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高校デビューすることになった。
髪を派手な色に染めて不良を気取るとか、不良だった中学時代を精算して真面目な生徒を演じるとか、そういう自己解決できるようなデビューじゃない。考えるだけで暗澹たる気分になる。なんというか、入学式へ向かう花の女子高生が枯れた落ち葉のような表情をしているのは問題だと思う。白馬に乗った王子様じゃなくても「大丈夫ですか?」と一言くらい声をかけたくなるだろうからね。
だけど。
周りを見回すと、陽気にはなれない。
高層ビルのない見通しの良すぎる景色、アルファルトで舗装されていない通学路、得体の知れない生命体が潜んでいそうな沼――まるで異世界。中学卒業まで住んでいた場所に比べて、ここはあまりに未発達だった。青から赤に変わる信号に慌てることもないし、行き交う車にクラクションを鳴らされることもない。小川がせせらいでいるくらいだからね。きっと一昨日に乗った電車がタイムマシーンで、私が生まれるより前の時代に漂流してしまったのだろう。あるいは異世界に繋がるトンネルを抜けてしまったのかもしれない。憂鬱な気分で学校へ向かいつつ、私は益体のないことばかり思考していた。
ふと。
通学路に立ち尽くす男子を発見する。制服からして同じ高校の生徒なのだろう。鼻をつまんで天を仰いでいた。世の中には関わってはいけない種類の人間がいて、おそらく彼もその中の一種類に含まれている存在――と一瞬だけ思ったのだけど、どうやら鼻血が出て困っているらしいと正しく認識。怪しい人物と勘違いした後ろめたさもあって、私は通りすがりに彼にハンカチをあげた。顔も見ていない。入学初日から遅刻をしたくはなかったので、私は己の虚弱体質を呪いながら足早に歩を進めた。




