ep 44 世界魔法戦略情報分析室副室長
年内最後の投稿です。
今年一年ありがとうございました。
放課後、私達は校門に集まり新宿駅から丸の内線に乗った。まだ会社員の帰宅ラッシュには早いので、座席こそ空いていなかったが余裕を持って4人で立っていられた。私含め4人とも学校で支給される戦闘服を着ている。戦闘服といっても軍隊のような物々しいものではなく、純白のコートと膝上と膝下でセパレートしている白のパンツだ。この装備には簡単な結界魔法が施されており、ある程度の魔法攻撃なら防ぐことのできる仕様となっている。しかし初夏であるため、この服は暑い。流水も真も電車の中の冷気を服の中に取り入れるように襟元をパタパタしている。茜にいたってはコートの中に魔法で作った氷を入れているが、服が濡れて「きもちわるい」とゲンナリしていた。この子は地頭はいいのにアホなのだ。周りの人も私達が魔法使いであるということを認識しているからだろう、初夏にコートという装いを特に気にしていないようだった。
霞ヶ関で電車を降り、魔法省の前に着いた。周りの現代的なガラス張りのビルとは対照的に、魔法省の建物は国会議事堂のような重厚感を感じさせる。ここの地下には魔法に関わる膨大な資料が眠っていると楓先生に聞いた。茜と流水と真はどこか緊張した面持ちで建物を見上げていた。
「入ろう」
私が言い、みんな頷いた。
建物の前にいた警備員に私達4人は桜ヶ丘学園のIDを見せ、楓先生の仕事で秋田竜司に会いに来た旨を伝えると、警備員は「失礼」と一言言い、私達に向かって手をかざした。すると私達の体が青色に発光し、それを見た警備員は納得したように頷いて「どうぞ」と道を開けてくれた。今の光はおそらく私達が嘘を言っていないかどうか確かめるための魔法だったのだろう。
中に入ると豪奢ではないが優雅であると言っていい、新宿御苑が丸々入りそうな空間が広がっていた。魔法で室内を拡張しているのだろうか。吹き抜けになっており、フロアの中心には円柱型のエレベーターがある。1階は受付のみで、2階からはぐるりと廊下が通っていて、一定の間隔を置いて無数のドアが壁に張り付くように設置されている。
流水は「すげぇ」を連呼していて、真も「ここが魔法省の中かぁ」と物珍しげに見回している。茜は背筋を伸ばしながら「エリートになった気分だねー、夏樹ー」と、緊張を隠し切れないながらも少し顔が紅潮していた。私も「そうだね」と笑顔で返した。みんなからはどう見えているか知らないが、私も多少緊張と興奮を感じていた。
私達が受付の前に立つと、受付嬢が「こんにちは」と挨拶してくれた。
「そのコートは桜ヶ丘学園の生徒さんですね。ご用件をお伺いします」
私は軍人が敬礼をするようにしゃんと立ち直して、楓先生に教えてもらった通りに言った。
「お世話になっております。本日世界魔法戦略情報分析室副室長の秋田竜司様と面会のお約束を頂いております、魔法使い周防楓の助手、草薙夏樹と申します」
受付嬢はにっこりと笑った。
「草薙様ですね。証のご提示をお願いします」
証…あれのことか。
私は首から下げていた楓先生のネックレスを外して受付嬢に渡した。受付嬢はネックレスをまるで古物商が品を鑑定するかのように繁々と見て頷き、ネックレスを返してくれた。
「確かに、周防魔法使いのもので間違いないようですね。秋田様」
『今行くよ』
急に頭の中に声が響いたので私は吃驚した。みんなも聞こえたようで、不思議そうにキョロキョロしている。
それから5分ほど待っていると、エレベーターから細身の男が出てきた。髪は黒のオールバックで、紺色のスーツに赤いネクタイをしている。少々派手な気がするが、薄味の顔でバランスを取っているようにも見えた。
「君が草薙さんだね。初めまして。僕は秋田竜司だ。楓から話は聞いているよ。周りの子はクラスメイトかな?」
私は「はい」と頷いた。
「楓によるとあまり大勢に話を聞かれたくないそうだし、移動しようか。ついておいで」
そう言うが早いか、竜司は踵を返しスタスタとエレベーターの方へと歩いて行った。私達も急いで後を追った。
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今年ももう終わりですね。
皆様、良いお年を。




