03
ユイ達のところにもモンスターが発生しており二又の蛇が目の前にいて、生徒達は驚く。逃げたくても挟まれて逃げられない生徒達が多い。進化後は今までいたモンスターと新たに発生したモンスターも増えてしまうらしいと、自分も昔の知識で思い出す。
「ユイ」
ユイが巨大な生物の近くにいて、すぐにでも怪我をしそうだ。
「ユイの位置情報へ移動」
カホコは言葉で魔法陣を発動させて、その場から煙のように消える。だれにも気付かれずに。
*
「うわああああ!ギガンテスだぁ!?」
男子生徒が言わずとも誰の目にも明らかだ。だが、ボスなのでここから動かないタイプで今は助かった。
「ひぃ」
逃げよう逃げようとなるが、進化したらしいダンジョンは出られなくなる。入ることはいくらでもできるのだが。
「ボスを倒すまでダンジョンから抜けられない!」
ユイはみんなに知らせる。ユイはダンジョンオタクだ。それを知られたくなくてソロなのである。
「か、母さん」
震えてしまう。近くにいるのだろう母親を呼んでしまうのは、精神的に折れかけていたからだ。ギガンテスがボスであるが、モンスターはわらわらといる。アイテムは持ってきているが、ここへ助けが来るまで耐え凌げるかわからない。涙で瞳が潤む。
「進化なんて最新は十五年前、今回は今日……」
ユイはダンジョンの情報も当然知っている。
「うう」
クラスメイト達とは少し離れたところにいるユイは、近くでモンスターが発生してしまった生徒へ加勢した。
「はぁ!」
金属が通じない硬さ。
「く!」
弾き飛ばされたので後ろに下がる。その際、目の前にまたモンスターが発生した。
「また!」
今度は何なのだと身構えて、見えてくるモンスターに絶望した。
「リヴァイアサン!?」
海のダンジョンにいることで有名なモンスターがここで湧く意味がわからない。このダンジョンが進化した時に水のエリアができたのかも、と考えていたがボスレベルのモンスターに逃げ続けるしかない。幸い、この場所は広くて逃げやすい。
「リヴァイアサン!?」
他の生徒達が怯えて逃げ惑う。ザアアアアアア、と音が聞こえて水が生成される。
「荒波!」
モンスターオタクでもあるユイは顔を白くさせて、立ち尽くすしかない。規模がでかすぎる。大きなビルを飲み込む高さの波を防げるわけがない。ここにいるのは、初心者をちょっと抜けた程度の子供だけ。
「きゃああ」
「うわああん」
もうだめだとみんなの心がぺしゃんこになる。波が高く上がり、こちらへ近づく。
モンスターではなく、波など自然災害だけでも十分脅威だ。母や父、家族の顔が過ぎる。
「母さん、母さん」
口からポロッとこぼれ落ちる言葉は、ユイから生きることを諦めさせる。目を閉じるよりも先に目を下に落とした。命を奪う水を見続けられない。
──バキバキバキバキィイイイ
ユイはその時間が何時間にも感じられたが、音がなくなったと感じてゆるゆると上を見た。
「さ、寒い?」
寒さを感じたのもある。波はそこで時を止めたかのように静止していた。絶望を長引かせるためだろうかと思ったが、ひやりとしていて凍っているのだと誰かが告げる。ユイ本人も確認したら凍っていた。
「な、んでっ」
「ユイ」
後ろから声が聞こえてパッと振り撒くと、いるはずのない人がいた。
「母さん!」
驚きで白い息が出た。気温が低い。
「なんでここに?リヴァイアサンがいるから死んじゃう!」
こんなところ、殆どモンスターパニック、モンスターハウスと呼ばれるモンスターだらけの事態だ。Fランクの母がいても死ににきているだけだ。
「それよりも、お母さんギルドカード処分したでしょ?」
「え、あ、うん?そうだね」
母が何食わぬ顔でこの前のことを言ってくる。




