ep27 リビングメッセージ
「楓先生!話が違いますよ!」
「仕方ないだろう。状況が変わったんだ。初めてここに来た時には気にしなかったが、今日来て気づいたことがある。このマンションの前の道には車が止められないんだ。車でマンションに入る時は裏の地下駐車場へ行かなければいけない。つまり、犯人は堂々と霞ちゃんを抱えて車まで移動したか、或いは魔法で飛んで去ったか、恵比寿駅から別の場所へ移動したかのいずれかの手段をとったとみえる。でも久美子さんが警察に調査依頼をした際、防犯カメラを徹底的に調べられたはずだから、自ずと1つに絞れそうだ」
私は顎に手を当てて言った。
「車、電車は防犯カメラにひっかかるから、魔法で飛び去ったということですか?」
楓先生は頷いた。
「その通りだよ、夏樹ちゃん。犯人は結界外に出て尚区民の前で魔法を行使し、怪盗よろしくマントを翻しながら堂々と何処かへ飛び去ったのさ。目撃情報が欲しいところだな。そうそう、進捗だったな。久美子さん、学園の方ですが、草薙に学園内を調べてもらいました。特に霞ちゃんに関する情報はなかったようです。六本木での情報は嘘だったんですよ。しかしながら、足取りが途絶えたわけではありません。詳しくはまだ言えませんが、必ず私が犯人の前に案内しますよ」
久美子は胸の前に手を握りしめて、張り裂けんばかりの感情を押し殺しながら言った。
「でも、時間がないって仰っていたじゃないですか。私でも調べていますが、結果が出ません。そんなに悠長にしている暇なんて…」
楓先生は久美子の言葉に被せるように言った。
「魔法使いをよこせ、という犯人のメッセージをお忘れですか?私はこのメッセージについて、いろいろ考えました。魔法使いとは誰を指す言葉なのか。久美子さんでしょうか。それとも他の誰かでしょうか。久美子さんだった場合、直接的な言葉を使うと思うんです。来い、とね。しかしそうじゃない。だとすると、他の誰かということになります。犯人の元に霞ちゃん絡みで駆けつける魔法使いのことです」
「それは…」
久美子がはっとした様子で呟いて、楓先生が頷いた。
「そう。この周防楓のことです。犯人は私達が来ることを知らないだろうと思われるでしょう。でもちょっと考えればわかることです。久美子さんが一流の魔法使いであることは調べればわかることなので、久美子さんが頼りそうな魔法使いは、全国では大阪と神戸に1人ずつ、そして都内では私しかいません。犯人は初めから私狙いなんです。霞ちゃんは餌でしかありません。しかし、私がなかなか来ないとなると、犯人は霞ちゃんをどう扱うかわかりません。久美子さんが調査していることは、犯人にとってはどうでもいいことなのです。私を狙う目的はわかりませんがね。もし犯人の我慢を超えてしまったら、何らかのメッセージを寄越すでしょう。それまでに私が犯人の元へ行くか、そのメッセージが最後忠告でないことを祈るだけです」
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