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ep 47 伊勢神宮にて

予約したと思い込んでいたのですが、予約できていませんでした。

遅くなりました。

 伊勢市、おかげ横丁の朝は以前来た時よりずっと静かだった。観光客はまばらで、気合いの入った参拝者がちらほらいるだけだ。まだ7時回ったところだからな、と時計を確認しながら一人ごちる。

 大島の事務所から転移してきたのでかなりの魔力を消費したが、仕事に支障はないだろう。念の為全身に巡る魔力の流れを確かめる。…大丈夫そうだ。

 

 私はスーツケースを引き、内宮の方へと歩き出した。浩志の情報から、精霊召喚が行われたのは伊勢神宮の内宮ではないかと踏んでいる。

 赤福の本店や神棚屋を通り過ぎ、鳥居の前にたどり着いた。この先は神域というだけあって強い力を感じる。私は鳥居の前で深く礼をして、なるべく左寄りに歩み入った。少し歩くと、静かな森が迎えてくれた。多くの木が樹齢数百年はいっている。天照大神様を祀るに相応しい神聖な空気だ。私は深く息を吸った。東京の空気とはまるで違う。ここで凄惨な儀式が行われたとは思いたくはないが、おそらく行われたのだろう。微かに特殊な魔力の残滓を感じる。

 

 魔力の残滓を辿って神厩に着いた。ここは内御厩か。私は神宮について詳しくないため、神馬がここにいることはあるのだろうかと考えた。召喚魔法発動時に神馬がいたとしたら、その力で精霊召喚を阻止していただろう。私はかぶりを振り、仕事に集中することにした。

 しゃがんで右手を地面につけてみた。痕跡は上手く隠されているが、なんとか召喚された精霊の性質を読み取ることはできそうだった。私は精神を研ぎ澄まし、目を閉じた。感じたのは…悲しみ。この地に祀られし神の悲しみ。悲しみの真意を探るべく精神を深く潜らせると、人の魂の声が聞こえた。何人の声なのか集中すると、13人だと分かった。ここで亡くなったわけではなさそうなので、術師はどこか別の場所から魂を調達してきたのだろう。ここ最近の新聞では13人もの死者が出たというニュースはなかった。この人達はいったい何者なのか。

 

 声の内容をよく聞いてみると、全て自分の子供や恋人、配偶者を支配するような怒号の嵐だった。全員所謂DV加害者なのかもしれない。”支配”がキーワードなのだろうか。

 精霊召喚において生贄になる人間の意思は重要だ。その意思が精霊の性質を決定づけると古い文献で読んだことがある。ここで召喚された精霊は”支配”のための精霊__。

 (…本当にそうなのか?)

 人は人を支配するためにDVするのだろうか。寧ろ、”洗脳”なのではないかと頭によぎる。洗脳だと仮定して精霊の性質を探ることにした。

 (当たりだ)

 術師の魔力で編み込まれた魔法陣の残滓から、洗脳の力を呼び出した跡を見つけた。強大な力だ。もしこの力を使役する者が混乱を望んだら、世界の在り方が変わってしまうかもしれない。

 (こんな力を欲している人間がどんな奴なのか、仮説を立ててみる必要がありそうだな)

 他にも何か残っている可能性がある。私は立ち上がり、内宮をぐるりと周るべく歩き出した。

 

 「そこのちびっ子」

 

 …声をかけられたのか?

 

 振り返ってみると、初老の男性が立っていた。白髪混じりの長髪を後ろで結んでいて、体はかなり鍛えてあり、スーツの上からも強靭そうな筋肉の盛り上がりが見て取れる。こういうサラリーマンも最近は増えてきているように感じた。

 「私はちびっ子という名ではありません。何か?」

 

 「名前を聞かせてもらえるか」

 

 男性の目に暗い何かが見えた。

 

 (関わりたくないな)

 

 適当に名乗って誤魔化しておこう。

 

 「神崎夕姫です。それでは」

 

 軽く頭を下げて、私は仕事に戻ることにした。

 

読んでくださりありがとうございます。

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