052
(HARUNO‘S EYES)
体育館の広い空間に、雪乃だ。
あのときは多田がいて、今回は雪乃が目の前にいた。
さっきは、私の事を揺さぶってきた。誕生日で、私の数字を安易に当てようとした。
それでも、雪乃は数字を当てられなかった。
私の数字は、そんなに単純じゃない。
だけど、当てられなかったことが悔しくなってしまう。そんな不快な気分に、私はさせられた。
(なんで、当てようとしてくれないのよ。あの子だったら、すぐに分かるはずなのに)
私は機嫌が悪い。
その感情を、顔にも自然に出していた。
さて、私の現状は既に8分の1まで絞り込んでいた。
十の位は、8と5以外だ。
(雪乃の82と55のコール。8と5,こちらの数字に合わせているわね。
それでも私の数字には、かすりもしない。
だけど、雪乃の数字は分からない)
十の位が、確かに同じ。これは奇妙だ。
双子として、ここはシンクロしているのだろうか。
でも55は以外だった。
これは私と雪乃の誕生日だ。
まさか、私がこの数字をそのままつけるとは思わない。
(もしかして、雪乃は日にちを数字として選んでいるのだろうか)
そういえば、何の数字かを考えてみる。
雪乃の一回目は、私が言っていたお見舞い回数。
二回目は、私たちの誕生日。
これは、雪乃の選んだ数字に関係かあるのだろうか。
「ねえ、何か質問は無い?」
雪乃が穏やかな顔で、私に聞いてきた。
この雰囲気は、なんだか嫌だ。
雪乃は、追い詰められていて……劣勢なのにどうしてあんなに余裕なのだ。
「あなたは、特別に憧れているんでしょ」
「憧れは……あるかな」少し照れくさそうに、雪乃は言った。
特別に憧れる雪乃だからこそ、数字は特別を選ぶのかもしれない。
「ねえ、あなたは私に憧れる?」
雪乃を真正面にして、私が言う。
雪乃はじっと、私を見ていた。
「やっぱり、遥乃は凄いからね」
「まあね」
「謙遜しないところが、特にね」
「なによ、それ!」私は、なぜか笑っていた。
雪乃も、可愛く笑って見せた。
互いに笑い合う、不思議な空気が流れた。
これが演技なのか、素なのか私には分かった。
だからこそ、私はこの雰囲気の中で聞いてみた。
「あなたは、特別になりたいの?」
「今はどちらでも無い」
雪乃は、それでも笑顔のままだ。
「だって、普通でも……遥乃とゲームがこうしてできるから。
一緒に遊ぶことが、出来るから」
「そう、幸せね」
「うん」雪乃は、無邪気に頷いた。
その目は、子供のような屈託のない笑顔。
雪乃は、なんでそんな顔が今でも出来るのか。
その顔の意味が、少しは理解できた。
(なるほどね、はぐらかそうとしているのね)
砂時計の砂が、もうすぐ無くなってしまう。
私は遥乃の感情を見て、確信した。
(雪乃は……特別に今も憧れている。だから特別な数字を選んだ)
「コール『11』」その数字を私が言ったとき、一瞬雪乃は驚いた顔を見せた。
当たった、と私は確信が持てた。
だけど、雪乃は首を横に振っていた。
「残念ね、遥乃」
雪乃は、真顔で私の答えを否定していた。




