表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/29

ep6 密室誘拐

 代わりに私が口を開いた。

 

 「密室、ですね」

  

 楓先生は言った。

 

 「そうだね。密室の誘拐なんて聞いたことないが、カードキーがないと動かないエレベーター、もちろん玄関ドアも開かない。そして痕跡も残さず霞ちゃんを連れ出す手口。もっと調べないといけないことがあるが、今のところ密室だと言っていいだろう。久美子さん、マンションのセキュリティ管理者には問い合わせましたか?」

 

 「はい。異常はなかったそうです」

 

 「ありがとうございます。よし…」

 

 楓先生は久美子と和博に向かって言った。

 

 「表舞台の人間が、裏で何やってるかなんて誰にもわかりません。久美子さんが扱っていた六本木のチンピラの件、無関係ではないかもしれないので、今から調べに行きます。夏樹ちゃん」

 

 楓先生に呼ばれて、私は「はい」と反射的に応えた。

 

 「警察に、柳沢魔法使いの名前を出して、六本木の件について調べたい旨を伝えてくれ。竹野内刑事に繋げてくれると尚いい。武力行使も辞さない旨も忘れずに」

 

 楓先生はそう言うと、スタスタと玄関まで歩いて行った。

 

 私は指示を受けて親指と小指を立て、親指の方を耳の辺りに近づけた。そして「警視庁、竹野内刑事に」と言った。呼び出し音がしばらく続いたのち、眠そうだが渋い声で「はーい」という声が聞こえた。竹野内刑事だ。

 

 「周防魔法事務所の草薙です。柳沢魔法使いの件で今柳沢さんのマンションにいるのですが」

 

 そこまで言うと、竹野内刑事は「嬢ちゃんか」と言った。

 

 「柳沢というと、例の赤ん坊誘拐の件か?」

 

 「はい。今捜査が手詰まりでして。今から六本木に向かうところです。柳沢魔法使いの扱ってた案件です」

 

 「柳沢さんが担当してた事件か。たしか六本木で違法魔法使いが占拠してるっていう」

 

 「はい。これから向かおうと思いまして。それで武力行使の許可をいただきたく」

 

 私がそう言うと、竹野内刑事は「はぁ」とため息を漏らした。

 

 「周防の嬢ちゃんが魔法を使わないなら許可する」

 

 「魔法なしで制圧しろと?それでは私達が危険です」

 

 私は楓先生に両腕でばつ印を示した。楓先生が仕方なさそうに右手で⚪︎印を送ってきた。

 

 「周防の嬢ちゃんのために何人国選が動くと思ってるんだ?払う金もないだろう?」

 

 「今回は前金で1億もらってます」

 

 「それは自分たちの為に使え。六本木の件は草薙の嬢ちゃんいればなんとかなるはずだ」

 

 「はっきり言って自信ありません。楓先生が動くならともかく、あの人動きたくない人なので」

 

 竹野内刑事は「何言ってんだ」と言いながら続けた。

 

 「嬢ちゃんが警視庁に出稽古に来た時、警視庁捜査一課の猛者達を全員拳一撃で病院送りにしただろう?あの時の嬢ちゃんすごかったぜ。まるで鬼が地獄から飛び出してきたようだった。おかげで仕事はどん詰まりになったけどな」

 

 私は恥ずかしくなって、赤面していたと思う。「若気の至りです」と小声で答えた。

 

 「だから心配するなって。強行調査の件は申請しておくから、気張らず行ってきな。魔法使い相手だろうと、嬢ちゃんなら一撃粉砕さ」

 

 その後一言「じゃーな。頑張れよ」と竹野内刑事は言って強引に電話を切った。私はどうにも気が収まらなくて、立てていた小指と親指をしまい、拳を握った。この拳でどうにかなるのか。考えていると、玄関から「夏樹ちゃん!」と呼ばれたので振り向いた。楓先生だ。

 

 「竹野内刑事からは許可もらえたかい?」

 

 私は両の掌を上にして掲げてみせた。

 

 「申請はしてくださるみたいです。楓先生、魔法は使えませんが、体術なら使ってくれますよね?」

 

 訊くと、楓先生は嘆息して靴の履き直しを始めた。

 

 「私が魔法の行使以外で動くとでも?」

 

 「はいはい。わかってました。私がやります。そのかわりちゃんとバフかけてくださいね」

  

 「その必要はないだろう。夏樹ちゃん自身がわかってるはずだ」


読んでくださってありがとうございます!

よろしければブックマーク、リアクション、星などつけてくださると小躍りします。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