ep 34 真犯人③
楓先生は一旦言葉を区切ると、私達を品定めするかのように見た。
「いいように使ってくれたわけだ。楓らしい」
大河はそう言って、クスリと笑った。
私は楓先生がなぜこのような空想甚だしい内容の話をするかがわからなかった。まるで事の顛末を見てきたかのようで、もし楓先生の話が本当だったらと思おうと、少し気味が悪くなった。しかし、なぜそこまでわかるのだろうか。
「楓先生、質問いいですか?」
訊くと、楓先生は「いいよ」と掌を私に向けて言った。
「どうして霞ちゃんが久美子さんの実の子じゃないと思ったんですか?」
「簡単な話だよ。出産というのは想像を絶する試練だ。君も、私が柳沢宅で時魔法を使った時、霞ちゃんの姿を見ただろう?あれは明らかに生まれてまもない子供だった。もし久美子さんが霞ちゃんを出産したのなら、久美子さんは今も病院で療養しているはずさ。でも久美子さんは休むことなく働いている。おかしいと思わない方が不自然だ」
言われてみれば、たしかに霞ちゃんは小さかった。
「じゃあ、楓先生は最初から怪しいって思ってたってことですか?」
「ああ。でも怪しいと思うだけで、確信があったわけじゃない。目黒に事務所を構え、恵比寿の高級マンションに住まうだけの地位を築いている久美子さんが、病院から赤子を誘拐するなんて暴挙に出るとは思わなかったからね。だから可能性のひとつとして、人身売買組織から買ってきたのかもしれないと考えた。結論を言うと、先ほど説明した通り、この推論は多少なりとも的を射ていた。私は最初六本木のチンピラ達と取引したのではと考えたが、彼らはフードを被った誰かさんから霞ちゃんの存在を聞いたという。しかし、仮にもしその話が本当だとすると、辻褄が合わないんだ。霞ちゃんが柳沢宅から消えたのは、フードの人物…いや、久美子さんが六本木に現れた後だからね」
「待ってください。霞ちゃんが本当に久美子さんの子供だったとして、あの不良魔法使い達が本当のことを言っていたとしたら?」
楓先生はかぶりを振った。
「ありえない。もし霞ちゃんが本当の娘で、あのチンピラ達の手に渡ったのなら、フードで顔を隠す必要なく、問答無用に彼ら全員を殺していただろう。久美子さんが彼ら全員を殺さなかったのは、誰かに聞かれた時、子供は売ったと証言させるためだ。彼らとしても、フードの人物を人身売買の主犯に祭り上げた方が都合が良かったのさ。しかしながら、よくもまぁあんな出鱈目な話が出てくるものだと感心したよ。『子供の誘拐をプロに依頼した。柳沢宅には子供がいる』だったか。あの言葉のせいで結論に辿り着くのが遅れた」
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