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ep 51 無慈悲な伊弉諾

 飛び込もうとしたその時、男の魔力が辺りを染めた。かなりの魔力量だ。発動までにどれほどかかるかわからない以上、直様殴りかかるのはやめておいた方がいいかもしれない。男との距離は約3メートル。何が来てもギリギリ避けられる距離だ。

 「疑わしきは殺すべきだと考えていたが、アレを知っているなら…俺の思いは確信に変わったぜ…。もう一人共々消させてもらう!」

 なんだ。ベラベラと喋るなら飛び込んでもよかった__と考えていたら、男の頭上に多数の小さな火球が現れた。ざっと見て200個はある。

 「町中さん、攻撃が来ます!構えてください!」

 男から視線を外さないまま大声で言うと、下の町中が「了解した!」と返してきた。師匠の友人ならなんとかするだろう。

 火球が一斉に発射された。しかし私を目掛けてきていない。あらゆる方向へと散っていっている。全方向から私達を射抜く気だ。

 (ならば…)

 私も魔力を展開して分身を20体作り散開させた。分身達と同じように私も走り出し、家の屋根から屋根へと飛び回る。走りながら男に近づけないか観察したら、男は自身の体の周りにも火球を展開しているのが見えた。迂闊に近づいたら射抜かれる恐れがある。

 (夏樹ちゃんなら難なく突破できる場面だ)

 不出来な弟子の真面目そうな顔を思い出して笑みが溢れた。

 (あの子は私を核兵器か何かと思ってるかもしれないが__)

 足を止め、上空を見据えた。

 (”こういうの”は私の得意分野だ)

 銃弾のスピードで襲ってくる火球を最小の動きで躱しながら男の方へと走る。分身達も同様の動きで定位置についたようだ。

 (包囲しているのは貴方だけじゃないんだぜ)

 左手親指に嵌めたリングに魔力を注ぎ、銃を顕現させた。夏樹ちゃんの伊奘冉と対の銃、伊弉諾。伊弉諾のカートリッジには敵と見做した相手の魔法に呼応して有利魔法を生成する機能があり、敵が複数魔法を使用していても対応できるようになっている。

 私が伊弉諾を男に向けると、分身達も伊弉諾コピーを取り出し構えた。男は今になってやっと気付いたようで、火球を自身の体の周りに集中させた。火球で私の攻撃を防ぐ気だろうが、もう遅い。

 「チェックメイトです」

 20体の分身と私は一斉に伊弉諾のトリガーを引いた。飛び回る火球を撃ち抜くのは至難だが、止まっている的を射るのは容易い。銃声の嵐が巻き起こり、静かだった朝の空気に響き渡る。男を覆っていた火球は水属性の弾丸によって全て消え失せた。

 「まだだ!」

 男は叫んだが、分身の一人が男の左脚を撃ち抜いた。男は苦悶の表情を浮かべて崩れる。

 私は分身を消し、男に歩み寄って銃口を向けた。

 「安心してください。殺しはしません。私もあの精霊を手に入れたいのでね」

 男は憎めしそうに私を睨んだ。

 「お前ェ…精霊を何に使う気だ…」

 私は答えず、右脚を撃ち抜いた。男が叫び声を上げる。

 「貴方に質問する権利などありませんよ。私の質問にだけ答えてください。次は耳を撃ちます」

 銃口を右耳に向け、続ける。

 「貴方は召喚術師ですか?」

 「……」

 右耳を撃ち抜いた。男は耳のあった場所を押さえて苦鳴を上げる。

 「答えてください」

 「ち…がう…」

 やはりか。この男は召喚術師の身内か、或いは雇われたヒットマンか。後者の場合精霊のことを聞かされているはずがないので、おそらく前者だろう。召喚術師本人ではなくても、身内ならいろいろ情報を持っているに違いない。

 (核心を突いてみるか)

 「なんのために精霊を召喚したのですか?」

 私の低い声に、暫しの沈黙が朝を支配した。


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