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召しませ神様おむすび処〜メニューは一択。思い出の味のみ〜  作者: 夜霞(四片霞彩)
縁あれば千里にして、縁と浮き世は末を待て

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第56話

「セイと会った時に審神者の素質を持っていると言われたのだったな」

「そうです。自分でも調べてみましたが、審神者が神の代弁者ということ以外は何も分からなくて……。一体どんな存在なんですか?」


 蓬にはおむすび処までの道中でセイと会って話したことや話した内容を伝えている。その中でセイから蓬の審神者になるように勧められたことを話していた。蓬も審神者については具体的にどういった存在か知らないということだったので、神同士の伝手を使って審神者とは何か調べると約束してくれたのだった。

 莉亜も自分なりに調べてみたものの、やはりセイが言っていた「神と人の間に立つ神の代弁者」ということ以外は何も分からないままだった。ただ日本の歴史書には、度々「審神者なる者」が登場しているようなので、神代の時代には当たり前のように存在していたのかもしれない。


「お前の言う通り、審神者というのは人と神の間に入って、神の言葉を人に伝える代弁者だ。場合によっては、審神者の身体を媒介にして神を降ろす。神は人の前に姿を現せないからな。そして審神者にはもう一つ、神々にしか知られていない役割がある」

「どんな役割ですか?」

「自身を審神者に選んだ神の代行者として世界に干渉する役割だ。神の半身とも言うべき信頼を置かれた存在――相棒とも言えるだろうか」


 蓬は顎に手を当てると、言葉を選ぶように説明してくれる。

 

「神というのは人間が住む世界においては制約が多く、自由に身動きが取れない。特に上位に位置する神ほど周囲に大きな影響力を与えている分、祀られている場所から迂闊に動けない。神が離れるとその土地や人に変化が生じるからな。神の代わりに世間を見聞きする者が必要となる。神の言葉を伝える口と、神の手足となって動いてくれる存在が……。その役割を審神者に代行してもらう。神と金蘭の契りを結んだ人間に」

「神使とは違う存在なんですよね?」

「神使は神の眷属だ、人の世に干渉は出来ない。だが審神者は人の世に直接関わることが出来る。神や神使と違って、人の世の理を犯すことはない」


 つまり蓬の神使であるハルのように、神使は神の使者として自由に人の世と蓬たちが住む世界を行き来できるが、人の世で何かをすることは出来ない。あくまでも傍観者の立場に徹しなければならない。対して、審神者に選ばれた人間は神の代わりに人の世に直接行動を起こして、神の思うままに人の世を動かすことができる。例えるのなら、実行者といったところだろうか。


「お前が審神者と知って合点がいった。どうりで警戒心が強いはずの切り火たちが懐いているわけだ。審神者は神やあやかしから好かれるからな。良くも悪くも……」

「そういえば、最初にお店に行った時も同じことを言っていましたね。切り火たちが心を許しているって。それって珍しいことなんですね」

「切り火たちに限らず、力の弱い神やあやかしたちは、身を守るためにも常に用心している。強い者たちに狙われ、襲われないように。こう見えても俺も最初の頃は訝しまれて、なかなか心を許してもらえなかった。審神者の素質を持っているというだけで、こんなにも扱いが違うものなのか……」


 その時のことを思い出して自信を失くしたのか肩を落としてしまったので、莉亜は慌てて否定したのだった。

 

「偶然ですよ。気を落とさないでください。ところで蓬さんは必要じゃないんですか? 自分に仕える審神者を……」

「俺か? 俺は下位どころか末端にいる神だ。特に信仰もされていないから、どこかの地に縛られていることもない。審神者がいなくても自分でどうにかできる」

「どうにかって……。力がない状態でセイさんを探そうとしているのに?」

「これから徐々に力を取り戻していけばいい。俺一人で充分だ。人としての生活があるお前を巻き込みたくない」


 いつものように付き離そうとしたので、莉亜は蓬に近づく。はっきりとしつつも、落ち着いた声で自分の想いを口にしたのだった。

 

「巻き込まれるんじゃなくて、巻き込まれたいんです。私だって蓬さんとセイさんが再会できることを願っているんです。審神者としてそのお手伝いをさせてください」

「お前が? セイに会って、おむすびの作り方を聞いてきただけだろう」

「それだって、立派な審神者の役割だと思いますよ。蓬さんとセイさんの橋渡し役です。他の人にはきっと出来ないと思います」

「それは……」


 迷っているのか口ごもってしまった蓬に、莉亜は自ら近寄ったのだった。


「私を審神者に選んでください! ()()()()()の蓬さんっ!」


 その言葉に蓬はハッとした顔をして目を見開く。莉亜を通して誰かを――おそらくセイを、見ているのだろう。口元が緩みそうになったのか、慌てて手で口を押さえて笑みを隠すと、あからさまに目を逸らしたのだった。


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