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依頼1:いじめによる自殺① 針金蟲

どうも、黒崎です。

今回は「令和のホラー作品」をテーマに書いてみました。

悪意であったり人間の負の感情もサブテーマとしても書いていきたいと思いますので、何卒宜しくお願いします。

 まず唐突に。


「祟り」というものを皆様は存じ上げるだろうか。


未練や恨みを()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を神道的には指されるもので、天候科学が発展しているはずもない奈良時代、平安時代の世では飢饉や疫病の蔓延、火山の噴火、暴風雨や落雷といった自然災害が悉く高家たる者がこの世を去った時期とタイミングが重なったことで"○○の祟り"と恐れ慄かれたものである。


しかし近年でも、「心霊スポット」と呼ばれる場所があるように、成仏できないまま年月が過ぎた、科学では説明が難しい魂が少なからず眠っているし、有名にならずともこの世に未練、恨みを遺し自ら命を絶ったり、願い叶えられないまま死んでいったり、道半ばで殺されたり……と、祟りのパターンには枚挙にいとまが無い。


そんな「祟り」の声を聞き成仏の手助けをする事を生業とする者がいる。


彼の者は「祟り師」と呼ばれ、死人が出たとなれば日本全国場所問わず飛んでいくのである。


祟り師の青年・尼子迅一(あまごじんいち)は今日も死体が出た現場へと相棒のワゴン車と共に向かっていくのであった。





「息子が自殺?」


「はい……いじめに耐えかねていたみたいで……3日前に首を自分の部屋で吊っていて……」


迅一は依頼者の女性・大野菜月(おおのなつき)の、千葉県にある自宅を訪れていた。


話を聞くところによると、14歳の1人息子・卓馬(たくま)をいじめが原因の自殺により失ったばかりとの事だ。


何ともヘビーな話ではあるが、迅一はこうした依頼にも慣れており、親身になり話を聞くのが彼のポリシーだ。


「それで、内容は? 遺書がある、と事前に聞いておりますが。」


菜月が卓馬の遺したノートを手渡し、迅一はそれを一枚一枚、丁寧に読んで被害内容を記憶していく。


「……心中お察しします、内容から見るに相当な恨みが込められていますね、当事者に対して。」


菜月は涙ながらに頷き迅一は殴り書きされた卓馬の字を見て()()()()()()()()()()()()()()


「……事情は分かりました。お母様、"恨み"というものは死亡現場に顕在するものです。それは日増しに"祟り"となり災いを齎す、周囲にだけ、起こるように。私は祟りを回収し、死者の願いを叶え成仏させるのが仕事なものですから……息子さんの御部屋を案内していただけますでしょうか?」


「それで卓馬が……ゆっくりと休めるようでしたら。」


菜月は迅一を案内し、卓馬が生前使われていた勉強用具、そして命を断つ際に使われた太く長い縄を確認した。


迅一はその縄を左手で鷲掴みにし、息を吐き、力を込めて念じた。


「……これでOKです。では、私はこれにて。」


迅一は依頼料金を受け取った後、シルバーのワゴン車に乗り込み団地を後にし、情報を得ていた卓馬の通っていた中学校付近まで走らせた。




 到着後、缶コーヒーを一服した迅一は、卓馬の祟りをゲームのホログラムデバイスを呼び出すかのように手のひらの上に呼び出した。


「ぼ、僕のお願いを叶えてくれると……話づてでは聞いていましたけど……何をするつもりで?」


「……そう急くな、卓馬。お前が()()()()()呼んだだけ、俺の仕事柄、お前の祟りを使わねえとならねえが、準備に多少時間が掛かるので報復すんだよ。」


「ど、どのように??」


「お前の()()()()()。そんでお前の視界をそこに入れる。」


卓馬は言われるがまま、目を閉じて前に伸ばした手足を迅一に差し出す。


迅一は肘から先、膝下から先を手刀でそれぞれ切り裂き、(なお霊体なので卓馬にその痛覚は無い)それをネジを扱うようにクルクルと右手で回していく。


するとみるみるうちに細長くヒモ状に伸びていく。


そしてそれを卓馬の遺書(ノート)に書かれていた主犯格(ターゲット)の男子4人へと投げつけた。


これは『祟術(すいじゅつ)寄生型(きせいのかた)針金蟲(ハリガネムシ)』、対象の脳に寄生し()()()()()()()()という術で、迅一はそれで4人を始末するようであった。


「あ、アイツらの視界が僕に入って……?? 何をさせようと……??」


卓馬に入ってきたのは授業を受けている光景、ただそれだけだった。


但し()()、の話であり迅一が確認したかったのは「視界が見られるようになっているか」のただその1点のみ。


これで準備は整った。


「それでいい、俺の仕事は学校が終わってからが本番だしな。卓馬、ハリガネムシは知っているか?」


「え、えーっと……カマキリのお腹に入り込んだ寄生中……でしたっけ??」


「そう、今回の術はソイツを応用したモノだ。鳥の糞に入り込んでそこを通ったカマキリの腹に入り込むんだ。そうしてカマキリの腹ん中で成長して成虫になったカマキリを川まで誘導させて溺死させ、自分はケツ穴から逃げ出して魚の腹の中で子供を残すんだよ。そして自分はまたそれを食った鳥の中で成長して……その繰り返しでサイクルを送るんだ、ハリガネムシは。今回の術は人間をカマキリのように見立てて脳に取り憑くんだ。んで、水辺に誘導するとなると?」


「し、沈めるんですか!? 川とか、海とかに!?」


「その通り。ただ死体が見つかったら見つかったで、後々面倒だからな、()()()()()()、つまり深海に沈めるんだ。」


卓馬は言葉を失う。


深海ともなれば行方不明となって捜索がされても、潜水艇でもない限り見つかるものでもない。


迅一は俺に任せておけと言わんばかりにほくそ笑んでいた。


「何のためにお前の視界を共有させたと思ってんだよ? アレの最期を見届けるのが、霊となったお前の最後の役目、これはお前にしか出来ない事だ、キッチリやりな。」


卓馬は迅一に言われ、項垂れるしかなかった。


そうこうしている間に3時間半が経過し、「執行」の時間がやってきたのだった。

次回はどのように主犯格を迅一はコントロールするのか、お楽しみいただけるとありがたいです。

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