンした。「彼らはプロだ」彼女は平坦な声で言った。「彼らは生き延び、自らの任務を続けるだろう。我々がそうしなければならないように」


ライトは、燃え盛る自艦の残骸を見つめ、そして、隣で戦闘準備を整えるマキを見た。彼は、決意を固めてゆっくりと頷いた。


「ああ。新しい計画だ。我々は進み続ける。徒歩でな」


今や、潜入任務は生存任務へと変わった。そしてそれは、宇宙で最も危険な二人の影の戦士が、その真価を発揮する舞台の幕開けだった。


---


通信システムのノイズが、ライトが得た唯一の返答だった。彼らは完全に孤立した。目の前には、巨大な目印となる燃え盛る「ナイトフォール」の残骸。背後には、間もなく到着するであろう連邦軍。そして周囲には、生命の存在しない、極寒の荒野が広がっていた。


「あの残骸は、蛾を誘うランプだ」マキが最初に口を開いた。彼女は残骸ではなく、周囲の尾根をスキャンしていた。「哨戒部隊は、3分以内に到着する。ここを離れるぞ」


「同感だ」ライトは答えた。彼はライフルのグリップを握りしめた。「東へ向かう。渓谷を遮蔽物として利用する」


二人はすぐさま走り出した。彼らは月の軽い重力を利用し、岩から岩へと高速で跳躍した。しかし、運は長くは続かなかった。


スキマーのエンジン音が、背後から静寂を破った。二隻の連邦哨戒艇が残骸の上空を通過し、すぐに彼らの足跡を発見した。


「侵入者二名!東の渓谷へ向かっている!迎撃せよ!」


赤いプラズマ弾が、雨のように降り注いできた!ライトとマキは、反射的に別々の大きな岩陰に隠れた。


「敵は6人だけだ!」ライトは叫んだ。「ただの下級警備兵だ!」


「始末する!」マキはそれ以上言わなかった。


戦闘は、迅速かつ静かに始まった。ライトがスキマーの一隻に制圧射撃を行い、警備兵を遮蔽物へと飛び降りさせた。その瞬間、マキは視界から消えていた。彼女は、亡霊のように超人的な速さで闇の中を移動した。


「フッ」というサプレッサーの音が一度鳴り、ライトを側面から撃とうとしていた警備兵が、音もなく倒れた。彼女は別の二人の兵士の背後に再び現れ、高出力のエネルギーカタナの刃が、紙を切るように彼らの装甲服を切り裂いた。


ライトも負けてはいなかった。敵が混乱している隙に、彼は閃光手榴弾を投げ、一瞬のまばゆい光を生み出した。そして遮蔽物から飛び出し、残りの三人の兵士を、迅速かつ残忍な近接戦闘で仕留めた。


戦闘は一分も経たずに終わった。しかし、それは警報を送ってしまった。


突如、前方の尾根から高周波のモーター音が響き渡り、狼に似た形状の四足歩行戦闘ロボットが、数十体姿を現した。その赤い光学センサーの目が二人を捉え、一斉に襲いかかってきた!


「アイギスよりひどいぞ、これは!」ライトが悪態をつきながら応戦した。「ここが奴らの本拠地だからな!」


「当たり前だ!」マキは返した。「防御が厚いに決まっている!まともに戦ってはダメだ、逃げるぞ!」


二人は、迷路のように入り組んだ渓谷の奥深くへと走り出した。後方からは、殺戮ロボットの群れが追ってくる。彼らは周囲の全てを利用した。岩壁を撃って崩落させ、道を塞ぎ、低い重力で深い谷を跳び越えた。それは、最高の技術と知恵を要する、決死の逃走だった。


「あそこだ!」ライトが、放棄されたように見える、暗い「古い鉱山トンネル」を指差した。二人はそのトンネルへ飛び込み、ライトは最後のプラスチック爆弾を入り口に投げつけた。


ドォン!


