ep 43 高校生調査団始動!
昼休み。
各々昼食を持って屋上に集まった。流水は唐揚げ弁当で、意外にも自身の手作りだそうだ。真は購買の焼きそばパン。少食なのは知っていたが、高校生の男の子がそれだけで足りるだろうか。筋肉質な流水とは対照的に細身の真にはピッタリかもしれない。でも、ちょっと心配になる。私と茜は通学路にあるお店のクラブサンドウィッチ。別々に登校しても買うものは一緒のようだ。
屋上にはベンチなどはないが、フェンスの内側に少し段差があるので、そこに横並びで腰をかけている。もう夏も近いということで、刺すような日差しが私達を苦しめていた。もう30度は超えているかもしれない。何もこんな暑い日に屋上に集合しなくてもいいのではないかと事情を知らない人は思うだろう。私もできれば涼しい場所で話したかった。しかしこれは「今回の事件を知るものはなるべく少ない方がいいから、集まる場所は屋上にしたまえ」という楓先生の注文なのだ。私生活はだらしない楓先生だが仕事になると妥協しないし、それを私にも要求してくる。そしてその要求を飲まないと私自身が大変な目に遭うということは、今までの経験で嫌というほど知っている。暑かろうが、私とこれから事件に関わるみんなにとって仕方ないことなのだ。
雑談も程々に昼食を食べ終えた頃合いを見て、私は今回の事件の概要を説明した。勿論久美子さんのことは伏せた。説明したのは、楓先生から聞き齧った、精霊という神様のような存在が実在していること。禁術によって精霊召喚が行われ、紆余曲折あって召喚された精霊の赤ん坊を知人の魔法使いが保護したこと。その精霊の封印を解いたがために消息不明になってしまったこと。消えた精霊を追って召喚者が接触してくる可能性。そして今回の任務『秋田竜司を訪ね、精霊の居場所を探る』こと。
ざっと話し終えて、みんなの反応を見渡した。茜はというと、いつになく難しい顔で足を組み、顎に手を当てて唸りながら考えている。流水は何を考えているのか、口を開けて空を見上げている。真は今話した内容をメモにとっているようだ。
最初に言葉を発したのは真だった。
「つまり僕達に頼みたいことって、秋田竜司さんを訪ねるのに同行してほしいってだけ?」
私は頷いた。
「そうだよ。でも何があるかわからないし、事情は説明しておいた方がいいでしょ」
私の言葉に流水が空から視線を落とし、こちらを向いた。
「それただの”おつかい”じゃんよ。俺らが行く必要ある?」
「私もそう思ったよ?でも楓先生の命令なの。あの人の話は真面目に聞いておいた方がいい。楓先生は危機察知能力が異常に高いの。これまでもその慎重さがあったから上手くやれてたものなんだよ」
一呼吸置いて、私は想いを伝えるため、目に力を入れて続けた。
「みんなには面倒かけて申し訳ないと思う。でも、手伝ってほしいの。頼れるのはみんなだけだから」
流水と真は真剣な目でじっと私の顔を見つめてきた。
「神様…精霊って言ったか?…を探すのは、世の為人の為ってことになるんだよな…」
流水がよくわからないことを言って、続けた。
「周防さんは別行動なんだよな?」
「うん。召喚された場所が伊勢だっていう情報を得たから、今現地で調査中だよ。召喚魔法の痕跡から召喚された精霊の力の性質がわかるんだって。楓先生曰く召喚自体『碌な目的じゃない』らしいから、まず力の性質を知って、対策を練るんだと思う」
「ちょっといい?」
茜が軽く右手を挙げて言った。
「伊勢で召喚された精霊が、東京で保護されたってことだよね?つまり、精霊がひとりでに東京に来たか、東京に”運ばれた”ってことになるよね。その精霊は赤ん坊だって話だから、たぶん後者。なんのために…そして、”誰に渡すために”運ばれたんだろう。召喚者は本当に自分達の意志で召喚したのかな?私は、召喚者とは別に警戒する人物がいるのかもしれないって思う」
言われてみればそうだ。楓先生は召喚者が追ってくる可能性を示唆したが、茜の考えが正しいとすると、ここ東京に精霊の受け取り人がいるかもしれない。今は手がかりがないから何処の誰なのかはわからない。でも心に留めておいた方がよさそうだ。
「周防先生が帰ってくるまでは私達で調査しない?」
茜が身を乗り出して言ったので、私は吃驚した。そんなこと楓先生に頼まれてない。危険かもしれないし、後で何を言われるかわからない。私は腕を組んで唸った。
流水と真は暫し考え込んでいたが、2人で見つめ合って頷いた。
「元々夏樹が危険な目に遭わない為の俺達らしいからな。精霊ってのも放っておけないし、協力するぜ!それにほら、赤点回避できるかもだしな!」
「僕達は夏樹についていくよ。秋田竜司さんってサーチ系の魔法使いみたいだし、彼の能力で居場所がある程度絞れれば、僕達で精霊を保護できるかもしれないしね」
みんな乗り気だ…。私も覚悟を決めるべきだろうか。もし独自で調査するとなったら後で楓先生に何か言われるのは確実だが、私も楓先生の助手なのだ。後ろめたさよりも役に立ちたい気持ちが勝ちそうだった。
私はひとつ咳払いをした。
「では放課後、各自装備を整えて校門前集合ってことで!」
私が指示を出すと、みんなが一斉に「おう!」と返事した。
読んでくださりありがとうございます。
もしよろしければ、ブックマーク、評価、コメントなどいただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。




