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ep4 事件

 恵比寿は初夏の空気に満たされていた。太陽の熱を思う存分吸い取ったアスファルトの上は目玉焼きが焼けるのではないかと思わせるほどの熱がありそうではあり、身長150センチメートルの私の頭も蒸されたような夏の暑さで覆われていた。

 

 JR恵比寿駅から動く歩道を歩いたところまではいいのだが、そこから先は歩くのが辛いと私は思った。そんな私の提案で、アメリカ橋を渡った先にある恵比寿ガーデンプレイス内のブルーシールカフェでアイスクリームを食べることになった。久美子がここは私が出しますと言うので、私はピスタチオのアイスクリームを、久美子はバニラを食べた。楓先生は借りを作りたくないという理由で断った。

 

 久美子のマンションはくすの木通りを、アメリカ橋公園を左手に見てまっすぐ歩いた先にあると言うことだった。久美子のマンションへ向かう道すがら、久美子に起こった事のあらましを聞いた。

 

 事件が起きた1週間前の昼過ぎ、久美子は事務所で仕事をしていたそうだ。それは職員も見ていたので証言は取れるとのことだった。六本木地下を根城にしている不良魔法使いたちの取り締まりの書類を片付けている最中だった。そんな久美子の元へ夫の柳沢和博から電話があった。内容は娘の霞が誘拐された、というものだった。和博は夕飯の買い出しへ行っており、帰ってきたら部屋が荒らされていたというのだ。なぜ誘拐と断言できるの?と久美子は聞いたら、和博は書置きがあったと伝えた。

 

 それから久美子は和博と相談して、警察へ届け出ることにした。警察は久美子が一流の魔法使いだと知り、素早い初動だった。書置きの筆跡から、全国の役所に問い合わせて筆跡鑑定を行った。仕事が早く、3日で結果が出たが、あらゆる届出の書類と比べても書置きの筆跡に照合する書類はなかった。警察はそれから防犯カメラのチェックを行ったが、不審な人物も霞と思われる人影も映ってなかったという。久美子自身も魔力の残滓を辿って調査してみたものの、マンションから先を辿ることはできなかったそうだ。

 

 私と楓先生はマンションの入り口に着いた。40階はありそうな高層マンションだ。魔法使いが住んでいるとすれば納得の豪華さだった。楓先生は「いつかこういう場所に住んでみたいものだね」などと笑いながら中へ入った。エレベーターの階層を押す前にカードリーダーに久美子がカードキーをかざして、35階のボタンを押した。カードリーダーがないとエレベーターも動かない設定になっているようだった。3511号室に案内され、私達は中へと入った。警察が入った痕跡などは微塵もなく、部屋は綺麗に整理整頓され、掃除も行き届いているようだった。


 私達が玄関で靴を脱いでいると、奥から「おかえり」という少し低めの声が聞こえた。憔悴しているのだろう、声に覇気がなかった。久美子が「ただいま」と返した時、リビングのドアから和博がひょっこり顔を覗かせた。

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