ep 39 精霊召喚
楓先生は久美子さんに関する詳しい情報を話さないようだった。久美子さんが依頼人だからということもあると思うけど、楓先生は普段から私にも余計なことは話さない。浩志には必要のない情報だと判断したのか。
浩志は顎に手を当てた。
「精霊…ですか。そういえば少し前に精霊を召喚した者がいるという情報を得ました。誰が召喚したかまでは分かりませんが、場所は伊勢です。その後どなたかに引き渡されたそうですよ。もし楓さんが仰る精霊が同一のものなら、手がかりは召喚者と召喚場所にあるかもしれませんね」
「精霊界から降りてきたわけではなく、召喚されたんですね。伊勢ですか…確かに伊勢は龍穴のある場所。精霊召喚にはうってつけでしょう。しかし、精霊召喚には大きな代償を支払わなければいけません。消えた精霊は赤子だったので、10人程度の人命が必要だと思われます。行方不明者を探せられればいいのですが、全国にどれだけいるか…」
衝撃発言を聞いた。あの子を召喚するのに人の命が10人も失われたのか。
「誰が…いったいなんの目的でそんなことをしたんでしょうか」
私が訊くと、楓先生はかぶりを振った。
「今はわからない。だが、精霊召喚は古来から碌な目的で行われていない。あの子の召喚も同様だろう。そもそも精霊召喚は禁術なんだ。表世界の魔法使いの仕業じゃないことは確かだ。とにかく、伊勢に行って調べてみるしかないな」
「でも楓先生、私明日から学校があります。楓先生ひとりで行くんですか?」
「ああ。夏樹ちゃんは待機…と言いたいところだが、頼みたいことがある。魔法省の秋田竜司を訪ねて、現世にいる精霊について聞いてくれたまえ。私の名前とこの首飾りを見せれば協力してくれるはずだ」
楓先生が私の掌の上に手を重ねた。重みを感じたので見てみると、楓の葉のチャームがついたシルバーネックレスがあった。
「あと、できるなら学園の友人と共に行ってくれ」
「なんで友達と?」
「精霊召喚には強大な魔力を持った人間が複数必要なんだ。もしかしたらその内の何人かが、あの子が消えたことを嗅ぎつけて追ってくるかもしれない。さっきも言ったように、碌な魔法使いではないだろう。君ひとりでは厳しいと思ってね。戦力になりそうな友人を集めて行ってくれ」
「…承知しました」
私の返事に楓先生は満足そうに頷いた。
「話がきな臭くなってきたな。久々に歯応えある仕事になりそうだ」
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