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ep20 酒とたばこと周防楓

 授業を終えて、茜と私は本日の課程を修了し帰路に着いた。空は入道雲が聳え立ち、日差しは夕方になった今も眩しく輝いている。普通科の生徒はまだ授業中だが、私達魔法科は魔法に特化した授業なので少し早い下校となっている。新宿駅に向かう道中茜はしばらく模擬戦での私の容赦のなさに愚痴っていたが、すぐにいつもの調子に戻っていた。茜のそういうところが好きだ。私達はどこにも寄り道をせず、新宿駅南口から下へ降りて地下鉄都営新宿線へ乗り込んだ。車内では茜とゲームの話や恋愛の話で盛り上がった。私は聞く一方だったが、茜が楽しそうならなんでもよかった。神保町駅に着き、茜と拳を合わせて別れた。私はそのまま大島駅まで乗って、そこで降りた。5番出口で降り、少し歩いたところにあるスーパーの中村屋で半額になっている鰹の寿司を楓先生と私の分手に取り、レジで会計をし、商店街を抜けて事務所へ向かった。事務所は商店街を抜けたすぐそこにあり、立地としては悪くないのだが、久美子の住居と比べたら庶民的と言える。私は事務所のあるURの4階へと階段で上り、玄関のドアを開けた。

 

 「ただいま戻りました」

 

 楓先生は所長椅子に座って後ろを向いていた。パイプを燻らせながら椅子をくるりとこちらに向けて「おかえり、夏樹ちゃん」と言った。楓先生がパイプを燻らせる時は何か考え事をしている時だ。このココナッツと甘いフルーツを合わせたような香りは楓先生が大好きなパイプたばこ、テイクユアタイムのものだろう。机にはスコッチであるタリスカーのフルボトルとロックグラスに注がれた氷も水も入っていないウイスキーが置いてあった。甘いたばことアイラに似たスコッチウイスキーが合うのかどうか疑問だが、楓先生はこの組み合わせが気に入っているようだった。昼から飲んでいたのだろうか。

 

 「夏樹ちゃん、お疲れのところ申し訳ないが、首尾を聞いてもいいだろうか」

 

 楓先生が言った。

 

 私は赤ん坊を隠し得る場所である体育倉庫と防音設備の整った校長室を探した結果、そのような気配はなく、校長や教師の態度も何かを隠している様子はなかったことを伝えた。楓先生はパイプの日が消えたのか、マッチを擦ってボウルの中に注ぎ入れ、ぷかぷかとふかせた。

 

 「そうか。やはりな」

 

 私は楓先生が残念そうではないことに驚いた。

 

 「何も驚かないんですか?」

 

 聞くと、楓先生は肩をすくめてみせた。

 

 「学園調査は念の為さ。最初から特に期待していたわけじゃないからね」

 

 「そんな!私は何か成果出さなきゃって気負ってたんですよ!」

 

 「君にはそのくらいが丁度いいのさ。私が適当でいいよ、なんて言った日には君はただ体育倉庫を調べるに留まっていただろう。校長室に忍び込む危険は冒さない。だから何も言わなかった。期待していないと言っても、校長室は調べてもらいたかったからね」

 

 楓先生はタリスカーを一口飲んで、口の中で踊らせた。

 

 「なら最初から校長室調べろって言ってくれればいいじゃないですか」

 

 「私はいい上司ではないかもしれないけど、これでも人はちゃんと見てるんだぜ?君が校長室を調べないなんて思わなったんだからいいだろう?別に気にすることじゃない」

 

読んでくださってありがとうごじゃいます!

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