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ep3 仕事開始!

 「同業のお方、ようこそ周防魔法事務所へ。所長の周防楓です。こちらは助手の草薙」

 

 「柳沢久美子です。目黒で魔法事務所をやってます」

 

 目を潤ませながら久美子が言った。

 楓先生は「ほう」と呟いた。

 

 「一等地で事務所を開いている魔法使いさんが、なぜ私のような大島でしか事務所を開けない貧乏魔法使いを訪ねてくるのか不思議ですが」

 

 「周防さんは事件解決率100%だと伺い、居ても立ってもいられなくて…」

 

 「まさか本当にご依頼ですか?」

 

 楓先生が聞くと、久美子は「はい」と答えた。

 

 「一週間前娘が誘拐されたんです。魔力の残滓があったので魔法使いの仕業だとは思うのですが、他に手掛かりがなくて」

 

 「警察に相談されましたか?」

 

 「はい。防犯カメラや事件に関わっていそうな人物など洗ってもらいましたが、何も」

 そこまで聞くと、楓先生はパンと手を打った。

 

 「ならば他の一流魔法使いに頼まれるのがよろしいでしょう。私はもう魔法使いをやめるんです。草薙に依頼するのであれば止めはしません。ですが、草薙は鈍臭いのでご自身で解決に励まれた方がよろしいかと」

 

 「ちょっと先生!」

 

 楓先生が笑顔を崩さずに酷いことを捲し立てたので、私が慌てて言った。

 

 「株は許していません。真面目に働いてください」

 

 久美子の目は今にも泣き出さんばかりだった。そしてついに両手で顔を覆ってしまった。楓先生は私を見た。私は鬼の形相をしていただろう。楓先生はわざとらしくため息をついた。

 

 「前金で1億、成功報酬で2億いただきます。その条件が飲めないのであれば、他所へ行ってください」

 

 「先生、ふっかけすぎです!」

 

 私が怒鳴ると、久美子が「いいえ」と制した。

 

 「大丈夫です。払います。払いますので、どうか娘を…」

 

 「じゃあ、振り込みよろしくお願いします。今確認しますので」

 

 楓先生が笑顔のまま早口で言うと、久美子は「只今」と携帯を取り出して、楓先生に口座を聞いた。楓先生が答えると、久美子は「振り込みました」と言ったので、楓先生も携帯を取り出して確認した。私も覗き込んでみた。本当に1億円入っている。

 

 楓先生は笑顔をやめ、膝に両肘を置き、目の前で手を組んだ。

 

 「一週間経っているとなると、なるべく早く対処する必要があります。犯人から何か要求とかありましたか?」

 

 久美子は少し考えてから答えた。

 

 「一つだけ。魔法使いをよこせ、と書置きがありました」

 

 「魔法使いをよこせ、か…なるほど。不思議な文面だ」

 

 楓先生は内心ワクワクしているようだった。事件の時はいつもこうだ。

 

 「早速前金分の仕事をしましょう。久美子さん、現場へ案内してください」

 

 そう伝えると、楓先生はスタスタと玄関のドアを開けた。

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