ep23 ヒント①
毎週月曜更新です。
「そうか!誘拐したのが一流の魔法使いなら、その魔心臓の暴走についても知っている…だから霞ちゃんは無事なんですね!」
「それだけでは霞ちゃんが無事であるという証拠にはならない。何故ならそれを覚悟で殺す事例もあるからだ。でも、私の推理通りなら十中八九無事だ」
楓先生が無事だというのだ。今は信じるしかない。私は買ってきた寿司を楓先生の机に置いた。
「わかりました。まず食べましょう。楓先生のことだから何も食べてないのでしょう?今日は中村屋で安売りしてた寿司です!」
聞くと、楓先生はゲンナリした顔で言った。
「1億入ったんだ。せめて安売りしてない寿司を買ってきてくれないか?」
「楓先生、40億の借金があるの、忘れてませんか?」
「…そうだったな。それで我慢するか」
私達は鰹の寿司をテーブルに置き、2人分に分けた。安売りしていたとはいえ、1人12貫の鰹だ。結構な値段した。楓先生は「久々の寿司だな」と上機嫌になった。その後、「もうちょっとバリエーションが欲しかったな」とポツリと愚痴を言ったので、私は「これしか安売りしてなかったんです。我慢してください」と返した。
「美味しいな。本当に安売り品かい?」
「はい。中村屋は1日経ったら捨てちゃうので新鮮なんです」
私の言葉に楓先生がビクッと反応した。そして箸を置き、顎に手を当てた。
「1日経ったら捨てる、か…」
「どうかしました?」
私が訊くと、ハッと気を取り戻したようにまた箸を持った。
「なんでもない。さぁ、今日は祭りだ!日本酒の用意はいいかい?」
「いや、未成年ですし…」
「黒龍がいいかな?それとも而今…大雪渓なんてのもあるな」
「楓先生、いい加減冷蔵庫を日本酒貯蔵庫にするのやめてください」
私が頬を膨らませて言うと、楓先生はにっこり笑った。
「いいじゃないか。今日はめでたい日なんだ。台所に志野の片口とぐい呑があったはずだ。持ってきてくれたまえ」
「ほどほどにしてくださいよ…」
私は仕方なく台所へ行き、シンクの上の棚に入っていた楓先生のお気に入りである志野の片口とぐい呑を取り出した。そしてふと考えた。楓先生の様子の変貌が不可思議だったからだ。私が中村屋は寿司を1日経ったら捨てると言った時だ。その言葉に何かヒントを得た様子だった。どういう意味なのか。私も少し推理してみることにした。1日がポイントなんだろうと思う。しかし、捨てるとはなんなのか。霞ちゃんを捨てるという意味でないのは確かだ。なら何を捨てるのか。霞ちゃんを見張る人が1日ごとに交代するという意味なのか。考えていたら楓先生が「夏樹ちゃん!何をしているんだい!早く持ってきてくれたまえ!」と叫んだので、推理はまたの機会にすることにした。
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