055
あれから二日後、あたしは家の自分の部屋にいた。
朝は、いつも忙しい。
二階建てのあたしの家は、二階の部屋からあたしが降りてきた。
制服に着替えて、ボサボサの短い髪を整えた。
一階のリビングに向かうと、下には音が聞こえてきた、
包丁の音が聞こえると、リビングの後ろにあるキッチンに一人の女が立っていた。
「早いのね、遥乃」
制服姿の遥乃だ。
キッチンで野菜を切っている遥乃は、母親のような後ろ姿に見えた。
「雪乃は、寝過ぎよ」
「相変わらず、厳しいわよ。遥乃」
あたしはふて腐れながら、隣に立っていた。
既にテーブルの上には、朝食が置かれていた。
パンに、ハムエッグとサラダ。
バランスのとれた食事は、遥乃の手料理だ。
「ママは?」
「ママは、昨日夜勤だったし……」
「そうだったわね」
あたしと遥乃は、一緒にテーブルについた。
この家での家事は、ママが中学まで行なっていた。
でも、高校に入ってからあたしと遥乃が料理を作るようになった。
普通の会社員のママだけど、仕事は夜遅くになることもあった。
仕事人間で、仕事好きのママは朝に帰っても昼まで起きることはない。
「パパは?まだ帰ってきていないの?」
「うん、来月に帰ってくるよ」
「年末だからね。お盆は帰ってこなかったし」
「パパも仕事が大好きだから」
何気ない、家族の話。
だけど、病院で話さなかった家族の近況。
そのたわいもない会話が、何よりも大事だった。
遥乃は、パンを食べて微笑んでいた。
そんな髪の長い双子の姉は、とにかくかわいい。
髪は長いし、清楚な雰囲気の双子の姉。
遥乃の目って、こんなに大きかったっけ?と再確認してしまう。
「ジロジロ見ないで、雪乃」
あたしの視線を感じて、照れてしまう遥乃。
「ああ、ごめん。つい……」
「まあ、雪乃に見られるならいいけど」
照れていても、遥乃はあたしを上目遣いで見てきた。
その顔を見て、あたしが求めた普通もいいモノだと感慨深くなっていた。
だけど、パンを食べ終えた遥乃が急に真顔になった。
「ねえ、雪乃」
「何?」
「最後の戦いで、ナインティナインカードの雪乃の数字は?」
「え、ああ……そうか。あのときは、言わなかったからね」
「教えなさいよ。あなたが選んだ数字が、どうしても気になったから」
遥乃は、あたしに迫ってきた。
だけど、あたしは考え込んでいた。
「うーんと、01よ」
「01?」
意外な数字に首を傾げた、遥乃。
あまりにもシンプルで、わかりにくい数字を聞いた遥乃は、驚いた顔を見せた。
「なんで、その数字なの?」
「あたしがゲームを始めた数字、11月1日。その日にち」
「それで01なの?」
「まあ、そのほかにも出席番号とか。あたしと遥乃の出席番号。
なにかと、1って数字はよく出るでしょ」
「へー、そういう意味だったのね」
「遥乃は、すぐに決めたの?病室の番号?」
あたしの質問に、遥乃は首を傾げた。
「うん、前回の多田君に負けたと……関係ない数字で負けて心残りだったから」
「そう、多田君はよく当てたよね」
多田君に、負けた遥乃。
多田君に、勝ったあたし。
「でも雪乃は、多田君に勝ったんだよね?」
「うん、たまたまだけど」
「今度は、雪乃にも勝つから」
遥乃の目が、燃えているようだった。
遥乃は、負けず嫌いでヤル気が見えた。
「また、あのゲームをやるの?」
「そうね、今度は望み関係なく……普通にやってもいいかもね」
悪戯っぽく笑っていた、遥乃。
だけど、遥乃はすぐに時計を指さした。
「そんなことより、学校に行かなくていいの?」
遥乃の一言で、あたしは我に返った。
そう、時間が無い朝である現実をあたしは思い出してしまった。




