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ep 54 神の御許へ②

 伊勢神宮の内宮は常に神聖な空気を纏っているが、特に正宮は強い力を感じる。町中に腕を掴まれている男も感じているようで、じっと正宮を見つめている。

 私は目を閉じ、これから発する言葉を頭の中で反芻した。相手は天照大御神様。日本の頂点たる太陽神。

 なのに__

 

 (慣れないんだよな…)

 

 敬意を持っているからこそこう呼びたくない。しかし本人が呼んでくれと仰るので仕方ない。

 目を開き正宮に向かって出来るだけ明るい声で。

 

 「天ちゃん。来たよ」

 

 二人が驚いた顔をしているのが気配でわかる。気持ちはわかるんだ。私も最初はそんな気持ちだった。

 

 私の声に呼応して正宮前に天から光の柱が降ってきた。地面につき光はどんどん集まっていく。そして光が人型を成すと、腰まで長く伸ばした黒髪に白のワンピースの少女が現れた。

 

 「かえちゃん、久しぶり!」

 

 穏やかで親しみやすい顔の美少女がにこやかに言う。

 

 「お久しぶりです。変わりはありませんか?」

 

 「もう、敬語はやめてって言ったでしょ」

 

 そうだった。私はこほんと咳をし、

 

 「しつれ…いや、ごめんよ」

 

 「いいよ!わたしとかえちゃんの仲だし」

 

 天ちゃんはにこにこしながら鈴のように笑った。

 

 「精霊召喚…ばかな…!」

 

 チラリと男に目をやると、男は目を見開いて開いた口が塞がらない様子だった。何か勘違いをしているようだが、目の前の少女は男が思っているようなものではない。彼女は天照大御神ではあるが天照大御神の”力”ではないからだ。

 

 「わたしは元気だったよ。でも高天原はちょっと大変かな。かえちゃんが来たのもうちの事情と関係ありそうね」

 

 「ああ。そのことで少し話があるんだ」

 

 私は息を荒くしている男の背中をトンと押して天ちゃんの前に突き出した。

 

 「この男についてだが__」

 

 私は男の仲間が”洗脳”の力を持つ精霊を召喚をして何かを企んでいることを話した。久美子さんが一度精霊を保護したことは一応伏せておいたが、当然天ちゃんにはお見通しだろう。天ちゃんは胸の前で軽く拳を握って「うーん」と唸った。

 

 「今その事を知ってるのはかえちゃん達だけかな?」

 私は首を振る。

 「いや、助手も知ってるよ」

 天ちゃんが首を傾げた。

 「助手?そういえば弟子をとったって言ってたね。今度紹介してよ!」

 「この件が終わったらね」

 天ちゃんは満足そうに頷いた。

 

 「かえちゃん、わかってると思うけど、この件はあまり人に知られちゃいけないよ。知れ渡ってしまうと大変なことになるから。これは確か。あと高天原のこと、実際どう混乱してるかとか話せないけど、うちのことは確実に現世に影響する…うん、たぶんもう影響してるね」

 

 天ちゃんは男に目をやると少し険しい顔つきになり、その顔のまま私を見据えた。

 

 「この子、利用されてる」

 

 「やはりそうか。何を訊いても”言えない”の一点張りだったから、もしかしてと思ったんだ」

 天ちゃんは「うん」と頷くだけで、それ以上この男については話さないようだった。

 


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