トンネルの入り口が崩落し、追跡者の道を完全に塞いだ。真っ暗で静かなトンネルの中、聞こえるのは二人の荒い息遣いだけだった。


「一時的にだが、安全だ」ライトが最初に言った。マキは頷き、ヘルメットのライトを点灯させ、地下深くに続くトンネルの通路を照らした。「元の計画は全て破綻した。船はなく、チームは分断され、我々はここに閉じ込められた」


「主計画は破綻したが、任務は終わっていない」ライトは言った。彼は手首のホログラムスクリーンにステーションの設計図を映し出した。「このイオン・キャノンステーションは、古い鉱山ステーションの跡地に建設されている。我々がいるこのトンネルは、その忘れられた部分に繋がっているかもしれない」


マキは設計図を覗き込んだ。「私の諜報員が、使用されていない『地熱排熱ダクト』について報告していた。それはキャノンの主動力炉の近くにある。連邦の新しい設計図には記録されていない」


二人の視線が交錯した。闇の中で、新たな計画が形作られた。


「もしそのトンネルを見つければ…」ライトが口火を切った。


「…我々は、その中心部に直接潜入できる」マキが続けた。


「そこから、キャノンとデッドゾーンのセンサーネットワークを破壊できる」


「そして、レックス中尉の部隊が突入する道を切り開く」ライトが締めくくった。


潜入任務は生存任務へ、そして今、それは地下からの強襲任務へと変わろうとしていた。


「どうやら、本物の『地下活動』をする時が来たようだな」ライトは乾いた笑いを漏らした。


「それが我々の得意なやり方ではないのか」マキは平坦に返した。


二人は、トンネルの暗闇の奥深くを見つめ、そして歩き出した。毒蛇の巣の中心へと。


---


暗く静かな古い鉱山トンネルの中、ライトとマキの装甲服のライトだけが、ゴツゴツした岩壁と錆びついた鉱石運搬用のレールを照らしていた。


「古い植民地時代の探査地図によれば、このトンネルは元の鉱山ステーションの最下層のメンテナンスダクトに繋がっているはずだ」ライトが、手首のホログラムスクリーンでデータを確認しながら小さく言った。「この道を進めば、マキが言っていた地熱排熱ダクトへの入り口を見つけられるだろう」


「シッ」マキが、彼を黙らせるように手を上げた。彼女の二色の瞳が、闇の中で細められた。「音がする。金属の、微かな音が、前方から」


二人は即座にライトを消し、壁際の闇に身を潜めた。ライトはサプレッサー付きのピストルを、マキは音もなく高出力のエネルギーカタナを抜いた。


その音は徐々に近づいてきた。そして、トンネルのカーブから現れたのは、連邦の偵察ドローンだった。それは空中に静止し、青いスキャナーの光がゆっくりと周囲を薙いでいた。墜落した船の生存者を捜索するために送り込まれたのだ。


それが彼らを見つけるよりも早く、マキが豹のように闇から飛び出した!彼女は低い重力を利用してトンネルの壁を蹴り、ドローンの頭上へと跳躍し、そして急降下した。


ザクッ!


彼女の刃が、ドローンの外殻を貫き、中心核まで正確に達した!それは警報を発する暇もなく一瞬痙攣し、やがてスキャナーの光が消え、床に墜落した。


「片付いた」彼女が平坦に言った。しかしその時、ライトの通信機に、暗号化されたノイズ混じりの信号が入った。


**<ライト…聞こえるか…こちら、ライラ…>**


--- **月の反対側、鋭い水晶の谷にて** ---


ライラ、ギデオン、そしてサイラスは、絶望的な戦いの真っ只中にいた。彼らは、殺戮ロボットの群れと連邦の哨戒艇に、包囲網の中へと追い詰められていた!


「弾が切れそうだぞ、クソッ!」ギデオンが、崖を登ってくるロボットに重機関銃を乱射しながら叫んだ。「いい遮蔽物がなけりゃ、あと5分でミンチだ!」


「今、作ってやる!」彼はそう言うと、設置していた爆弾を起爆させた!ドォン!爆発は巨大な岩棚を崩落させ、彼らが弾丸を避けるための一時的な壁となった。


「ゴライアス!北西!距離500!」サイラスが、遠くの崖の上の狙撃ポイントから、落ち着いた声で報告した。彼はスコープを覗き込み、「光学システムを潰す」と呟いた。彼の音なきライフルから放たれた高速エネルギー弾が、ゴライアス戦闘騎の「目」を正確に撃ち抜き、それは狂ったようにデタラメに発砲し始めた。


「時間よ!」携帯ハッキング装置にかかりきりだったライラが叫んだ。「ドローンのメンテナンスシステムに侵入したわ!奴らのファームウェアは思ったより古かった!脆弱性を見つけた!」


