表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/13

第五話 「神社の試練」



 古びた神社の社殿に足を踏み入れると、空気がひんやりと冷たく感じられた。

 木造の柱には、狐面と同じ魔方陣の紋様が刻まれ、微かに光を放っている。


 「……ここだ」

 紅の右目が面越しに光る。

 面が微かに震え、囁く声が耳に届く。

 ――力を解放せよ。血を流せ。

 呪いの面の声。静かな社殿に響くその囁きに、胸の奥がざわつく。


 リクトが紅の肩に手を置く。

 「落ち着け、紅。無理に使う必要はない」

 だが、面はすでに自分の意思を超えて動き出していた。


 突如、社殿の床が光り、魔方陣が輝き始める。

 黒い霧のような影が浮かび上がり、紅を包み込む。

 心の奥の恐怖や怒り、孤独が形を持って襲いかかる。


 クロが咆哮し、紅の前に立ちはだかる。

 「……守る」

 その強い意思が紅の心を一瞬落ち着かせた。

 リクトも深呼吸をして、落ち着いた声で呼びかける。

 「紅、自分を信じろ。面に飲まれるな」


 紅はゆっくり目を閉じ、狐面の右側に触れる。

 面の熱と囁きに押されそうになるが、自分の中の優しい感情――孤独で弱いけれど確かな自分――を思い出す。


 すると、面が急に震え、囁きが止まった。

 黒い霧は霧散し、社殿は再び静寂を取り戻す。


 「……やった」

 紅の声は小さかったが、確かに自分の力を制御できたことを実感していた。

 面の呪いはまだ消えていない。だが、自分がただ振り回される存在ではないことを、初めて知った瞬間でもあった。


 リクトが微笑む。

 「これからが本当の旅だ。俺たちが一緒なら、きっと乗り越えられる」


 紅は頷き、クロと共に社殿を後にする。

 次の町、次の手がかり。癒しの面を探す旅は、まだ始まったばかりだった。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