ep21 彼らの嘘
楓先生には以前からこういうところがある。人を信用しているのか信じていないのかわからないのだ。しかし、楓先生の今の口ぶりから察するに、私のことは幾分か信用してくれているらしい。
「それで、何かわかったんですか?」
「まだ推理段階だよ。何も言えることはないさ」
「わかったことだけでも教えてくださいよ」
私がせがむと楓先生は仕方なさそうに髪を掻きながら言った。
「霞ちゃんは無事だよ」
「どうしてわかるんですか!?」
「言ったろう?まだ推理段階だから言えない。全てを解き終えた時、柳沢夫妻と君の前で盛大に答え合わせといこう。それまで待っていてくれ」
楓先生は口の中に燻らせた煙をふーとはいた。私が学園であっちこっち行っている間、楓先生はここでウイスキーとパイプたばこを楽しんでいただけなのだろうか。そう思うと次第に腹が立ってきた。何か考えているようで実のところ何も考えず座っていたのだろうか。前金をもらっている以上、何か動かないとダメなのではないか。
「楓先生はいいですね。私が持ってくる情報を以って考えるだけでいいのですから」
「不貞腐れないでくれたまえ、夏樹ちゃん。私は私で動いていたんだ。帰ってきたのはついさっきさ」
「どこ行ってたんですか?」
「知り合いの結界師のところへね。夏樹ちゃん、おかしいと思わないかい?六本木の地下深くで悪さをしていたらしいチンピラ達が、なぜ柳沢久美子さんに粛清されたのか。彼らは何をして魔法使いに目をつけられたのか。どうして子供を誘拐して学園に売ったなんて嘘をついたのか」
嘘。嘘って言ったのか。私は混乱して叫んだ。
「嘘だったんですか!?なら私はなんのために…」
「学園は無関係じゃないだろう。それは確かだ。しかし、霞ちゃんを誘拐したのは嘘だ。彼らの魔力では柳沢宅から子供を誘拐するなんて芸当できやしないさ。できたとしても私の時魔法に引っかかっていたはず。裏に大物の魔法使いがいるかもとも思ったが、チンピラ達の口ぶりだとそれもなさそうだった。だとすると彼らは何故そのような嘘をついたのか。それを竹野内刑事に確認しに行った。柳沢久美子さんに訊く選択肢がないのは君もよく知っているだろう。魔法使いは何故事件に関わったのかを、どんな事情があれ他人に話してはいけない規則になっているからね。どうやら私達があのチンピラ達を無力化したことで警察も逮捕にこぎつけたらしくて、彼らのうちの1人が吐いた。彼らは薬の密売をしていたそうだ。柳沢久美子さんが被害者に依頼されて彼らの密売ルートを全て絶ったから、もう脱力の極みだったそうだよ。それで私達を混乱させるためにあんな嘘をついたみたいだね。実際に関わった魔法使いは全く私達の想像の範疇を超えた、別の世界にいるのさ。それで私は結界のスペシャリスト、植村大河のもとを訪ねた」
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