彼女は最後のコマンドを打ち込んだ。「ドローン制御サーバーをオーバーロードさせる。今よ!」


--- **地下トンネルにて** ---


**<…脆弱性…発見…ドローンネットワーク…オーバーロード…させる…隙間…作る…備えろ…>**


ライラからの信号は途絶えたが、ライトは即座に理解した。「奴らが、我々に機会を作ろうとしている」彼はマキに言った。「ライラが、奴らの地上防衛システムを一時的に混乱させるつもりだ。それが、我々の唯一のチャンスだ」


彼は再び設計図を開いた。「地上の混乱が始まった瞬間に、あの排熱ダクトにたどり着かなければならない」


マキは、決意に満ちた眼差しで頷いた。「了解した」


今や、何十キロも離れた場所に分断された「幻影ファントム・ストライク」チームが、不可能を可能にするために、再び連携しようとしていた。彼らは、災厄を、反撃の好機へと変えようとしていたのだ!


---


**<「オーバーロード成功!全地上防衛システムが90秒間、機能不全に陥る!今よ!行って!行って!行って!」>**


天の声のように聞こえるライラの声が、コムリンクに響き渡った。古い鉱山トンネルに隠れていたライトとマキは顔を見合わせ、頷き、同時に飛び出した。


彼らは、その90秒間の混沌を最大限に利用した。マキが記憶していた地図に従い、入り組んだ通路や換気ダクトを駆け抜けた。地上から響く爆発音と銃声が、彼らの足音を完璧に覆い隠した。


ついに、彼らは使用されていない地熱排熱ダクトにたどり着いた。それは、イオン・キャノンステーションの中心部へと続く、巨大な金属のシャフトだった。


「着いた」ライトは短く言った。「ここからが、本番だ」


二人は、信じられないほどの速さと静けさで、暗く、熱気を帯びたシャフトを登り始めた。


--- **デュオの戦闘シーン** ---


彼らは床の通気口から姿を現し、ステーション最下層の巨大なメンテナンス室へと侵入した。そして、彼らが姿を現した瞬間、警報を受けて配置転換中だった連邦の警備兵が、彼らを発見した!


「侵入者だ!そこだ!」


十数人の兵士が、一斉に彼らに銃口を向けた!


ライトとマキは考える暇もなく、通気口から飛び出し、反射的に背中合わせになった。死の嵐の中心核と化して。


これこそが、二人の真価が解き放たれる場面だった!


**ライト**は、重々しい錨となった。彼は手にしたライフルで、冷静かつ正確に射撃した。彼の一発一発は、デタラメに撃つのではなく、中距離の敵の急所へと、断固として突き刺さった。彼は、自らの周囲に「キルゾーン」を形成した。


一方、**マキ**は、その錨の周りを渦巻く嵐だった!彼女は超人的な速度で動き、二丁のピストルで近距離の敵を撃ち、そして、誰かが間合いに侵入してきた瞬間、彼女の高出力エネルギーカタナの刃が、美しく閃き、一瞬で敵の命を刈り取った!


彼らは、言葉を交わすことなく、完璧に連携して戦った。ライトが遮蔽物から撃とうとしている兵士を見つけると、彼はその遮蔽物に制圧射撃を行う。そして次の瞬間、マキがその兵士の隣に亡霊のように現れ、仕留める。マキが刀でプラズマ弾を弾き、ライトがその隙を突いて弱点を晒した敵を撃ち抜く。


それは、美しくも恐ろしい、死の舞踏だった。


最後の兵士が倒れる間際、最後の力を振り絞って壁の警報ボタンを押した。ウィー!!!ウィー!!!ウィー!!!最高レベルの警報が鳴り響く。今や、彼ら二人の存在は、ステーション全域に知れ渡った。


「かくれんぼは終わりだ!」ライトは叫んだ。「先に進むぞ!」彼は、彼らと主通路を隔てる巨大な防爆扉に、徹甲爆弾を設置した。「離れろ!」


ドォォォン!!!


鋼鉄の扉が爆破され、引き裂かれた。ライトとマキは銃を構え、開かれた隙間へと足を踏み入れた。


--- **絶望の壁** ---


そして、全てが静止した。目の前に現れた光景は、地獄を幾度となく経験してきた彼ら二人でさえ、背筋が凍りつくものだった。


そこは、広く、明るく照らされた主通路。


そして、その通路には、静かに彼らを待ち構える、**人間の壁**が立ちはだかっていた。

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